プロローグその1 天界での目覚め
そこは真っ白の世界だった。
ただ真っ白な空間、上下左右の感覚も感じられない。
そんな場所に、ふわふわと体が浮かんでいた。
ここはどこだろう?
全く、身に覚えがなかった。
ふと自分の手を見ると、いつもの見慣れたシワシワの手が見えた。
ここは死後の世界なのか?
そんな事をふと考えながら、手をにぎにぎしていた。
そう言えば自分の名前が思い出せない……
でも、何となく色々な事を覚えている。
好きな食べ物や飲み物に、今までの自分の過去も……
でも自分の名前が思い出せない。
一体自分は誰なのだろうか?
そんな事を考えていたら、ふとどこからか声が聞こえてきた。
「ここは天界、世界を管理する場所です」
不意に目の前が光り、中性的な人物が浮いていた。
イメージとしては、昔のギリシャ神話に出てくる神様のような服を着ていた。
ふと、そんな事が思いついた。
「あなたは、あなたのいた世界で天寿を全うされました。そしてあなたがいた世界から、魂が天界に運ばれました」
つまり、私は元住んでいた世界で死んで、いま天界という所にいるらしい。
でも何故か悲壮感は感じなかった。
「あなたは不慮の事故で亡くなった訳ではありません。その点はご安心を」
あ、そうなんですね。
「早速ですが、時間がないのでお話しさせていただきます」
「実はあなたにお願いがあって、ここ天界に来ていただきました」
お願い?
何だろう?
「あなたには、今までいた世界から別の世界へ行っていただきたいのです」
「そして、その世界を救っていただきたいのです」
救う?
一体、何を救えばいいのだろう?
「あなたに行っていただきたい世界は、あなたが住んでいた世界で言うところの中世ヨーロッパの様な世界です」
「その世界は科学は発達していなく、その代わりに魔法が存在しています」
「いわゆる石油や天然ガスみたいな物はなく、人々の生活は魔法に大きく依存しています」
魔法とは、なかなかファンタジーな世界ですね。
でも魔法があるなら、何でも出来るのでは?
「その世界を管理しているのは、私とは別のものでしたが……その……」
何だろう、歯切れが悪いなあ。
「実はその者が色々やってしまいまして、その世界が大変な事になってしまいました……」
色々やってしまったって、一体何をしたのだろう?
「各世界では、その世界を発展させるために、別の世界の人を転生させる事がたまにあります」
「転生させる事自体は何も問題ありません。その世界にとって適当な刺激になる事は良い事です」
「問題なのは、その転生者が大きな問題を起こしてしまった事です」
大きな問題とは、その転生者は何をしてしまったのだろうか。