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いざ帝国へ

「すみません。今回の護衛依頼ですが、私は辞退させていただきます」


 早朝。花恋とエミリーが出発の準備をしているところにグロルがそう報告しに来た。


「折角誘ってくださったのに、申し訳ございません」


「大丈夫ですよ。正直花恋さんだけでも過剰戦力でしたから」


 エミリーのその言葉は事実で、エミリーからすれば帝国の戦力程度、花恋単体で壊滅できると考えている。そこにグロルまで連れていくのは頭がおかしいと言われてもしょうがないだろう。


「では、この後出発するのはエミリーさんとわたくしだけですね」


「はい。よろしくお願いします」


 ということで今回帝国に行くのはエミリーと花恋だけ。


「ルリジオンに行った時に比べますと、随分少なく感じますね………」


 花恋が荷物を纏めながらそう呟く。


「ですね。でも帰ってすぐに帝国に行くわけですし、道中ではあまりそう感じないかもしれないですけどね」


 神聖国から帰ってからすぐに帝国に行くのだ。二人とも疲労が溜まってることだろうし、道中では荷物の量など気にならないだろう。


「そういえば花恋さん。馬車の用意ですが………」


 エミリーが移動するための足について聞こうとしたものの、


「え?わたくしが走って行くのではないのですか?」


 ごく自然に、花恋がエミリーも背負って行くと言ったのだ。


「いえ、それでは花恋さんの負担が………」


「大丈夫ですよ。帝国にどのような用事があるのかはわかりませんが、はやく終わらせて国に帰りたいですものね」


 花恋のその言葉にエミリーは俯くことしかできなかった。

 今回の目的は帝国に婚約について話に行くこと。場合によっては、そのまま結婚する可能性もある。


 帝国が一体どのような理由でエミリーを呼び出し、どのような理由ですぐに結婚させるのかはわからないが、覚悟を決める必要はある。


「では、お願いできますか?」


「はい!任せてください!」


 ということで、二人は荷物を纏めると、椿が用意していたポケット型の魔導具(アーティファクト)に荷物を全て詰め込み、城の入口まで移動した。


「お父様はまだ帰ってきませんね………」


 エミリーの父ははやくても午前中に帰ってくる予定だったが、どうやら間に合わなさそうだ。


「では、グロルさん。お願いしますね」


 花恋はグロルにそう言葉を投げかける。


「はい。椿くんがいない分まで、私がしておきますから」


 教皇を辞めてエミリーに仕える。これが今のグロルの仕事であり、生きる意味だ。だからグロルはエミリーが帰るまでこの国で待つことにしたのだ。


「では、エミリーさん。行きましょうか」


「はい。では、皆さん。行ってきますね」


 そうして二人は手を繋いで王都から出ていった。


「………そろそろ、いいでしょうか」


 王都から徒歩十分程度。森の中まで入った二人は、ここなら誰にも見られないと判断し、念の為花恋の万能感知まで用いて周囲を索敵する。


「………いるのはモンスターくらいですね。人間の気配はありません」


「ありがとうございます。では………」


 そうしてエミリーは花恋の背に乗った。


「失礼します………」


「いいですよ。では、飛ばしますので気をつけてくださいね」


 花恋は一言断りを入れると、鬼化を使って最大速度で走り始めた。


「ー!ー!ー!」


 あまりの速さ故にエミリーが停止をお願いしても風に妨害されて花恋にはその声は届かなかった。


 二人が向かうのはディグダチュール帝国。この国での出来事が、エミリーにとってのターニングポイントになることなど、この時は、誰も予想していなかった。

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