方針
「で、光が開けると外にいましたって展開か」
椿達3人は、目を開けると草原の上に立っていた。
「座標もかなり離れてますね。街からも近いとも言いきれない距離ですし………」
「嫌がらせなのかなんなのかわかんないね」
エミリーは知る由もないが、空間をある程度把握できる花恋とリーリエはその面倒さにため息を吐いた。
「さて、これからどうするかを決めるか」
椿は三人を見ながら言う。
「俺はこれから北にある獣人国に向かうつもりだ」
獣人国アルテナ。そこは多種多様な獣人、所謂亜人族が住まう国だ。
戦闘能力も高く、それぞれがその種族にあった適性を持っている。
「わたくしと、リーリエはついて行く予定ですね」
「九つの試練もあと二つだしね」
椿は二人の回答に頷きながら
「問題は、エミリーだ」
エミリーの方を向いて言った。
エミリーもわからなかった訳では無いので、疑問符は浮かべない。
「わかってるみたいだから言うが、エミリーは王女だ。帝国での仕事も終わり、時間に多少の余裕があったからこそ試練の同行を許しもしたが、そろそろ国に帰るべきじゃないか?」
決して足でまといだとは言わないし、思ってもいない。そして、エミリーもそれをわかっている。
確かにエミリーはまだまだ冒険したい。だけど、これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。それに、王女としての責務もある。
「そうですね。光さん達の様子も気になります」
「まあ、そっちはグロルもいるし、大丈夫だろ」
あくまでも心配してないと言う椿に、光達への信頼度がわかる。
「じゃあ、王国に飛ばすぞ?」
「はい。お願いします」
そうして、エミリーは椿の手によって王国に飛ばされた。
「さてと、どうする?」
リーリエは椿にそう聞いた。
この質問の意味は、どうやって移動するのか、だ。
「そりゃ、もちろん飛んで」
花恋もリーリエも椿も空を飛べる。ならば、椿のこの判断は妥当であった。
「試練を見逃す心配もないしな」
「常に空間魔法を展開するのは、効率がいいとは思えませんが………」
花恋の言うことももっともなので、椿は対策を考える。
「帝国にはもう試練は残ってないんだ。帝国を出る直前くらいでいいだろ、展開するのは」
あとはMPの問題だが、リーリエはMP消費を気にしなくていいし、花恋も、飛ぶだけならば消費よりも回復の方が上回る。
故に
「何も問題ないな」
椿は飛行魔法を発動する。
「まあ、急ぐ旅でもありませんので」
「ゆっくり行こ?」
そうして、三人の空の旅が始まった。




