教皇との会談
夜中に超速攻で書き上げる人。
「ようこそおいでくださいましたエミリー王女」
エミリーと椿は一夜明けて改めて教会本部に来た。
今回は下手に教会関係者を刺激しないことと、教会内は規定により武器の持ち込みが禁止であるため武器を所持しなくても強すぎる椿一人を連れてきたのだ。
現在エミリーは椿を連れて教会の入口まで来ていた。
教会の入口で門番をしていた人物は今日エミリーが来訪することを予め聞いていたのですんなりと通してくれた。椿のことも護衛として説明し、中に入ることに成功した。
「なんとか今日は入ることができたな」
「はい。この後教皇様との会談がありますので、椿さんにも同行をお願いします」
「了解」
椿とエミリーは案内された部屋でゆったりとしている。エミリー的には教皇と話しをして、トリストのことを調べることが出来ればこの国には言ってしまえば用はない。他にあるとすれば精々が光たちを教皇に会わせることくらいだ。
「まあ、気張らなくてもいいだろ。リラックスリラックス」
「……そうですよね。今は私が国の代表でもあります。もっとリラックスして行きます!」
と、話していると修道女がノックをして部屋に入ってきた。
「エミリー様。グレイス様の用意が終了致しました」
どうやら呼びに来たらしい。
「わかりました。椿さん行きましょう」
エミリーと椿は修道女に連れられて教皇の元へ向かう。
「ところでさ」
「はい、なんでしょう?」
「グレイスって誰?」
神聖国ルリジオンのことなんて事前に全く調べなかった男、椿。もちろんグレイスが誰なのか全くわからなかった。偉い人なんだろうなとは思ったが。
「グレイスさんは教皇様ですね。この国は教皇がトップですので、グレイスさんは言ってみればこの国の国王みたいな人です」
トップとの会談。それはまあ緊張するのも無理はないだろう。
「こちらのお部屋です」
そして修道女は豪華な扉の前で止まると、その扉を三回ノックしてから開いた。
「失礼します」
エミリーはそう言いながら部屋の中に足を踏み入れる。椿もその後ろについて行く。
「よくぞいらしてくれましたな、エミリー様」
お爺さんが一番豪華な席に座っていた。
『なあ、あの人がグレイス様?』
失礼のないように念話でエミリーに質問をする。
『はいそうです。椿さん、今から大事な話をするので茶々を入れないでくださいね』
「こちらこそ、急な訪問に対応してくださりありがとうございます」
エミリーもにこやかな顔をしながら中に入り、挨拶をする。
(部屋に細工は……ないな)
椿はその間にも周囲を全力で警戒した。
中に教皇以外の人物はおらず、まるで一人で対応しても問題ないみたいな態度だ。奇襲を仕掛けられても生きていられるのだろうか。
更には部屋は防音性になっているので、この中の会話は外部には漏れることは無い。
「こちらこそ、満足のいくもてなしを出来なくてすまなくおもっております。トリスト王子の訃報も聞いております。トリスト王子は私たちの事もよく気にかけてくれていた良き人物でしたのに……」
「お兄様は自分の務めを果たされました。確かに私にも悔やむ気持ちはございますが、それ以上に誇らしくも思います」
エミリーは教会への親書に魔王軍幹部を立役者とも書いたそうだ。
その中身を知っている教皇がエミリーが誇らしく思うと言った理由を理解できないはずがない。実際、グレイスはにこやかに微笑んでいる。
「そして、今日はお願いがあって参りました」
「ほう?それはなんですか?、と言いたいところですが、私も検討はついてます。トリスト王子の部屋……でありますね?」
「!?見せてくださるのですか!?」
「はい。彼亡き今私たちの手には余る部屋です。エミリー様が自ら手を出してくださるのであれば我々としても喜ばしい限りです」
つまりは、グレイス達も流石に他国の王子の使っていた部屋を勝手に弄る勇気は無い。だが、その親族が自ら片付けてくれるのなら誰も文句は言わないと、そういうことだ。
「ありがとうございます」
それがわからないエミリーではなかっただろうが、ここで無駄に文句を言っても話しは前に進まない。
「それでは、それまでの間、私の教会での自由行動とルリジオンでの滞在を許可していただきたいのですが……」
「それも問題ありませんよ。教会の部屋を使いたいのならいつでも言ってください。この国は私が誇るいい国です。どうぞご自由にご滞在ください」
懐が深いのか、グレイスはあっさりと許してくれた。
この間、椿はずっと万能感知で警戒をしていたのだが、誰が襲撃に来る様子は一切無かった。
その後、世間話的なのを少し話すと、エミリーはあっさりと部屋から出ていったので、椿もすぐに追いかけた。
「……にしても護衛を誰もつけないなんて不用心だな。あの人そんなに強いのか?」
護衛が誰もいなかったことに対する疑問を投げかけるが、
「グレイスさんは確かな実力を持っています。この国で一番神聖魔法を使える人と言っても刺し違えありませんから。ですが、そもそもグレイスさんと10大神官以外では戦闘に携わる人が少ないというのもありますね」
つまり、戦えるのでは無く、戦えない人が多いから護衛がいないということか。
「なんていうか、不用心だな」
「ですが、教会は敵意の持った人物が入ると強制的に無力化する魔法が常時かけられています。教会を攻撃することはかなり難しいことでしょう」
内部から壊されない限りは、とエミリーは言った。
「……それ、なんかのフラグみたいだな」
「言わないでくださいよ!絶対に大丈夫ですから!」




