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いざ、冒険者ギルドへ!

 時間は少し遡る。


「ここが、冒険者ギルドですか……」


 エミリーははじめて入った冒険者ギルド内をキョロキョロと見て回る。

 女性冒険者も少なからずいるとはいえ、大半が男冒険者。そしてエミリーはかなりの美少女だ。注目されるのも無理はない。

 そして


「待ってエミリー。そんなに急いでも何も逃げないから」


 あとから来たリーリエ。リーリエも全体的に容姿が良いと言われている妖精族の中でも特に容姿が良い。つまり、目立つ。目立ちまくるのだ。

 現代日本でも、異世界でもイケメンの部類に入る光や、筋肉ムキムキの平一の影が薄くなるくらいには二人は目立っていた。


「だって、今まで冒険者ギルドに行きたいなんてお願い叶いませんでしたから!ありがとうございます!リーリエさん、光さん、平一さん」


 と、エミリーとリーリエを見ていた冒険者がエミリーが3人の名前を呼んだことに気がついた。しかもその内の2人は男の名前。その瞬間に、男冒険者たちは光と平一の存在を認識した。ちなみに女冒険者は光と平一の存在には元から気がついていた。


「「!?」」


 瞬間降り注がれる殺意の視線。光はイケメンで、しかも美少女を連れていることに対して。平一には、脳筋そうな見た目なのに、美少女と一緒にいることに対してだ。これには流石の勇者も戦慄した。


「これが依頼書ですか……」


 エミリーは光と平一にそんな視線が向けられていることを知らずに、楽しそうに依頼書を見ている。リーリエもエミリーの隣でエミリーの質問に答えながら、楽しそうに話している。


「なぁ、光」


「……何?平一」


「ついてきたがよ、俺たちってハブられてね?」


「……言わないでくれよ。悲しくなるからさ」


 その様子を見て、2人は別に同行しているだけで付き合っている訳では無いのかと男冒険者たちは判断した。2人から発せられる負の感情からそれは明白だろう。


「光さんも平一さんも!どの依頼がいいでしょうか!」


 エミリーは大声で2人を呼んだことで、二人ははじめて依頼書が貼られている掲示板に近づく。


 中身はなんてことの無い荷物運びや、護衛依頼、討伐依頼などだった。


「うーん。やっぱり護衛依頼は時間がかかるし、荷物運びじゃエミリー様は楽しくないだろうから、無難に討伐依頼でいいんじゃないかな?幸いにもリーリエさんは冒険者の資格を持ってるし、そのリーリエさんが俺たちを確かな実力者って認めたなら大丈夫だと思うし……」


「なんだ!討伐系の依頼を受けるのか?だったら俺に任せろ!」


 と、まるでテンプレの如く、冒険者がエミリーたちに近づいてきた。その冒険者に光と平一は警戒しつつ、エミリーはキラキラした目を向け、リーリエは心底興味が無さそうにする。

 近づいてきた男冒険者は、光と平一を一瞥すると、鬱陶しそうな視線を向け、その次にエミリーとリーリエに視線を向けた。

 エミリーのキラキラした目。これを冒険者はかっこいい先輩冒険者が冒険者のノウハウを教えてくれるのだと勘違いした。実際は、エミリーは椿から聞いていたテンプレに遭遇できたことに喜んでいるだけだった。


 そして冒険者は次にリーリエを見る。相変わらず興味が無さそうにしているが、その少女が最終的に自分に媚びる姿を想像して、思わず笑みが零れる。


「なあ悪くない話だと思うぞ?俺はこれでもBランクのベテランだ。そろそろAランク昇格も間近だとも言われている。俺が手伝うのはお前らにとっても悪くない話だと思うぞ?」


 ちなみに、経験は光や平一よりも断然上だが、格上との戦闘はエミリーやリーリエの方が多かったりする。それに、どれだけ冒険者ランクが高くてもリーリエの方が強いのは火を見るよりも明らかな話。

 その事がわかると、光と平一はあまりの滑稽さに思わず可哀想な人を見る目を向けてしまう。


 だが、男冒険者は光と平一の視線に気がつかず、エミリーとリーリエに話しかけてしまう。

 エミリーはテンプレに遭遇できたのはよかったが、椿から対策法は聞いていない。リーリエはそもそも興味を示していない。


 どうしようかと、エミリーは少し思案し、


「なあ、黙ってないでそろそろ……」


 男冒険者がエミリーに触れようとしたので


「"微聖"」


 男冒険者の心を浄化した。


「ぐああああ」


 これまたテンプレのような声を上げて聖なる光に飲み込まれる男冒険者。その光が晴れると……


「……あれ?僕は一体何をしていたんだろう?」


「「ええええ!?」」


 神聖魔法を知っていたルリジオンの冒険者は兎も角、はじめて神聖魔法を見た光と平一は驚きの声を上げる。それはそうだろう。先程まで下卑た笑みを浮かべながらエミリーに触れようとしていた冒険者の雰囲気が柔らかくなり、一人称も俺から僕に変化した。


「すまない。僕は先程まで何をしようとしていたか教えてくれないかな?」


 素行が良くなったと思われる冒険者が光に質問をしたので下卑た笑みを浮かべながらエミリーに触ろうとしたと説明すると、


「僕は……なんてことを……」


 説明を聞き終えた冒険者は頭を抱えると、


「誠に、申し訳ございませんでした!」


 エミリーとリーリエに向かって土下座をして謝った。

 それもエミリーが下心を浄化したからした行動ではあるが、エミリーは快く謝罪を受け入れ、冒険者から「女神様……」と言われてしまった。


「女神様だなんて……それよりも、いい討伐依頼はありませんか?記念としてなにか受けたいのですが……」


「そうですね。女神様の話しを聞くに、リーリエ様はかなりの実力者だとわかりますし、女神様が神聖魔法を使えるのなら、最近問題になっているアンデッド討伐なんていかがでしょうか?」


 男冒険者は依頼掲示板からアンデッド討伐の依頼書を持ってきた。


「アンデッド、ですか?ですが、アンデッド討伐は教会の仕事では……」


「それが、最近はアンデッドの数が増えてしまい、教会だけでは手が足りないらしいですよ。神聖魔法が疲れるのであれば、万が一もないと思います」


 男冒険者はリーリエの実力者を知らないが、それでも自身の下心を一瞬で浄化できるエミリーの実力はかなりのものだと思っている。


「では、アンデッド討伐を受けましょうか。光さんも平一さんもリーリエさんもこれで大丈夫ですか?」


「俺はいいよ。元々エミリー様に付き添うつもりでしたから」


「俺もそれでいいぜ!アンデッドなんてモンスター戦ってみたかったからな」


「私も問題ないよ。今日はエミリーが楽しく出来ればそれでいいしね」


 エミリーは全員が賛成するのを確認すると、


「では、アンデッド討伐を依頼します。皆さん、よろしくお願いします」


 こうして、エミリーとその仲間たちのアンデッド討伐が始まった。


 ちなみに、依頼はリーリエが受けた。リーリエしか冒険者カード持ってなかったし。

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