東大市場にも何度か行ってみた
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その後、ローシュさんに会えるかもと思って何度か西大市場に足を運んだけど全て空振りだった。
いえ、ホットチョコレートは毎回購入しましたが。
貴族名鑑でクロッジー家の事も調べてみた。
この国の世襲貴族は領地を所有しているのが基本なのだけどクロッジー家は違う。かつて存在したクロッジー男爵領は遠い昔に石樹の森に飲み込まれて失われてしまったのだそうだ。
領地が無ければ税収が得られず兵役その他の王国貴族の義務が果たせない。ではどうやって貴族家として存在しているかというとヘルツァーエ公爵家と寄親・寄子関係を結ぶ事で生き残っているのだ。寄親たる公爵家から食邑というか知行地というかそういった物を与えられ、そこからの収入で貴族の義務を果たしているのだ。
屋敷はフーゼン市のみで王都には持たず、その代わりヘルツァーエ家の王都屋敷に部屋を与えられているらしい。
我がエーコ家は幸い自立した領主なのでそういう相手はいないのだけど、どこかの寄子になっている下位遺族はそれなりに居て大貴族の事実上の家臣になっているのだそうだ。
それはともかく第一王子派の、しかも公爵家の屋敷を訪ねるのはさすがに無理。屋敷がある坊は大貴族用の区画なのでちゃんとした理由がないと入ることさえできない。
上位貴族のお茶会にでも招待されればあるいは……と思ったけど一切開かれていないらしい。聞けば昼は大人の貴族全員が王宮に詰めているので開催できないのだそうだ。晩はというと派閥内での集まりはあるが子供は参加できないから意味が無い。
やはり市場でばったり作戦しかなさそうだ。
東大市場にも何度か行ってみた。こちら側には複数の劇場があり、そのお陰で貴族はよく東に行くのだそうだ。(なお大道芸を見たかったら西だ。ナイフのジャグリングとか林立する杭の上での演舞とか色々見られる)
私が初めて東大市場に行った日もいくつか芝居が掛かっていた。そしてなんと一箇所映画(!)を上映していたのでつい観賞してしまった。
前世基準で考えれば小さめの映画館。横長のベンチが階段状にぎっしりと設えられていたが沢山の人でかなり埋まっていた。
座席指定も何もないので私とスージーは適当な空いている場所に座った。私がなにか壊さないかとスージーがハラハラしているのが分かるけど御免なさい、見てみたいのだ。被害を出さないように頑張るから許して。
周りを見回すと老人から子供まで年齢層は幅広い。服装も平民の物ばかりだし庶民の娯楽なんだろう。
身なりのいい私たちの周りには微妙にスペースが出来ている。貴族とトラブルになりたくないからだろうけど私も怪我させたくないから都合がいい。
映画は何と立体映像だった。メガネがなくても3Dに見える分前世のより進んでいる。中世は何処へ…… ストーリーは身分違いの恋がテーマの悲恋物で歌あり踊りありのオペラ、とれともミュージカルだろうか、兎に角その舞台を撮影したものだった。画像処理どころかズームも無し。固定カメラで淡々と収録したものをそのまま再生しているようだ。劇自体は結構面白かったけど折角なら生で見た方がいいだろう。
なるほど客層が庶民ばかりな理由はそれか。本物のオペラが見られない人が映画館に来ているのだ。
観客の雰囲気はかなりリラックスした感じだ。登場人物に声援を送ったりブーイングを飛ばしたりしているし、大合唱のシーンで一緒に歌ったりもする。
悪ガキが映像を下から覗き込んで「スカートの中が見えねー」なんて言って親に殴られていたりもした。
ラスト近く、ヒーローがヒロインを残して死んじゃうところではすすり泣きどころか泣き叫ぶ人多数。みんな感情移入が凄かった。私もつられて叫んじゃいました。
なお、最後に確認したけど何も壊すことなく観賞を終えることが出来ていた。やったね!
別の日にはお兄様お姉様と一緒に芝居を見た。
オペラはしばらくお休みとの事で見たのは平民も見に行く大衆的な芝居小屋。大衆的と言っても貴族用の席もあったのでそこそこお高いのかもしれない。出し物はミュージカルにアクロバットを加えたような活劇寄りの喜劇だ。子供達が知恵と勇気とチームワークで悪い大人をやっつける、言ってしまえば唯それだけなのだけどとっても面白かった。特に悪役。とんでもなくアクロバティックなのに徹頭徹尾コミカルでしかもちゃんと悪そうなのだ。こんなの前世でも見た事が無い。
あまりに面白かったので貴族席にローシュさん達がいるかどうか確認するのを忘れてしまったけど無理はないのだ。
ついでに少し椅子が歪んでしまったけど家から持ってきた椅子なので問題なし!
最終的に東大市場では何人かの貴族の子に会えたけど結局ローシュさんにもユーミ様にも会えなかった。残念。