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あまり、舐めるな

 突然吹き飛ばされたエミリーはいつも椿にも吹き飛ばされていることもあり、受身を取ることに成功していた。


 上手に受身をとり、立ち上がったエミリーは自分を吹き飛ばした敵の姿を捉える。


「光さん!平一さん!しっかりしてください!」


 エミリーは敵を見逃さないように見ていたが、一人では勝てないと判断し、共に吹き飛ばされた二人を呼びかける。しかし、返事がない。


「……?光さん、平一さん?」


 エミリーが振り返ると、光と平一は頭から血を流して気絶していた。


「ふたりとも!?すみません!私のせいで……」


 こんな目に。そう言いたかったエミリーの言葉はそれ以上は続かなかった。


「はぐぅ」


 エミリーは目を離した隙に攻撃を仕掛けてきたアンデッドの蹴りにより、再び吹き飛ばされた。


「うぅ……」


 エミリーは空中で再度受身をとりながら壁に激突したので、なんとか意識は繋いでいるが、頭をぶつけたのですぐには動けそうになかった。


「くっ……エミリー、様……」


 と、そこで光が立ち上がった。その手にはしっかりと聖剣が握られている。


「お前、よくもエミリー様を……!」


 そして、光は怒りに任せて限界突破を発動させた。それにより全てのステータスが大幅に上昇。単純なステータスなら今はこの謎のアンデッドと同格か、それ以上だった。


「はぁぁぁぁぁ!!」


 声を上げながら光は勇ましく攻撃を仕掛ける。しかし、アンデッドはそれを難なく対処する。


「ぐほッ」


 そしてアンデッドが放った掌底が光の腹に直撃した。


「おっら!」


 が、そこで平一が起き上がり、アンデッドの側面から奇襲を仕掛けた。

 しかし、これも謎のアンデッドは受け流すことによってダメージを最小限に抑えることに成功。そのまま平一にカウンターを決めた。


「グッ、舐めるなぁ!」


 が、平一はそこへ更にカウンターを決める。カウンターのカウンターを決められたことにより、驚愕したアンデッドはそれをもろにくらってしまった。


「"聖浄光"」


 と、そこで悪しき存在を浄化することに特化した浄化系神聖魔法がアンデッドに直撃した。この魔法は心には影響がないので、一緒に光を浴びた平一にはなんら影響は無い。


 エミリーと光は、アンデッドが浄化の光を、回避せずに直撃したのを見て、これで戦いは終わったと安堵したのだが、


「ウボァー」


 直後にそんな声を上げながら吹き飛んできた平一を見て、ふたりとも硬直した。


「な、ぜ?確かに"聖浄光"は当たりましたのに……」


 完全に浄化することができなかった。それならまだわかる。だが、目の前のアンデッドには、傷一つついていなかった。


「効かなかった。効果がなかったってことか?アンデッドなのに聖なる力がか?」


 光は思案する。ならば、自分が持つ聖剣による聖なる斬撃の効果も、それほど高くはないと判断したからだ。だが、


「エミリー様!浄化の効果がなかったのは外側だけです!もしかしたら内側から浄化の光、またはそれに類似する力を放てば倒せるかもしれません!」


 光はそう言って解除していなかった限界突破を持続させながら再度アンデッドに向かって走り出す。


「はァァァァァァ!!」


 光から放たれる高速の無数の斬撃。だが、アンデッドはそれを難なく対処する。

 アンデッドは技で光をいなしている。一方、光はステータスこそ高いものの、本格的な戦いを始めてからまだ半年も経過していない素人だ。こんなのでこの謎のアンデッドに勝つなんて到底不可能。

 だが、それは光が一人で戦っている場合の話だ。


「はぁぁ!」


 そこで、エミリーも具現化系神聖魔法で創り出した剣を装備してアンデッドに攻撃を仕掛ける。

 アンデッドは光への対処をそこそこに、エミリーの攻撃の対処を始めた。

 エミリーは光とは違い、技術を中心とした戦闘スタイルだ。


 力の光と、技のエミリー。そこへ


「俺のことも、忘れてんじゃねえよ!」


 平一が天井からかかと落としの要領で落ちてきた。なぜ天井からなのかと言うと、普通に脚力を強化しながら壁と天井を走って移動しただけだ。


 平一の攻撃をアンデッドも流石に危険だと察知したのか、すぐに回避する。


「逃がしません!」


 そこへ、エミリーは"疾風"を使って高速でアンデッドに肉薄し、剣を振るう。かすり傷がついた。


「!!光さん!剣を用いた攻撃は確かに通用しました!」


 このアンデッドは神聖魔法が通用しにくかっただけ。剣による攻撃は充分通用する。そう叫び、再度攻撃を仕掛けようとするも


『ーーー』


 アンデッドは言葉にならない声を発しながら手に風を浮かべると、周囲に放った。

 風属性魔法"風爆"だ。


「!?あのアンデッド、魔法まで!?」


 光は驚愕を顕にしながら叫ぶ。しかし、これで説明がついた。最初に3人を吹き飛ばしたあれは純粋な身体能力ではなく、風魔法による妨害だということに。


「なら、こちらも魔法です!"炎爆"!」


 エミリーはそう言って炎の爆発を放った。だが、その火力は平一が想像していたそれよりも遥かに弱かった。


「エミリー王女!?なにやってんだ!」


「目眩しです!今の私の魔法の火力では、到底倒しきれません。でしたら、視界を防ぎ、確実にダメージを与えることを選択しました!」


 平一はその言葉を聞くと、すぐに攻撃を仕掛けるために走り出した。言葉はもういらない。


 そして、その瞬間に感じられた魔力の流れ。


「?……!?まさか」


 エミリーは一瞬、なにかわからなかったが、その心当たりがすぐに思い浮かび、焦りを表情に出す。


「「これで、終だァ!」」


「待ってください!」


 平一と光がトドメを指すために、走り出したが、エミリーはそれを止めようとする。しかし、時既に遅く、2人はアンデッドが放った"獄嵐"によって吹き飛ばされているしまった。


「そ、そんな……」


 絶望するエミリーの元に、一瞬で接近するアンデッド。


「!?"微聖"!」


 咄嗟に浄化魔法を放つが、それを無視したアンデッドはエミリーの足を掴むと、光達と平一が吹き飛んだ方向に向かってエミリーを投げ飛ばした。


「きゃあ!」


 そんな声を上げながら吹き飛んだエミリーは、そのまま壁に激突してしまった。


 エミリーと光、平一を倒したアンデッドは次に結界に目を向ける。

 アンデッドがこの場に到着した時から展開されていた結界。その中に鎮座する一人の少女リーリエ。

 この娘は先程まで戦っていたあの3人よりも劣ると、勝手に判断したアンデッドは、結界を突破して、攻撃をしようとしたが、


「ねぇ、なにまだ終わった気でいるの?」


 結界の中にいたリーリエがアンデッドに話しかけた。


『ーーー』


 終わった気でいる。当たり前だった。アンデッドにとって、自分が倒せない相手など見たことがなかったのだから。たとえ集団で襲ってこようと、問題なく対処できていた。それを考えると、先程まで戦っていた3人は、今までの中で一番強かったのだ。


「終わった気でいるなら、忠告させてもらうけどね?」


 だから、アンデッドにとっては、あとはリーリエを殺すだけでこれは終わり、


「あまり、あの3人を舐めない方がいいよ?」


 結界に触れようとしたタイミングで、後ろからガラガラガラと、石が動く音がした。そちらを振り返ると


「なるほど、そういうことですか……」


「そうだね。だいたい理解できたよ」


「ああ。そうだな」


 アンデッドが既に倒れたと判断した3人が起き上がる姿だった。


 その姿を視界に捉えると、アンデッドは既に動かなくなった筈の頬を緩め、笑いながら戦闘体制をとった。

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