第二話 お父様とお母様達
新しい世界に生を受けて一ヶ月。
まだまだ赤ん坊なので、寝るのが仕事です。
今はお乳も飲んでおしめも替えてスッキリし、お腹いっぱいなのでとっても眠いです。
うつらうつら……
日当たりの良い部屋でまどろみに包まれていると、横からぎゅーっと抱きつかれた。
「くすくす、仲がいいわね」
「エリーはいつもクラウスのそばにくっ付いているね」
声がした方に顔を向けると、アンお母様が微笑んでいて、リサお母様が苦笑していた。
アンお母様は、私を産んだお母様。
銀色の髪を腰あたりまで伸ばしています。
どこかのお姫様の様な感じで、とっても優しいです。
リサお母様は、エリーを産んだお母様。
金髪を肩までに切り揃えた、長身でスラっとしていて、口調もサバサバしているので騎士の様です。
そして、私にべったりくっ付いて寝ているのがエリーお姉様。
私より三ヶ月早く産まれています。
同じ赤ちゃんなので一緒に育てられているのですが、いっつもくっ付いてきます。
今やお互いくっ付いているのが当たり前の様です。
こんこん。
「入っていいか?」
「大丈夫ですよ」
不意にドアがノックされ、男の人の声がしました。
リサお母様が入室の返事をします。
「おやおや? やっぱりエリーはクラウスにくっ付いているのか」
「いつも通りですよ、アル」
ドアを開けて入ってきたのは、アルフレードお父様。通称アルお父様。
背が高く細身ですけどがっちりしていて、青色の髪を短く切り揃えています。
アルお父様は、部屋に入ってくるなり私にくっ付いているエリーを見て、リサお母様と一緒に苦笑していました。
アルお父様と、アンお母様とリサお母様は夫婦です。
貴族なので一夫多妻制なのだそうです。
アンお母様が正妻でリサお母様が側室なのだそうですが、そんな事関係なくお父様とお母様達は仲良しです。
いつもニコニコしていて、喧嘩している所は見たことありません。
アンお母様とリサお母様がお手伝いの人と一緒に、私とエリーの面倒を見ています。
お互いにお乳をあげたり、おしめを替えてくれたり、抱っこしてくれます。
貴族の家によっては、子育てをお手伝いさんに丸投げしている所もあるそうです。
また、我が家のお母様は仲が良いのですが、中には正妻と側室の仲が良くなく、喧嘩ばっかりしている所もあるそうです。
たまにお手伝いさんが一人で喋っているのを聞いていると、他の家は大変だなぁって思います。