殺戮国トゥレチェリイの実態
「で?俺をどこに連れていくつもりだ?」
椿は現在、大人しくイズモの後ろについて行っていた。
ここがどこかもわからないなら、せめてイズモから情報を聞き出そうという魂胆だ。
「なに。しばらくすれば地上に出られる。話しはそこからさ」
しかし、イズモは何も話そうとせずに静かに前を歩くだけだった。
仕方がないので椿は大人しく後ろを歩く。
そうしてしばらくすると、
「ほれ、地上に出たぞ」
確かに地上に出てきた。だが、
「これは………コロシアム、か?」
そこはまるでコロシアムだった。今椿がいるのは下を一望できる観客席らしき場所。しかも、お偉いさんが座りそうな場所だ。
眼下にはコロシアムらしく、決闘するための舞台があり、舞台の周りは壁で覆われている。
そしてその壁の上には観客席が用意されていた。
「どうだ?これが我が国唯一の街である」
いや、これはどう見ても街ではねぇよと椿は思った。
「………ちなみに、あそこでは普段何してんだ?」
だいたい予想はつく。予想はつくが、外れていて欲しい。そういう願いを込めて椿は質問をする。
「ああ、あそこか?あの場ではいつも殺し合いをしているぞ?」
予想通りすぎて言葉も出ない。
(やっぱり、噂どおりの国だな………)
イズモは、椿には鎖国国家トゥレチェリイと名乗ったが、椿は本当の国名を知っていた。
殺戮国トゥレチェリイ。その名の通り、日夜殺し合いが起きている国だ。まさか、唯一の街がコロシアムになっているとは、予想だにしなかったが。
「で?俺は結局どうなるんだ?」
椿は少し覇気を滲ませながら聞く。
「言っておくが、子孫繁栄のための道具になるつもりは無いぞ?」
椿としても、ここのアマゾネスたちの用いた戦闘技術は欲しいところだ。だが、だからと言って、アマゾネスたちの道具に下る理由はなかった。
だが、そんな椿の心情がわかったのか、イズモは少し笑いだした。
「ははは!わかる。わかるぞお主の考えは。お前は私たちの道具になるつもりは無いが、私たちの戦闘技術は欲しい。だが、私たちも独自の技術をおいそれと教える訳にもいかぬのでね………」
だが、とイズモは言葉を続ける。
「我らとしてもお主の子種は是非とも欲しいところ………そして、お主になるべく長く国にいてほしいのも事実だ………」
イズモはわかっているのだ。椿が、既にイズモよりも圧倒的に強い、ということを。
「私たちはお主に我らの技術を教えようではないか!」
それは椿にとっても願ってもないことだった。だが、
「何が、望みだ?」
椿の質問。何を要求するのか。物によってはそれによって椿は拘束されることになるのだから。
「なに、難しいことは言わぬよ。契約として、私たちの誰かに、一度でも負けたのであれば、その時点でお主は我らの奴隷になること。そして一週間以内に我らの技を奪えなければ、その時点で一人ずつに必ず子種を植え付けることだよ」
ならば、椿は一週間以内にアマゾネスの技を完全に使用出来れば問題ない。
それに、椿には引けぬ理由もあった。
(この国の、地下に感じるな………)
試練の気配を………
椿は少しだけ思案すると
「わかった。その条件なら大丈夫だ」
決断をした。
「ほう?負けるかもしれないのにか?言っておくが、この国の戦士たちは甘くはないぞ?」
「わかってるさ。だから、その上で負けることはないし、その技を使用できると、そう考えたんだよ」
この力を得ることさえ出来れば、椿はもっと強くなれる。
そう感じたのだから
「だから、精々、お前の企みに乗ってやるよ」
挑発的な目を向けた。
「………なるほどのぉ。では、早速明日からでも始めようではないか。国の者には説明しておく。お主は………召喚された部屋にでも寝泊まりしておいてくれ」
「わかった。じゃあ、明日から頼む」
椿の、長い一週間が始まろうとしていた。
今更だけど、イズモの言ってることやばいよね………
っていうかアマゾネス全般が
まあ、大丈夫でしょ!




