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感想募集中

評価・ブックマーク有難うございます。

 そして翌日の午後。

 厨房には甘い香りが漂っている。

 朝方仕込んでおいた米麹が甘酒になったのだ。この辺はおばちゃんから聞いた通りにやったのだけど、失敗せず上手くいったようだ。注意点は温度管理だけだったしね。


 出来上がった甘酒は確かにやたらと甘かったけどケーキに混ぜ込むには丁度いい。

 コックのハンスさんは昨日に引き続き手伝ってくれている。彼にも味を見てもらい、砂糖や卵の分量を調整して混ぜてみる事になった。


「あむっ、ん、なかなか美味しいわね」

 今日はお姉様も参加だ。今は昨日焼いた基本のパウンドケーキを試食している。

 とはいえ参加したのは試食係としてではなく自分で作るためだ。昨日は先約があって出来なかったけど今日は時間があるので合流したのだ。


 私たちはハンスさんの指導の下材料の配分を変えて試行錯誤しながら変わり種パウンドケーキ作りに勤しんだ。

 何度も試行錯誤出来るのは身体強化で泡立てが苦にならないからこそだよね。前世では途中で腕が辛くなって大変だった記憶がある。こらそこ、根性なし言うな!


 最終的に満足できる甘酒パウンドケーキが完成した。その他予定していなかったけどビータシトロン版も作った。レモネードが好きなお姉様用だ。

 お姉様はと言えば基本形の他にチョコ入りも作っていた。私用だって。


 昨日蓄積したノウハウのお陰で今日はあまり時間がかからなかった。今はおやつに丁度いいくらいの時間だ。


 早速出来上がったパウンドケーキを装備してお兄様の所に突撃。そのまま強引に兄妹3人でのお茶に持ち込んだ。パウンドケーキは少し寝かせてからの方が美味しい? それよりもお兄様に休憩を取らせる方が先決なのです。

 お兄様は上手くリラックスできたみたいで久しぶりに素の笑顔が出ていた。目論見通り甘酒入りを気に入ってもらえて、また作ってほしいと頼まれた。きっちり休憩も取ってくれたし大成功。後でクララお義姉(ねえ)様にもレシピを渡しておこう。

 その後両親にも差し入れた。勿論各種取り混ぜてだ。残った分はメイドのアリスや護衛のボブとトニーにあげた。お姉様もお付きのメイド達に渡したらしい。

ボブが嬉しそうに「有難うっす! 嬉しいっす! 宝物にするっす!」なんて言ってたけどちゃんと食べてね。


 後で皆に感想を聞いてみた。

 意外なことにお母様もお兄様と同じく甘酒入りがお気に召したらしい。お父様とお姉様はビータシトロン推しだ。

 アリスもビータシトロン、トニーは意外にもプレーンが良かったらしい。ボブは勿体なくてまだ食べていないそうだ。だから食べてってば。

 私? もちろんチョコですが何か?




 人差し指に魔力を纏わせ、大胆かつ繊細に魔力を動かしていく。


 昼はお菓子作りだのお茶会にお呼ばれだのチョコの屋台にお出かけだのと色々やっている私だけど夜はいつも同じ、魔法の研究だ。


 目指しているのはもちろん宵闇に紛れるための魔力の運用だ。

 魔力で光を反射出来るのはもう分かっている。でも今必要なのは闇と同化したり背景に紛れ込んだりする方法だ。


 纏わせた魔力をどんどん分厚くしていく。拳の三倍ぐらいにまで厚くしたところで超高速回転。すると……


「来た!!」


 思わず声が出てしまった。

 慌てて周囲の魔力を探るがこっちに来る人はいない。大丈夫だ。

 離れに来るのは(スージーが王都に来ていないから)アリス達3人だけだし普段から夜は控えていなくていいと言ってあるので近くは無人。

 でもあまり大声を出すと警備の人たちが気付いて来てしまう。気を付けないと。


 改めて目の前の人差し指を見る。


 魔力が回っている空間の風景が歪んで、潰れた円筒形が浮かび上がっている。その中心に見える人差し指はとても細い。まるでタンポポの茎のよう。やった!

 苦節21日、研究を始めてから初めての具体的な成果だ。行き詰って頭を掻きむしった日もあったけど、ようやく道筋が見えた。これを突き詰めていけば光学迷彩っぽくなるはず!

 円筒の右から見ても左から見ても指は同じ細さ。後ろから見てもだ。つまりどの方向から見られても大丈夫そうだ。

 残念ながら上から見ると指は普通の太さだった。少し曲がって見えるぐらい。斜め下から見ても同じ。丸みのある方向から見ないといけないのか、それとも魔力の渦の中心だからだろうか。色々調べないと。


 その後、今度は右腕を使って更に実験し色々と分かってきた。

 魔力の回転速度で多少何とかなるものの、ある程度の厚みは必要。具体的には隠すものの三倍くらいはどうしても必要でかなり嵩張る。

 回転の向きは関係ないけど、曲面になっている必要がある。そして内側と外側で上手く回転速度を変えてやると背景の歪み方が比較的自然になり魔力のある部分が視認しづらくなる。


 それらを踏まえて全身に光学迷彩を施してみよう。


 場所は部屋の中央。

 周囲3m以内の物は全て退かした。

 正面には全身鏡。前世のと違って磨いた金属だけど魔導灯に照らし出された私をきれいに映している。


 体の周りにとりあえず薄く魔力を出し、超高速回転させる。

 外側は速く、内側はより速く。どんどん加速させる。

 それと同時に魔力をゆっくりと厚くしていく。

 厚みが2mほどになった所で…

「出来たーーーー!!!」

 鏡に映った左右の風景が引き伸ばされ、中央にいる私は糸のように細くなっていて良く見えない。成功だ! やたっ!!

 ちょっと気が緩んだ瞬間魔力が崩れて解けちゃったけど、確かに光学迷彩が出来るのが実証されたのだ。


 喜びの余韻に浸っていると離れの戸が強くノックされた。

「フレンお嬢様。 警備隊のモーリスです。何かございましたか?」

 おおう、しまった。うっかり大声を出していたよ。


 その場は寝ぼけていたと言って誤魔化し、迷惑をかけてしまったお詫びに後で警備隊にパウンドケーキセットを差し入れた。新作の紅茶パウンドケーキも入った豪華5種類入りだ。

 感想募集中。出来ればチョコを気に入ってほしい。まだチョコ派が私しかいないんだよね……


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