第八話 礼儀のお勉強が始まります
この世界に生を受けてもうすぐ二年。
絵本を読んだり動いたりと、少しづつできる事が増えてきました。
お屋敷の庭なども、お母様達やメイドさんと一緒に出ています。
エリーお姉様は色々なところを走り回って、さながら台風が上陸した様です。
「エリーも二歳を超えたし、クラウスももうすぐ二歳。そろそろ礼儀作法の家庭教師をつけないと」
「そうですね。クラウスはとにかくエリーは早めに礼儀作法を身につけさせないと」
「……はあ、我が子ながらあのおてんばぶりには……。なんとか大人しくなってくれれば……」
こんな親の話があったかなかったかはさておき、二人の姉弟も貴族としての教育が始まる事になりました。
年齢で教える事が違うので、二人の兄達とは違った家庭教師が用意されるそうです。
「という事で、エリーとクラウスも今日から礼儀作法の練習を始めます。立派な紳士淑女を目指しましょう」
「「あい!」」
お屋敷の一階にある少し広めのお部屋に、エリーお姉様と私はいました。
一緒にアンお母様と執事のセバスがいます。
家庭教師が決まるまで、アンお母様とセバスが代わりに色々教えてくれるそうです。
エリーお姉様にはアンお母様、私にはセバスがつきます。
「クラウス様、それでは始めましょう」
「はい」
部屋の片隅に移動した私に、セバスが話しかけました。
初日なので、まずは貴族の心得などを色々話してくれます。
「クラウス様は利発なお方です。すぐに色々出来る様になるでしょう」
「ありがとうございます」
セバスの教えは分かりやすく、直ぐに覚えることが出来ます。
これから頑張って色々覚えていこう。
お父様みたいになれるかな。
それから時間が経ち、お昼の時間になったところで、
「クラウス様、そろそろお時間となります。お疲れでしょうから本日はここまでにしましょう」
「ありがとうございます」
セバスより終了の合図があり、本日はここまでとなりました。
ふと反対側のエリーお姉様とアンお母様の方を見ると…
「音を立てて椅子に座らない!何回言ったらわかるんですか!」
「……はい……」
うお、アンお母様が超スパルタモード! 背中から炎が見えそうな位の迫力。
エリーお姉様が物凄く小さくなっている…
若干涙目にもなっている。いつもの元気なエリーお姉様のカケラもない…
「奥様、そろそろお時間ですし、この辺でいかがでしょうか?」
「あら、もうこんな時間ですか。そうですね、ここまでにしましょう」
「ほっ」
セバスがアンお母様に話しかけ、どうやらこれで終了になる様です。
エリーお姉様は明らかにほっとしています。
「セバス、クラウスの様子はどうかしら?」
「流石はクラウス様。これならすぐに色々な事を覚えられるでしょう」
「クラウスの方は家庭教師が来るまでに、基本の所はできそうね。問題は……はぁ」
「ご心中お察しします」
アンお母様とセバスの話の内容から、私はなんとか及第点をもらったみたいです。
しかしアンお母様とセバスはエリーお姉様を見るとため息をついています。
……あれ? これは怪しい雲いきです。
「クラウス、これから午前中はセバスに色々教えてもらいなさい。クラウスなら直ぐに色々覚えるでしょう」
「ありがとうございます、アンお母様」
アンお母様は私に笑顔で話してくれます。
これから頑張って色々覚えよう。
アンお母様は、笑顔のままエリーお姉様の方を向きましたが……
……なんだか笑顔がとっても怖いです。
「エリー、あなたは暫く午前と午後両方共に礼儀作法の練習です。私やリサさんがみっちり教えます」
「そんな……」
アンお母様からの非情通告に、エリーお姉様はガックリと項垂れています……
まだ二歳になったばっかりでは大変かと思うけど、あのままだとお転婆なお姉様になってしまうので、仕方ないのかな……って思っています。




