第十九話 ルナティス
「陛下、そろそろお時間となります」
「うむ、会議の後に色々話そう。それまではゆっくりしていってくれ。出来れば娘と一緒にいてくれないか?」
「クラウス、エリー。いい子にしているんだよ」
お付きの人に時間だと言われ、陛下を含め大人達がゾロゾロと部屋を出ていく。
陛下は娘と一緒にいてくれと、私とエリーお姉様に頼んでいた。
部屋に残ったのはメイドさんと私とエリーお姉様。
「さあ、クラウス様、エリー様。ルナティス様のお部屋にご案内いたします。仲良くしてくださいね」
「はい」
「分かりました」
メイドさんに案内されてお城の中を進んでいく。
とある部屋の前に案内された。
こんこん。
「ルナティス様、入りますね」
日当たりの良い部屋にいたのは、ソファーで別のメイドさんに絵本を読んでもらっている小さな子だった。
大きなウサギのぬいぐるみを抱いて、大きな目をパチリとしてこちらを見ている。
髪の毛は茶色に近いふわふわの長い金髪で薄い紫のワンピースをきているが、私と同い年という割には小柄だった。
「わたしルナ、あなたはだあれ?」
こてんと首を傾け、ほっぺに指をあててこちらの事を聞いてくるルナティス様。
舌足らずの声がとても可愛い。
「私はエリーです」
「僕はクラウスです。ルナティス様」
「エリーにクラウス?」
私とエリーお姉様がルナティス様に挨拶したら、再びこてんと首を傾げて私とエリーお姉様の名前を呟いている。
どうも何で私とエリーお姉様がここにいるかわからないみたいだ。
「ルナティス様、クラウス様はルナティス様の従兄弟ですわ。エリー様はクラウス様のお姉様です」
「クラウスお兄様にエリーお姉様?」
「そうですね、ルナティス様にとってはお兄様とお姉様になるかもしれませんね」
メイドさんがルナティス様に私とエリーお姉様との関係性を説明してくれたが、どうもルナティス様は兄と姉と認識しているようだ。
少し考えるような素振りをしてソファに人形を置いて、てててててとこちらに歩いてきた。
そして私とエリーお姉様の手をぎゅっと握ってきた。
……随分と小さい手だな。
「クラウスお兄様にエリーお姉様?」
「はいそうですよ、ルナティス様」
「ルナ」
「えっと、ルナ様?」
「ルナ」
これはどうも愛称でしかも呼び捨てで呼んで欲しいみたいだ。
「ルナ?」
「うん、えへへ」
おお、ルナティス様もといルナを名前で呼んだらにぱあって笑った。
とても可愛い笑顔だ。
「じゃあ私はルナちゃんって呼ぶね」
「うん、エリーお姉様」
「お姉様でなくてお姉ちゃんって呼んで欲しいなあ」
「エリーお姉ちゃん?」
「うん! ルナちゃんは可愛いなあ」
「お姉ちゃん苦しいよ」
エリーお姉様はルナが可愛くて仕方ないみたいだ。
ぎゅーっと抱きついていて頬擦りしているけど、ルナはちょっと苦しそうだ。
エリーお姉様には妹がいないのもあるのかな。
「ルナ、僕の事もお兄様ではなくお兄ちゃんでいいよ」
「お兄様はお兄様なの」
「お兄ちゃんじゃなくていいの?」
「お兄様なの」
私の事もお兄ちゃんと呼んでもらおうかと思ったけど、何故かお兄様は変わらずだった。
何かこだわりがあるのかな?
「エリーお姉ちゃん、一緒にお人形で遊びませんか?」
「うん、ルナちゃん!」
エリーお姉様とルナは部屋の隅にあったお人形で遊ぶようだ。
仲良く手を繋ぎながらてくてく走っていった。
「うう、姫様あんなに笑顔で……」
「よかった……、本当によかった……」
ふと後ろを向いたら、メイドさんがハンカチで目頭を押さえながら泣いていた。
今までお母さんもいなくてお父さんも忙しいから、きっとルナは寂しい思いをしていたのだろう。
そんなルナの事を間近で見ていたから、メイドさんもルナが笑顔でいる事が嬉しいのだろう。
「お兄様、こっちにきてください」
「弟君、こっちにきて!」
「今行きます」
さて、お姫様からのお呼び出しだ。
僕も頑張らないと。




