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神聖国ルリジオン

たとえストックが失くなってきてしまっても、それでも毎日更新する作者に全米が涙 (しなかった)

 神聖国ルリジオンの中心都市アルネブは遠目に見るよりも綺麗な街だった。

 別名宗教国と言うだけあって、神が見ても綺麗だと思えるような国にしているのだとか。


 道にはゴミひとつ落ちてなく、この国の人々がどれだけ神を信仰しているのかがわかる。

 エスポワール王国以外の異世界の街を初めて見た光達は興味深そうに周囲を見て、花恋やリーリエも楽しそうに色々なものを見ている。

 椿は万能感知である程度把握してるし、エミリーや近衛騎士たちは以前来たことあるし、エミリーは王女として、近衛騎士たちは騎士としてそのような行為はしない。


「お?あれが教会本部か?」


 と、近くまで来たのでとりあえず椿が反応したので、周りを見ていた全員がそれに注目する。


 街に入った時から何となくその姿は確認できていた大きな教会。その大きさはもう城と言っても刺し違えないほどだ。


「はいそうです。あの教会こそが私たちの目的地です」


 つまりそこでトリスト王子は暮らしていたのだろう。

 と、教会に近づくと、椿は不意に顔を顰めた。


「?椿くんどうしたのですか?」


 花恋が椿の顔を上目遣いで覗き込んできたお陰で反応した。


「ああ。なんか変な予感がしてな」


「変な、ですか?」


「ああ。まあ今は気にしなくてもいいだろう」


 椿と花恋がそんなことをしている間にエミリーは既に教会本部の門番に話しかけていた。


「とりあえずエミリーの守護を第一だな。下手に動いて護衛対象を傷つけたら大目玉をくらうのはこっちだ」


 エミリーの様子を大人しく見守ることにした椿と花恋。ちなみにリーリエはエミリーとお茶会の時に仲良くなった影響か、今もエミリーの隣に立っている。

 リーリエなら不意打ちにも対応できると思うので椿と花恋も安心して見守れるのだ。


 二人が大人しく見守っていると、エミリーがしゅんとした表情で戻ってきた。


「お帰り。どうしたんだ?なにかトラブルか?」


「椿さん……はい。予想はしてましたが、事前に親書を送ったとはいえその翌日に来ても流石にあちらも対応できなかったみたいです」


 その言葉をきいて椿は納得した。確かにそれはそうだ。どこの誰が親書が来た翌日に来訪するなどと予想するのだろうか。きっと誰にも予想できない。


「まあそれに関しては俺が全面的に悪かった……」


「はい。まあ私たちは椿さんに依頼をして、その椿さんが善意でしてくれたことですし文句はございませんよ。明日には入っても大丈夫みたいですし」


 なんと懐の厚い教皇なんだろう。急に来たのに明日来ていいよとは。

 ちなみになんで今日入れなかったのかと言うと、エミリー一人分は大丈夫だが、他のメンバーの泊まる場所が無い。急に来られてもそんなに入るスペースがない。もっとゆっくり来て欲しかった。とのこと。

 別に教皇も意地悪した訳では無い。仕方なくだ。


「じゃあ今日は適当な宿にでも泊まるか」


 椿が発言した言葉に誰もが驚愕した。


「え?上里くん、一度王城に帰らないの?」


 クラスメイトの堀井 美桜が疑問点を口にした。花恋とリーリエ以外は誰もが一度王城に帰還すると思っていたのだ。


「いやいや、帰るわけないだろ?」


 だが、それを断固として拒否する椿。


「なあ上里。なんで一度王城に帰らないんだ?」


 翔が聞いてきたので椿は頭を掻きながら仕方なく理由を説明し始めた。


「第一の理由としてはMPの消耗量だな。確かに魔法陣はそれほど必要視されてないが、この人数を一度に転移することを考えると魔法陣があった方が燃費がいい。分割して運ぶのも同じ理由で却下だ」


 椿のMPなら問題なく足りるが、普通に疲れるので嫌だったのだ。


「そしてその魔法陣を書くのにも普通に時間がかかる。魔法陣が書き終わるのを待つくらいなら普通に宿取った方がいいと思うがな」


 通常の魔法陣は普通の人なら3分。魔法使いなら1分で終わる。だが、これは通常の下級魔法での話。もちろん中級、上級になるにつれ書く時間は増えるし、しかもそれが宝玉を手に入れて入手した空間魔法の魔法陣ならば書くのに半日程は使う。


「第一の理由はわかったよ。なら第二の理由はなんだい?」


 椿の言いたいことを理解した光がそれと同じくらい大切であろう第二の理由を問う。


「え?ただただ面倒なだけだが?」


 その言葉に全員が呆気に取られた。


「てか、折角ルリジオンに来たんだし、観光も兼ねてゆっくりしたいんだよ俺は。他の奴らも自由行動でいいんじゃね?」


「じゃ、じゃあエミリー様はどうなるんだい!?」


「常に万能感知で見守っている。エミリーに危険が訪れたら俺が即座に反応してエミリーの近くに転移する。これで大丈夫だろ」


 ということで椿の案が通ることになった。

 召喚組は折角の異世界の土地を観光しに行った。光はまだ椿になにか言いたそうな目をしていたが、平一に連れられて行ってしまった。


 花恋とリーリエは二人で買い物に出かけている。

 近衛騎士はエミリーの部屋前で護衛に専念している。


 エミリーは宿の部屋で待機しており椿は……


「暇だな」


「そうですが……椿さん」


「どうした?」


「……どうして私の部屋に居るのですか?」


 エミリーの部屋のソファーに座っていた。


「いや、暇だったから」


「光さんに観光したいとか言ってませんでした?」


「あれは建前上の理由だ。観光なんて別にどっちでもいい」


 椿的にはルリジオンにひとつくらい九つの試練がないかと思っていたのだ。

 ルリジオンに魔法陣を設置しに行く時は見つけることができなかったが、今回椿はどの辺にあるのか凡その見当はつけていた。


「教会が怪しいな」


 教会から感じた異様な雰囲気。九つの試練の雰囲気に似ている。間違いなく教会の地下にあるだろう。それもわかりにくい場所に。


「ところで、明日は教会と対面らしいが、俺はなにかすることあるか?」


「はい。椿さんには私の護衛として着いてきてもらいます。椿さんならなにがあっても守ってくれるって信じてますから」


 近接戦も魔法戦も全て可能で、魔王軍幹部も倒したほどの実力者が護衛としてついてくる。


「相手がそれを知ったら脅威にしか見えないだろうな」


 椿はハハッと笑いながら冗談を言う。


「実際、そんなことを言ったら戦争にでも来たのかと思われますので椿さんの実績はできる限り隠す方針です」


 それが賢明だろうなと思い、もう椿からは何も言わなかった。


「それにしても」


 椿は窓から改めて教会を見つめる。


「きな臭いな。なにか、あるな」

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