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気のせいだと思いたい

多少グロい表現があります。注意してください。

 『Z』の殲滅が確認され迎えが来たのは襲撃から五日目のこと。


 村の人たちはもっと手前にキャンプを張り翌日には村に戻ったそうで、この町まで来ることはなかった。

 私たちへの迎えが遅かったのは「念のため」。押し寄せてきた『Z』はあの晩全て屋敷の前におびき寄せて殲滅したのだけど、森の中にまだ『Z』が残っていないか一通り調査が終わるまで待っていたのだそうだ。


 迎えの兵士が到着したのは夕方だったので一晩おいて翌朝馬車で出発、夕方にようやく屋敷が見えてきた。意外と遠いね。

 私は馬車に乗っている間もこっそり魔法の訓練、つまり魔力ぐるぐるアンド発動前キープしていた。もう話をしたりしていても問題なく維持できる。この状態はかなり体に(精神に?)馴染んだようだ。そろそろ実際に身体強化を発動してみたいのだけど、それは夜一人になるまで我慢かな。




 屋敷の前で屋敷に残った人たちが出迎えてくれる。中心にいるのはお父様とお母様。あ、ロッテさんとヴォルフくんも居る。

 ヴォルフくんが手を振りながらこちらに向かってちょこちょこと走り出した。かわいい。私と同じ3才児なんだけどあっちは普通の子供なのだ。私も馬車の窓(というか壁の無い部分)から身を乗り出して手を振る。ヴォルフくんは何か言っているけどまだ聞こえない。その後ろをロッテさんが追いかけている。馬の前に飛び出しそうになったら止めるつもりなのだろう。

 まあ大丈夫そうだけどね。屋敷の前庭は車回しになっていて馬車は芝生の縁をぐるっと回って玄関前に来るようになっているのだけれど、ヴォルフくんは芝生を真っ直ぐ突っ切っている。タイミング的には芝生の真ん中で引き返す事になるだろう。ある意味玄関で待っているよりも安全かもしれない。


 その時、いきなり馬が暴れ始めた。二頭の輓馬が二頭共だ。

 馬車が大きく揺れ、私は宙に投げ出された。


 浮遊感と共に視界がぐるぐる回る。足先から血の気が引いていく。「全身を強く打って死亡」のフレーズが頭を過る。

 こんなところで死ねない! 死なないために夜も寝ずに魔法の訓練をしたんだ。ぶっつけ本番だけど身体強化、発動!!


 ガチンと何かがかみ合った感じがして魔力が変質する。その魔力は高速な魔力循環によって瞬時に全身を駆け巡り、丈夫さを底上げし力を強化する。

 そのまま地面にドスン。ゴロゴロと少し転がって止まった。


 凄い! 衝撃が全然感じられなかった! 何処も痛くない! 成功だ!! 転がった所為か目が少し回っているけど……

 とりあえず体を起こそうとして……ゴテン! と引っ繰り返った。強化の所為で力が強すぎたのだ。慣れるまでまともに動けそうに無い、一旦強化は止めておこう。


 体を起こして馬車の方を見ると……襲われている!!


 一体何処から現れたのか、体長だけなら馬ぐらいもあるクロヒョウのような魔物が何匹もいて馬車を襲っている。大部分は馬に(たか)っていて、残りの三匹がお兄様お姉様やメイドたちを狙っているようだ。

 二人の護衛が必死に守っている。一人がバリア?を張ってお兄様たちを守りもう一人が剣で攻撃している。

 剣は光を纏っていて当たれば凄そうなのだが、魔物のほうも巨体に似合わず俊敏なので中々当たらない。しかも三方から馬車に襲い掛かってくるのだ。さすがに一人では手が回らず何度もバリアに体当たりを許してしまう。

 バリアが不規則に明滅しているけどこれってヤバイよね。

 お父様とお母様がファイアボール?を打っているが、誤射(フレンドリーファイア)を恐れているためか牽制程度にしかなっていない。


 そこに応援の兵が5人駆けつけた。形勢が逆転する。


 あっという間にお兄様たちを狙っていた三匹を切り伏せると馬の肉を貪っていた残りの魔物に攻撃を仕掛ける。


「一頭たりとも逃すな! 逃せば民に被害が出るぞ!」

 お父様がメイドさん達を背後に庇いながら指示を出す。兵士達は魔物を囲むように展開しようとしたが、一匹が間をすり抜けてお父様のほうに走り出した。

 違う! お父様の手前にヴォルフくんとロッテさんがいる! 魔物はそっちに向かっている!!

 殆ど意識することなく身体強化が発動する。この状態ではまともに走れるか分からない、だから横っ飛びで二人の前に突っ込む。間に合えええっ!!


 魔物がヴォルフくんに喰らい付く寸前、目いっぱい伸ばした右腕で割り込めた。魔物はヴォルフ君の代わりに私の右腕をガブリ……痛クナーイ!

 とっさの行動だったけれど結果オーライ。身体強化が噛む力を上回ったのだ。凄いぞ私。ネコ科っぽい顔をした魔物は尖ったキバでガジガジしているが私の柔肌は傷つく気配もない。赤ん坊の頃から魔力を鍛えてきた甲斐があった。

 ただ体重が軽いのは如何ともしがたく(増やす必要もないけど!)体がぶんぶん振り回されてしまう。

 鬱陶しいからとりあえずこいつを引き剥がそう、と左手で大人の顔より大きい魔物の頭を押しのけようとしたとたん……


 グワシャアァッ!!


 え…………?


 魔物の頭が潰れて血だの何だのが飛び散った。被ったのは主に私。うええ、グロい。それからヴォルフくんとロッテさんも被害者だ。私は悪くない、この魔物の頭が脆過ぎるのがいけないのだ!(現実逃避)

 気を取り直して二人に「だいじょうぶ?」と声をかけるのとヴォルフくんが「うわああああああ!!」と悲鳴を上げるのは同時だった。

 恐怖に見開かれた彼の目が私に向けられているのは気のせいだと思いたい。


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