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それぞれの行動

 教皇と会談してから一週間が経過した。その間に光たちとグレイスとの対面も済ませ、エミリーがトリストのいた部屋をしっかりと確実に調べていた。


 教会内は基本的に安全らしいので椿がついて行くことも無く、椿はアルネブ内に建てられていた冒険者ギルドで偶に依頼を受けながらゆっくりと過ごしていた。


「それで?トリストのこともあらかた調べ終わったんだろ?」


「はい。椿さんが作ってくれたポーチに荷物も詰め込みましたし、部屋に残っているものは廃棄しても大丈夫だと言っておきました」


 現在椿とエミリーは泊まっている宿の廊下を歩きながら話をしている。


「ってことはそろそろ帰国か?」


「いえ、実はグレイスさんが来週開催するお祭りに参加したらどうかとお誘いを貰っているのです」


「祭りか……」


 椿は異世界で祭りに参加したことが無かったし、興味もあるので一度是非参加したいと思った。


「ってことはあと一週間くらい滞在するのか」


「そうですね。椿さんはこの国でしたいことはないんですか?」


「うーん……あと一週間あるんだったら場所も調べ終わったことだし九つの試練でも攻略してくるよ」


 椿がこの国に来てから調べていた九つの試練の場所。実は少し前に調べ終わった椿だったが、滞在時間も考慮して行かない選択を取っていたのだった。


「そうですか……では私もお兄様のことを調べ終えましたし、以前からやってみたかったことをしてみますね」


「そうか……と、着いたな」


 椿は殆どの人物が今集まっている部屋の前に着くと、扉を開けて中に入る。

 中には既に全員揃っていた。


「……ということでして、もう暫くはこの国に留まろうと思っています」


 エミリーが全員にあらかた説明し終えた。


「わかりました。では、今日はこれからは自由行動ですか?」


「はい。みなさんも疲れていると思いますので」


 ということで全員の自由行動が今決定した。


「あの、リーリエさん……」


「ん?どうしたのエミリー」


「私、冒険者ギルドに行ってみたいです!」


 エミリーの突然の告白に場にいる全員が驚愕した。


「えっとーそれはどうして?」


「私、実は以前から冒険者に憧れていたのですが、このご時世ですのでなかなか外に出ることも叶いませんでした」


 エミリーは王女なのでより窮屈に感じていたのだろう。


「ですが!友達であり、強い護衛でもあるリーリエさんが一緒に来てくださるのであれば皆も安心して送り出すことができるはずです!」


 その言葉に近衛騎士たちは微妙そうな顔をし、椿は少し納得した。

 リーリエはどうしたらいいのかわからず、椿を見ながら少し考え込んでしまう。


「いいんじゃないか?別に九つの試練も今じゃないといけないわけでもない。リーリエに必要そうな能力だったら後日改めて挑戦しに行けばいい」


「そう、だよね。わかったよ。じゃあよろしくね?エミリー」


「はい。最近は椿さんに鍛えてもらっていますので、足でまといにならないように頑張ります!」


 エミリーは握り拳を作りながらやる気を証明する。

 が、そこで待ったをかける人物が現れる。


「待ってください。二人だけでは危険かもしれない」


 そう、我らが勇者高円寺 光である。


「危険って……私、最低でもみんなのステータスの十倍のステータスはあるんだけど」


「それでも、だよ。女の子二人だけじゃなにがあるかわからない。俺も行く」


「光が行くなら俺も行くぜ!面白そうだ!」


 光が行くことを決意し、それに便乗する形で平一も同行しようとする。


「どうするの?エミリー」


「そうですね……戦力的には十分なのですが……最近の光さんのこともありますし連れていきましょう」


 とういわけで、エミリーとリーリエと光と平一で冒険者ギルドに向かうことになった。


「じゃあ、リーリエとエミリーの予定も決まったし、俺たちは九つの試練でも攻略しに行くか」


「はい!椿くんとダンジョンデートですね」


「いや、デートなのか?」


 椿と花恋は二人きりで九つの試練に向かうことになった。


「上里……」


 と、出発しようとした二人に翔が話しかけてきた。


「ん?どうした?」


「実は、お前に相談があってな」


 こんな時に相談。そんなに重要なものなのかと思い、真剣に話を聞くことにした椿。


「上里。お前は確か、付与魔法を使えたよな?」


「おう。魔法は俺が知ってる魔法なら全て使える」


「じゃあ、………を作って欲しいんだ」


 翔が椿に製作希望を出したものに対し、少し考える。


「ちなみに……変なことに使う気は無いよな?」


「断じて、無い。約束しよう。俺は俺で今日は少し調べたいことがあってな。なくても何とかするか、あった方が効率は上がるからな」


 万能感知に反応が無いことを確認すると、椿は適当なフードを取り出すと、翔が希望した魔法を付与した。


「はい。これで問題なく使用できるはずだ」


「ありがとう。恩に着る」


 そう言うと、翔は宿の部屋を出ていってしまった。

 翔の彼女の優花は今日は別行動らしく、宿の部屋で友達と談笑している。


「本当に、あんなものを作って大丈夫だったのですか?」


 花恋は不安そうに椿を見つめる。当たり前だ。もし翔が悪用すれば、被害に遭うのは花恋たちなのだから。だが、


「まあ、あいつは大丈夫だろ」


 椿は今、クラスで一番信用している人間が翔だ。それに、嘘も言ってなかった。

 翔は椿の言う悪用がなんのことかすぐに想像できただろう。その上で大丈夫だと言ったのだから、今は翔を信用するしかない。


「まあ、俺らは俺らで行くか」


 椿はそう言って花恋に手を差し伸べる。


「はい。エスコート、よろしくお願いします」


 花恋は静かにその手を掴む。その瞬間、椿と花恋はその場から消えた。

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