不安
予約投稿忘れてましたm(_ _)m
周囲を警戒しながらも前へと進む椿の少し後ろにエミリーはいた。
先程、椿になんやかんや言われたが、エミリー自身は自分のことを役立たずだと思い、その考えは変わっていない。
だが、いつまでも気にすることはできない。気持ちを前向きに。ここは九つの試練。気を抜いたら死ぬ。
「エミリー、ストップ」
突然、前を歩いていた椿が立ち止まると、そう言った。
エミリーもつられて止まり、通路の先を見る。
「来るぞ」
椿がそう言った次の瞬間、前方から龍のような生物が、こちらに突進してくるのが見えた。
「私に任せてください!」
いくらまだ完全に自信がついていないとはいえ、初撃くらいは任せて欲しい。その想いからそのセリフを言い、具現化した槍を投擲したのだが、その龍擬きはそれをいとも容易く弾いてしまった。
「………え?」
かすり傷にもならなかったその事実を目の当たりにし、その影響で対象を完全に自分に定めた龍擬きをエミリーは静かに眺めていた。
(あっ………)
己の死を感じとったエミリーは、その場から動けなくなり、
「よっと」
いとも容易くその龍擬きを蹴り飛ばした椿を見ているだけだった。
「ふぅ………大丈夫だったか?」
そんな椿の様子を見て、
(ああ、やっぱり、役立たずです………)
□■
一方その頃。
「はぐれたね」
「そうですね」
花恋とリーリエはたった2人で通路の真ん中に立っていた。
咄嗟に椿が空けた穴に飛び込んだはいいものの、いつまで経っても二人は落ちてこない。ということは、二人は別の場所をみつけ、そこに飛び込んだということだ。
「まあ、はぐれたのは仕方ないね。試練を攻略すれば合流できるだろうし」
普通ならば、そのリーリエの呑気な考えに文句を言ってもおかしくはないのだが、花恋もリーリエ同様に椿を信じている。
だが、問題は生じている。
「で、どうしましょうか………?」
花恋の言葉に、リーリエも少し悩む。普通ならば、このまま進めばいい。そう思うだろうが
「出口が、ないもんね」
花恋とリーリエは出口のない部屋に閉じ込められているのだ。
「入ってきた穴も塞がってる………」
「それに、壁を壊そうとしても、壊れません」
リーリエが空を飛んで確認しても、入ってきた入口は既に閉ざされている。
花恋が魔法や物理で部屋を壁の破壊を試みるも、どうしても壊すことができない。
「参ったね。どうすればいいんだろう………」
リーリエが降りてきて、部屋をぐるっと見渡すと、違和感を覚えた。
「………ん?」
何も無い殺風景な部屋。だけど、先程とはなんら変わらないように見える。
「なんだろ………」
リーリエが試しに壁に触れても変化はなかった。
「ダメです。わたくしの力では他の通路を見つけれません。リーリエ?」
周囲の出口を探していた花恋は、リーリエに振り返ると、壁に触れたまま動かないリーリエを見て不審に思った。
「えっと、どうしたのですか?」
「え?ううん。なんでもない。ただ、ちょっと、ね?」
リーリエが何かを調べている。リーリエの勘は存外当たる傾向にあるので、花恋はそれを邪魔しないように大人しくすることにした。
「わかりました。何かありましたら、教えてください。わたくしも、調べてみますので」
「わかった。ありがとう」
そうして、二人はそれぞれ調べながら過ごしていく。
リーリエの中の違和感は拭えぬままに。




