第六話 シーフィルド家の大切な場所
新しい世界に生を受けて一年とちょっと。
少しづつ歩けるようになってきました。
エリーお姉様はお部屋の中を歩きまわっていて、お母様達とメイドさんは追いかけるのが大変です。
まるで小さな竜巻が、部屋の中を動き回っています。
季節は春、暖かい日々が続くようになりました。
お部屋だけでなく、お外にお散歩に行くことも増えてきました。
お外だと思いっきり動ける為か、エリーお姉様はとても嬉しそうです。
そんなとある春の日、私とエリーお姉様はお父様とお母様達に連れられて、お屋敷のお庭の片隅に連れられてきました。
「エリーもクラウスも、ここに来たのは初めてだったな……」
お父様がつぶやいた先には、木々に囲まれた綺麗に清掃されたお墓でした。
「「お花持ってきたよ!」」
メイドさんと一緒に、お兄様達がお庭からお花の花束を持ってきました。
そして、お兄様達がお墓にお花を手向けました。
それを合図にして、お父様にお母様達、お兄様達、メイドさんも祈りを捧げていました。
私も真似をして祈ります。
エリーお姉様も一緒に真似をして祈っています。
「エリー、クラウス。ここはお父さんのお父さんお母さん、それにお兄さんが眠っている場所だよ。二人にとってはおじいちゃんとおばあちゃん、おじさんかな」
「とっても強くて、とっても優しい人達だったのよ」
「ああ、とってもとっても強い人達だった」
お父様、アンお母様、リサお母様が、順番にエリーお姉様と私に語りかけました。
「昔ね、この国だけでなく周りの国を巻き込んだ大きな出来事があったんだよ。エルビスもオスカーも、もう少し大きくなったら色々話す事としよう。五年前にあったあの出来事を」
「「はい!」」
お父様はお兄様達に語りかけました。
私もいつかは教えてくれるのかな?
そんな事を考えていると、ぎゅっと腕を掴まれた感触。
ふと腕を掴んだ人を見ると……
「……」
何かを噛み締めるような表情。いつも明るいエリーお姉様とは違う暗い顔。
何かあったのだろうか?
「さあ、湿っぽいのは終わりだ。みんなでお昼ご飯としよう」
「「やった!」」
お父様がお昼にしようと言うと、お兄様は大喜びです。
エリーお姉様を見るといつもの笑顔に戻っています。
五年前にこの世界で起きた出来事とか、まだまだ知らない事ばかり。
色々調べて、私がこの世界に来た意味、出来る事を少しづつ考えよう。