殺戮本部への潜入
リーリエが協力することにより、アマゾネス達は本格的に作戦を開始することになった。
「そういえば、自己紹介してなかったね。私はリーリエ」
「そうであったな………我が名はサンだ。覚えておくといい」
アマゾネスのリーダー格であるサンと自己紹介し、ついに作戦が明かされる。
「我々は、国に着いたら裏口から潜入し、頃合いを見て奇襲を仕掛ける。お主は中が騒がしくなった頃に上空から奇襲を仕掛けてくれ」
簡単な奇襲作戦。だが、下手に作戦を練るより、真正面から挑むよりは、まだ勝算はある。
これが、サン達が勝つための作戦なのだ。
「でも、あなた達がそんなに急ぐ必要があるの?」
「勿論あるさ。我々も逃亡している身でな………我らの居場所も時期に特定され、潰される。そうなればおしまいなのでな」
その前に攻撃を仕掛ける、と。
なんとも誇り高いこと。
リーリエは専ら協力する気は無いが、椿のためだ。ここは協力した方が身のため。
「では、準備も整っている。リーリエ殿の理由もある………今日、この瞬間から出撃だ!」
サンは地下空間にいる全てのアマゾネスに号令をかけた。
それぞれが武器を持ち、地上に出る。
「これより、トゥルチェリイ本国へと向かう!走れば夜までには着くだろう!」
そうして、サン達アマゾネスはリーリエのことを気にすることなく走り出した。
リーリエも走っても良かったが、面倒だったので、翼を展開して飛んで行くことにした。
「それにしても………ギリギリの戦いなんだね」
改めて見る装備の貧弱さ。これで真正面から戦おうものなら、絶対に敗北まっしぐらだろう。
「まぁ、それもそうであるが、相手は全員素手。気功術を習得しているとはいえ、同じ技術を持った相手とは戦いにくいだろう」
そんな他愛もない会話をしながらも辿り着いた街。というよりも要塞のような場所。
「我々は、脱出時に用いた場所から潜入し、奇襲を仕掛ける。リーリエ殿は、上空から気を伺って欲しい」
そう言って、サン達は内部に侵入した。
「さて、どうしよっかな」
現在、リーリエは椿の気配を感知できていなかった。
椿は既に脱出して、九つの試練を受けに行っている。だが、そんなことを知らないリーリエは、もしかしたら逃げているが、脱出する糸口が見えないのではないかと、考えていた。
「もしかしたら、気功術っていうのを習得しようとしてるだけかもだしね」
リーリエには、真実は分からない。だから、会って確かめるのだ。
「それが、今の私のやること」
椿と一緒にエスポワール王国に帰ること。
やがて、内部から戦闘音が聞こえてくる。
「始まった、みたい………」
ならば、椿を探すために、サンたちの負担を軽減するために、リーリエも少しだけ暴れることにした。
静かに上空から潜入したリーリエは、"隠蔽"を解除すると、近くにいたアマゾネスを軽い魔法で吹き飛ばした。
「な、何者だ!?」
アマゾネス達はその拳をリーリエに向ける。だが、彼我の戦力差は歴然だった。
「さて、と………椿はどこかな?」
そうして、ものの数分でその場を制圧してしまったリーリエ。
「こんなに騒いだら、椿も気が付いてくれると思ったんだけどな………」
そう言いながら、上を見ると、何者かが飛び降りてくるのが見えた。
「うわっと」
それを何とか回避して、着地地点に視線を向けると、そこには………
「カカカ!骨のある侵入が来たみたいじゃの!どれ、我と手合わせしてくれんか?」
一番強そうな人物が舞い降りた。




