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8才になった

評価・ブックマーク有難うございます。

 スージーたちの結婚式に先立って誕生日が来て、私は8才になった。

 とは言っても生活はあまり変わらない。

 本来8才から魔法を習い始めるものなのだけどずっと前からもう始めているし。

 唯一増えたのが剣術の稽古。

 貴族は男も女も『Z』と戦う術を身につけなければならないとされている。剣術はその術の一つだ。

 放出系の攻撃魔法を使えない場合がある。接近され乱戦になったとき等だ。そういう時は光剣魔法という光の剣を出す魔法を使い、斬って動きを止める必要があるらしい。その為に学ぶのだ。

 斬ったら『Z』は増えるんじゃないの? とも思うが倒れたところで下向きに放出系を使うとか相手が動きを止めて回復している間に戦列を組みなおすとか斬るべき局面は結構あるそうだ。

 なんと魔法学園でも剣術は必修科目なんだって。意外。


 それにしても光剣魔法か。「魔術大全」によると魔力体と放出系の複合。きっとこの前ハンターその1が出した光る剣がそれなんだろうな。

 複合魔法は難しいらしく私はまだ習っていないしお兄様やお姉様も習得していない。

 その魔法を使えるということは魔法学園の卒業生か、そうでなくてもきちんと戦闘訓練を受けている可能性が高い。やっぱり真っ向勝負に行かなくて良かった。


 で、稽古なんだけど、教えてくれるのは領兵も指導しているフランツ教官。お兄様とお姉様が見てもらっていたところに私が混ざる格好だ。

 練習で使うのは光剣魔法ではなく木剣。

 お兄様とお姉様は素振りの後教官相手に打ち込む訓練をしたり二人で打ち合ったりしている。

 二人での練習は立ち合いというより攻撃と防御を交互に行っているようだ。防御とカウンターの練習っぽい。

 お姉様が右に左にダイナミックに動きまわりながら木剣で打ちかかる。一方のお兄様は少ない動きで受け止め、いなし、カウンターを入れたりしている。もちろん寸止めだけど、万一当たったとしても二人とも身体強化の第一段階――剛体という名前だそうだ――を発動しているためたいしたことにはならないはずだ。

 その後攻守を入れ替え、お兄様が緩急をつけた動きで打ちかかり、お姉様が防いで反撃する。

 お姉様の方が剣術の訓練に熱心だ。もちろん今はまだ一年余計に訓練しているお兄様の方が上手いのだけど、もしかすると近いうちに逆転するかもしれない。


 その横で私は最初から最後までひたすら素振りしている。

 始めたばかりだからしょうがないか、と思っていたけどどうやら将来的にも人相手の稽古はさせてもらえないらしい。身体強化の暴発が危険だからだって。がっくり。


 ちなみに剣術を始めるのが8才から、というのは魔術を8才から習うのと関係があるらしい。

 普通に木剣を振っていると剣ダコができ掌がカチカチになる。でも剛体を発動しているとそれを防げるらしい。だから剛体が出来るようになってから剣術を始めるのが貴族の嗜みなんだとか。

 私なんか前世の感覚で硬くなった掌をかっこいいと思ってしまうんだけど、ここでは剛体が不完全な証とされ貴族としては恥ずかしいものなのだそうだ。

 うちでは魔術こそ前倒しで始めたけど、剣術は全員仕来りどおり8才から始めている。つまりお兄様は4年前、お姉様は3年前から始めている。

 お兄様は一年後には魔法学園に入るので訓練も仕上げに入っているはずだけど、お姉様はそれに平気で付いていっている。やっぱり才能があるのかもしれない。


 魔法の授業はアンリ先生とマンツーマン。王都のシャルル先生と違っていっぱい褒めてくれるのがうれしい。

 おかげで魔法制御もかなり上達した。私は褒められて伸びるタイプなのだ。

 身体強化の暴発はまだ止まらないけど、きっといつかできるはず。


 時間を見つけて「魔術大全」に載っている時空魔法も調べたんだけど、これは期待外れだった。

 落とし穴とか引力・斥力なんていう地味なのばかり。収納魔法や転移魔法は無いみたいだ。

 落とし穴は床や地面を傷つけずに一時的な穴を作る魔法で、それだけ見ると収納に転用できそうな気もする。だけど穴を閉じると中のものが吐き出されてしまうのだ。かと言って長時間開けっぱなしにしておくと一秒当たりの必要魔力がどんどん上がって行くらしい。どう考えても収納には不向きだ。

 時間を巻き戻す魔法もあるにはある。でもこちらも回復魔法の代わりとしては使い物にならない。燃費が悪過ぎるのだ。人一人を数分巻き戻すだけでも標準的な魔術師数十人分の魔力が必要で、しかも巻き戻す時間を伸ばすとこちらも必要魔力が天上知らずに上がっていくらしい。

 人を巻き戻しても記憶は消せないっていうのはいいとして相手の魔力は回復しないらしいし死者蘇生に使っても肉体は治るけど魂が戻らないとか色々残念過ぎる。しかも「大全」には詳細な発動方法ではなくざっくりとした魔力操作の流れだけしか記されていないので試してみること出来ない。もしかしてこれって禁呪?


 そういえば魔導具士兼お医者さんのニコラス先生が引退することになった。もういい年だったんだけど、暑さで体調を崩して決意したそうだ。引退後はどこに住むの? と聞いたら身寄りがないのでそのまま使用人の寮に住み続けていいことになったのだそう。だから会いたければ会えるのだ。ニコラス先生は優しくて好きなのでこれは嬉しい。

 なお、仕事はアンリ先生が引継ぐんだって。


 クマたちとの関係は進展なし。

 クマ姐さんは未だに子熊ちゃんたちをモフらせるどころか近づくのも許してくれない。

 逆にクマ父さん(仮)はめげずにグイグイ来る。もうクマ父さんって感じじゃないよね。これからはクマオと呼ぶことにしよう。

 で、迫られる度に投げ飛ばしているんだけど全く堪えていないようだ。クマ姐さんなら気絶するレベルでやっているのにスキンシップと思っている節さえある。ハンター達との戦いの後二日経って見に行ったときにはもうピンピンしていたし本当にタフだ。

 クマオは近くを通りかかる度にものすごい勢いで走ってくる。なんで私が来たって分かるんだろう。魔力は漏れていないはずだし臭いも魔力で遮断したはずなのに。

「ガウゥガウゥ!(音で分かるぜ!)」

 それって何の音?

「ウゥゥ…(よく分かんねえ)」

 残念ながら私のクマ語スキルでは詳しいことは聞き出せなかった。木の上を移動するときの音だろうか。結構ガサガサと音が出るからね。音が出ないように移動出来ないか今度試してみよう。

 それにしても毎度追いかけられるのはちょっと困る。この前読んだ本にはブレイズベアの発情期は初夏から晩夏の初めぐらいまでと書いてあったのでその間は近づかない方がいいかもしれない。私は人間がいいのです。


 クマオを狙っていたハンターはあれから見ていない。魔力感知全開で警戒しているけど全然引っ掛からない。普段は昼間だけ活動しているのかな。あの晩以前にも見たことなかったし。


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