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もしかしてメガネですか

評価・ブックマーク有難うございます。

 大人数で移動したせいか今回は何も起こらず、予定通り王都に到着した。

 王都屋敷には既にお兄様とお姉様が来ていて久しぶりに家族が勢揃いだ。


 そのまま兄妹で西大市場に繰り出した。すぐに予定が埋まってしまう可能性があるので今のうちに出掛けておくのだ。


 道すがら魔法学園の話を聞いた。専らお姉様から。

 お兄様があんまり話してくれないのだ。実はお兄様は最近クラスメートと婚約した。でもその話も詳しくはしてくれない。辛うじて分かったのは第一王子派と王妃派の争いが影を落としていてあまり居心地が良くないらしい、ということだ。

 そういう事だとあまり突っ込むこともできない。

 その分お姉様が沢山話してくれた。お姉様は楽しくやっているみたいなんだけど同じ家なのに何でこうも違うんだろう。

 お兄様になにかしてあげられることはないだろうか。根本解決は無理にしてもせめて家族といる時ぐらいは気持ちよく過ごせるように何か考えよう。


 市場ではもちろんホットチョコレートの店にも立ち寄った。

 三年ぶりだというのにおばちゃんは私の事を覚えていてくれて色々サービスしてもらった。こういうのって嬉しいよね。

 お兄様も甘酒を飲んでほっこりしていた。少なくとも今日は楽しんでいるようだ。

 よかった。

 お姉様? お姉様はホットレモネードを飲んでご機嫌です。3人とも味の好みがバラバラで面白いよね。




 魔力の検査は医学所で行われた。担当はまたもやトゥーリ先生だ。

「魔力の質は前回と同じくA++(但し身体強化に限りEX)、量は今回初めてきちんと測定できましたがS-判定です。10才でこれほどとは素晴らしいですな。こちらが検査証明書です。質問がありましたら何なりと」


 10才検査で測定されるのは魔力の質と量のみ。感知能力とか魔法習熟度とかは検査されない。

 判定は基本的にS、A、B、C、D、Eの6ランク。それぞれが--から++までの5段階に細分化されている。AならA++、A+、A、A-、A--という具合だ。

 その他に特殊なランクとして魔力なしのNDと、それからS++を越えた超人級という意味のEXがある。私は身体強化だけEXだって。これで私も怪力超人の仲間入りだ……って嬉しくない。


 なお、今回の検査は半日で終わった。トゥーリ先生が事前に私の為の検査方法を考えて準備しておいてくれたお陰らしい。

 これは真剣にうれしかった。もし泊まりになっていたらあのトラウマ物の不味い食事を摂らなければならないところだった。正直もう一度アレを完食する自信は無い。ありがとうトゥーリ先生。




「ビータ男爵家長女、クララ・ノ・ビータと申します。よろしくお願いします」


 お兄様の婚約者と会う機会はすぐに訪れた。場所は因縁の王宮。新年パーティーの会場でお相手とその家族に引き合わされたのだ。


 将来の義姉はマリンブルーの髪に釣り目気味の青い目をしたきりっとした感じのお姉さんだ。

 しかし私の目を引いたのはその隣にいる少年だった。(前にもあったなこんな展開)


「弟で長男のユージンです」


 ユージン君は黒髪黒目だった。

 黒髪黒目を見るのはこれで二人目だ。一人目はあのたけ○こをくれたローシュさん。あっちは多分転移者だからこっちもそうなのだろうか。

 ご両親のビータ男爵夫妻を見ると二人ともブルー系の髪。四人家族のなかで一人だけ黒髪だから、拾われて養子になった転移者かもしれない。

 でも何より気になったのは、その何となく気の弱そうな顔にかけている・・・


「それ、もしかしてメガネですか!?」


 大きな丸メガネだ。

 思わず開口一番聞いてしまった。


 なにしろこの世界にはメガネがない。というか前世でイメージするような普通のメガネは存在しないのだ。

 この世界のメガネは伝説のアーティファクトだ。

 見た目は前世の視力矯正具そっくり。でも能力がまるで違う。視力矯正どころか拡大、望遠、さらには暗視機能もあり、魔力感知、危機察知もデフォ。動画撮影機能すらあり、メガネが二つあれば前世のスマホのように通話や写メ、動画配信すら可能という世界観ぶち壊しアイテム。

 そして極めつけが鑑定能力!

 異世界物で『収納』と並んで活躍する機会の多いチート『鑑定』。その能力を持っているのだ。

 色々調べたけどこの世界には魔法にせよ魔導具にせよ鑑定能力を持つ物はこれしかない。正にチートアイテムなのだ。

 もちろん作れる人なんて居ない。そして数も少ない。機能するものは世界にたった8個、何百年も前に古代遺跡から発掘されたものだけだといわれている。現在はその全てが所在不明なんだとか。

 その伝説のアーティファクトが目の前に!


「えと、これはレプリカです。キングワームの抜け殻を使っているので丈夫ですけど、何の能力もないです」


 おおう、残念。

 でも考えてみればこんな場所に貴重なアーティファクトを持ち込むはずもないか。


 その後、両親に無作法を叱られた後、少し立ち話した。

 ビータ家は当然の如く王妃派でその領地はエーコ領から見て王都を挟んで反対側、西に馬車で10日ほど行ったところで海の少し手前だそうだ。昔食べて酷い目にあったあの酸っぱいビータシトロンの原産地なんだって。

 でも3年前のパーティーでは会わなかったよね。もし会っていたらビータシトロンのビータ家、しかも黒髪黒目がいるのだから絶対に忘れないはず。

 そう思って聞いたら3年前もユージン君を含めここにいる全員が参加していたそうだ。あの時は人数が多かったのでたまたま挨拶できなかっただけらしい。というか私達子供には必要最低限の相手にしか引き合わせなかったらしい。

 でも向こうは私の事をよく覚えていて、改めて助けたことを感謝された。なんか照れる。


 あまり長くは話せなかった。挨拶すべき相手はまだまだ多いのだ。

 後日改めて席を設ける事を約束してその場は別れた。


 その後新年パーティーは何事もなく終わった。

 『Z』は降ってこなかったしパニックも起こらなかった。

 王太子はやっぱり婚約者を疎ましく思っているようだったし婚約者の方も相変わらず空回りしていた。

 初めて王宮のチョコケーキを食べることもできた。ザッハトルテのような見た目の小さなチョコケーキ。濃厚なチョコクリームをスポンジで挟み、周りをどっしりとチョコでコーティングした正にチョコケーキ。

 でもちょっと感動は薄い。既にチョコレートを何度も食べているし、たけ○こと比べると濃厚を通り越してくど過ぎる。

 ああ、またたけ○こが食べたい。

 前にユーミ様から貰った分はずいぶん前に食べつくしてしまった。商人に頼んだのだけど非売品らしく入手できなかったのだ。

 もし私の名前を出せば入手できたのかもしれないけど、それは禁止されているのだ。王妃派の貴族としては第一王子派の土地の特産品を求めてはいけないらしい。

 今日だってチョコケーキが気に入っているように見えてはいけない、それどころかもしユーミ様や他のクロッジー男爵家の者と挨拶することになってもチョコレートのチの字も出してはいけないと釘を刺されている。

 派閥争い嫌い。


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