第三話 お兄様達
新しい世界に生を受けて三ヶ月。
ようやく首が座ったかな? って感じで、相変わらずの赤ちゃんライフです。
そしてエリーお姉様がべったりと抱きついています。
これも相変わらずですね。
新しい世界に転生してしばらく経ったのですが、話す言葉や文字などは問題なくわかる様です。
言葉使いや考え方もスムーズに対応しています。
転生の時に、天界の人が色々してくれたおかげかな?
この世界がどうなっているのか色々知りたくなってきました。
とは言っても今は寝るのがお仕事。動けるようになるまでは暫くの我慢です。
今日はアンお母様はいなく、リサお母様が一緒にいます。
なんでも、アンお母様はお兄様達にお勉強を教えているそうです。
アンお母様は教師役も出来るのですね!
将来は私やエリーお姉様にも教えるのかな?
ドタバタドタバタ……バン!
「「赤ちゃん見にきました!」」
「こら! ノックしなさいといつも言っているでしょう!」
「「……ごめんなさい……」」
廊下を走る足音が聞こえたかと思ったら、勢いよくドアが開きお兄様達が入ってきました。
それを見たリサお母様がすかさずお兄様達を叱り、二人はしょんぼりしています。
……もう見慣れてきた光景です。
「あー」
とりあえずお兄様に挨拶しておきます。
ちなみにエリーお姉様は、私に抱きついたまま熟睡中。
「あなた達は普段はきちんとしているのに、何でここに来る時はいっつもうるさいのよ!」
「弟と妹に会いたいのは分かりますが、ノックをしなさいといつも言っているでしょう!」
「泣かなかったからよかったものの、もしびっくりして泣いちゃったらどうするの!」
「……ごめんなさい……」
ああ、リサお母様激怒しています…
お説教が止まりません。
お兄様達は涙目でしょんぼり。
リサお母様の声が大きいので、エリーお姉様が起きそう……がっつり寝ていますね。
「リサさんもその辺で。エルビスもオスカーも反省したかな?」
「アン様……二人とも反省した?」
「「はい!」」
と、開いた扉からアンお母様が入ってきてリサお母様とお兄様達に声をかけました。
リサお母様は渋々と言った感じでお説教をやめ、お兄様達は元気よく返事をしました。
「返事だけはいつも立派だね。ほら、クラウスを抱っこしてみる?」
「「はい!」」
リサお母様は苦笑しながら、お兄様達に私を抱いてみるかと聞き、お兄様達は元気よく返事をします。
返事を聞いたリサお母様が私を抱き上げました。
「優しく抱くんだよ」
「「分かりました」」
リサお母様は、お兄様達に私を抱かせました。
お兄様達は恐る恐るといった感じで抱いてきました。
エルビスお兄様とオスカーお兄様は、笑った顔、お父様と同じ青色の髪など、とても似ています。
それもそのはず、二人は双子です。
アンお母様の子どもで、3歳のお兄様達。
エルビスお兄様が長男で、オスカーお兄様が次男です。
二人ともそっくりなお顔ですが、オスカーお兄様のお顔にはいつも絆創膏がついています。
エルビスお兄様は絵本を読むのが好きで、オスカーお兄様はお外で遊ぶのが好きなのだそうです。
でもお二人とも、とっても仲良しです。
「次、僕が抱っこする!」
「次、僕が抱っこするの!」
仲良いのですが……
あれ?私を次に抱っこする順番で、喧嘩になり始めています。
「「うううう!」」
お兄様が私を抱いたまま睨み合っています。
一触即発な雰囲気になる所です……
ヒョイっと、突然誰かに抱き上げられました…
「「あ!」」
「二人ともそこまでですよ」
お兄様が振り返ると、私を抱き抱えたアンお母様がいました。
……アンお母様のお顔は見えませんが、何やら黒い雰囲気が……
「二人ともお仕置きが足らないみたいですね。リサさんお願いできますか?」
「……そうですね、弟を取り合って喧嘩なんてみっともないですね」
「「ヒィィィ……」」
アンお母様に抱き上げられた状態で、アンお母様とリサお母様を見ると……笑顔なのに笑顔じゃない……
お兄様達はこの後起こる恐怖に震えて抱き合っています。
「ゆっくりお話ししましょうね」
「「あぁぁぁぁ……」」
リサお母様がにっこり笑いながら、絶望の表情をしているお兄様達を部屋の外にひきづっていきました。
「あの二人は普段はとってもいい子なのに、クラウスを抱っこする順番でいつも喧嘩になるのよね」
「あー」
アンお母様が苦笑しながら私に話しかけます。
私も若干苦笑しながら、アンお母様に返します。
……ちなみにエリーお姉様は、この騒動の最中も全く起きずに熟睡していました。