自分のために
よし、今日は遅刻してない!セーフ
時は椿とリーリエがエスポワール王国に帰還した時まで遡る。
「嫁がれたって………どういうことだ?」
椿とリーリエは一番状況を知っているという花恋のところまで足を運んでいた。
「はい。速くお伝え出来たら良かったのですが、椿さんもリーリエさんもこの3日間は忙しそうにしていらしたので………」
花恋とリーリエが最後に通話した後、花恋はエミリーから結婚することを伝えられたそうだ。
花恋は帝国に居残ってもできることはなく、椿に状況を伝えられない方が最悪と判断したため、単独で戻ってきたそうだ。
「にしても、同盟のために結婚か………」
日本でも昔は繋がりを持つために結婚をしていたとも聞く。ならば、何も不思議なことは無いが。
「どうすべきか、だな」
現在の椿の立場はただの冒険者。一般人だ。
すると、リーリエが控えめに椿の服の裾を引っ張ってきた。
「どうした?」
椿が問いかけると、少しだけ俯きながら
「椿は、どうしたいの?」
リーリエの言葉に椿は少し悩む。本当は会いに行きたい。結婚を止めたい。だけど、エミリーが本心から結婚を望んでいるのであれば、椿が止めるのは違うだろう。
自分の都合だけで、エミリーの幸せを壊すのは違うだろう。
「椿くん、聞いてください」
だが、花恋も話しかけてくる。
「エミリーさんがこの結婚を望んでいるのかは分かりません。ですが、本心では無いような気はします」
気がする。ということは勘なのだろうが、椿は花恋を疑う気にはならなかった。
「本心で結婚したいのであれば、あんな悲しそうな表情はしなかったはずですから………」
エミリーの悲しそうな表情。だが、たとえ望まれていなくとも、既に結婚しているのであれば
「結婚の準備は大変なはずだよ。だから、今椿が行ったら間に合うと思う」
間に合う可能性がある。だが、たとえ結婚式から連れ出したとしてもエミリーは………
「椿くん。わたくしは椿くんが何に悩んでいるのかある程度わかっているつもりです。だからこそ言います。椿くんは、椿くんが本当にエミリーさんのことが好きならば、椿くんのやりたいようにしたらいいと思ってます」
花恋のその言葉を聞いた瞬間、椿は帝国に向かって飛んで行った。
□■
「なん、で………?」
エミリーの口から疑問が零れる。絶対に来ないと思っていた人物がそこに立っているのだから。
「貴様、皇子の結婚式を邪魔するとは、どれほどの大罪か分かっているのか!?そもそも、帝城に侵入した時点で貴様の死罪は確定している!ここで潔く死ね!」
帝国の兵士が椿の首に向かって剣を振り下ろそうとする。
「ダメ!」
エミリーが大声で叫ぶが時すでに遅し。
「【跪け】」
椿のその一言でその兵士はその場に倒れた。
「!?総員、あいつを今すぐ殺せ!」
皇帝は椿を危険人物と判断していっせいに殺すように命令した。
『うおぉぉぉぉぉぉ!!』
護衛として周囲から守っていた兵士が一斉に椿に襲いかかる。
だが、椿は威圧するだけで、百人近くの兵士を全員気絶させた。
「な!?」
いくらなんでも威圧だけで全員倒してしまったという事実に皇帝は絶句する。
招待客は全員パニックになっているが、椿が招待客に視線を向けていないこと。視線はエミリーとヘクトールに向いていること。椿が撃退したのは襲ってきた相手だけであるという事実から、何とかその場から動いてはいなかった。
椿は一歩一歩エミリー達に近づく。
だが、ヘクトールはエミリーと椿を隔てるようにエミリーの前に立った。
「貴様。我々の結婚式に何の用だ」
その瞬間、ヘクトールから殺気が溢れ出す。あまりにも雑な、無差別な殺気。
招待客はそれを感知して、ヘクトールが本気で戦う気だと、椿が瞬く間に殺されることを期待していた。
だが、次の瞬間には、洗練された本物の殺意がヘクトールただ一人に注がれた。
「!?」
その殺気を浴びてヘクトールは目眩がして倒れそうになる。
だが、気絶しなかっただけヘクトールの精神力は凄いとエミリーは賞賛するが、招待客からしてみれば、ヘクトールが急にふらついたことがわからなかった。
「エミリー、話しに来たぞ」
そうして近づいた椿は全員の耳に聞こえるようにそう言った。
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『家族に疎まれて、醜穢令嬢として名を馳せましたが、信用出来る執事がいるので大丈夫です』というタイトルです
一応ラブコメ
是非ともよろしくお願いします!!




