滑り台
ある、夏の日。小3の翔太は友達3人と一緒に、いつもの公園に来ていた。
「今日は何する?」
さくらちゃんがみんなに聞く。
「おにごっこは?」
「えー昨日もしたじゃない」
「じゃあ、水遊びをしよう!」
「びしょびしょになっちゃう。前にびしょびしょになって家に帰ったら、ママに怒られたからいや」
他にも、だるまさんが転んだや、ケイドロなどが出たがどれも却下されてしまった。
それもそうだ。翔太たちは夏休みが始まって二週間、毎日のように一緒に遊んでいた。もう、思いつくほとんどの遊びを遊びつくしていた。
「じゃあ、かくれんぼしようよ」
「それ、いいね!」
「でも、この公園じゃ、すぐ見つかっちゃうよ」
翔太のかくれんぼ、という提案。賛成の声も出たが、やはり、反対されてしまう。この公園は、広いというほど広くはなく、遊具も少ない。とてもかくれんぼの醍醐味、鬼に見つかるか見つからないかのハラハラ感は期待できない。
「じゃあ、どうするの?わたしはかくれんぼ、いいと思うよ。他に面白い遊び思いつく人ー」
さくらちゃんがみんなに聞く。
しーん。
誰も発言する人はいない。
「じゃ、かくれんぼで決まりね!じゃんけんで鬼を決めるよ」
さくらちゃんの掛け声でじゃんけんをする。結果、かくれんぼに納得していなさそうな大河が鬼になった。
「俺が鬼かよ。こんなかくれんぼ何が楽しいんだよ」
「大河が鬼ね。きゃあー隠れろー!」
これから始まる遊びに夢中で、誰も大河の話を聞いていない。
「待てって。あーもう。すぐに全員見つけてやる!!」
大河もやる気が出たようだ。
翔太は大河の数字を数える声を背に、隠れる、いや隠れられる場所を探す。公園を見渡すと、滑り台が目に留まった。その、滑り台は滑るところがトンネル状になっている。ここなら見つかりにくいかもしれない。
そう思い、翔太は滑り台に登る。
「あっ」
滑り台の上に女の子がいた。翔太と同い年くらいの、オレンジ色のフード付きのパーカーにジーンズを履いている女の子だ。
女の子がゆっくりとこちらを見た。
「ごめん。人がいるとは思わなくて」
翔太がそう言うと女の子は、フルフルと首を横に振って、「使ってもいいよ」と言った。
「いいの?でも、ぼく今かくれんぼしてるから滑らないよ」
「いいよ。ここなら絶対見つからないから」
「ほんと!ありがとう」
女の子は小さく笑った。
それから、5分たった。翔太は余程隠れるのがうまいのか、全然鬼に見つからない。
「ほらね。全然見つからないでしょ」
女の子はそう言い、のの、と名乗った。
「すごい!全然見つからない。ののちゃんすごい!」
「えへへ。ねえ、全然見つからないからお話しよう」
「でも、お話したら見つかっちゃうよ」
「大丈夫だよ。ね」
翔太は「けど…」と口ごもりるが、ののちゃんの圧に負けお話をすることにした。
それから、10分。翔太は一向に見つからない。見つかる気配すらない。が、翔太はののちゃんとのお話に夢中で気がつかない。それから、20分、30分、40分と時間がたった。
ののちゃんが言う。
「滑り台を降りて、一緒に遊ぼう!」
「え?でも、今はかくれんぼの途中…」
「誰とかくれんぼしてるの?」
ののちゃんが怖い顔で言う。
「え、それは…えっと…」
誰だっけ?確かに誰かとかくれんぼをしていたはずなのに、その“誰か”の顔も名前も思い出せない。
「誰ともかくれんぼ、してないでしょ。ずっと、私とお話してたでしょ」
そうだっけ?なんだか、ののちゃんに言われるとそんな気がしてくる。
「ずっと私と一緒だったよね」
ののちゃんがずいっと、顔を近づけてくる。
「う…ん。た…ぶん、ずっと一緒だった」
翔太は笑って答える。そう、ぼくはずっとののちゃんと一緒だったんだ。誰かとかくれんぼなんてしていなかった。
2人は笑って滑り台を降りる。
「ようこそ、こっちの世界へ」
ののちゃんが何か言った気がしたけど、ぼくには聞こえなかった。
「ねえねえ、この公園にはなんで滑り台がないか知ってる?」
「また始まったよ、さくらの怪談」
「いいじゃん。大河も気になるでしょ」
「そうだけど…結衣はどうなんだ」
「面白いから好きだよ」
「ほらね。結衣はわたしの味方だよ」
「ちぇー」
「それで、なんで滑り台ないかというと、昔この公園の滑り台で事故が起きたからなんだよ。滑り台を降りる時に服のフードが引っかかって、女の子が亡くなったんだって。その滑り台は、滑るところがトンネル状になってて、外からのは見えにくくなってたんだって」
「えーこわーい」
「でも、もうその滑り台はないわけだし大丈夫だろ」
「それがそうでもなくて。出るらしいよ、女の子の幽霊が」
「怖いよー」
「引っ付くなって。だいたいそんな話噓に決まってるだろ」
「そうだよねー。わたしも話は面白いから好きだけど、幽霊とか信じてないもん。だから、大丈夫だよ。結衣」
「そんなこと言われても、怖いものは怖いんです。早くこの公園出よ」
「そんなに押すなって。怖がりだな結衣は」
「じゃあ、これから何する?」
「アイス食べたい!」
「お!いいな」
「じゃあ、いつものコンビニまで競争だ!」
「待ってー!!」
はじめまして。初めての投稿。ワクワクドキドキ?書きました。読んでくれた人ありがとう!!