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調査は徹底的に行われたらしい

評価・ブックマーク有難うございます。

 晩は皆で王宮にお泊りだ! ……というと何か特別なイベントっぽいが何のことは無い。パーティー参加者全員が禁足を食らって誰も帰れないのだ。怪我人も医学所で缶詰らしい。

 今は『Z』襲撃事件に関する取調べが行われているのだ。


 昔隣町の町長さんのお屋敷に泊めてもらった時の様にミリアお姉様が同室になった。

 私としては一人部屋のほうが色々気が楽だったのだけど、お姉さまが同じ部屋に拘ったためにこうなったのだ。


 部屋で二人きりになってから直ぐ、お姉様に以前「怖い」と言った事を謝られた。自分の所為で私が引篭もったと気に病んでいたらしい。一年も前のことなのに。私もすっかり忘れていたことなのに。

 ずっと謝りたかったのだそうだけど、私の「話しかけるなオーラ」の所為で話しかけられなかったらしい。

「お姉様は全然悪くありません。逃げたフレンが悪いのです」

「でもフレンちゃんは妹なのに。私が守らなくちゃいけないのに」

「そう思ってくれるだけで十分ですから。どうか泣かないでください」

「だって、だって……」

「危ないので離れてください」

 なんて言葉だけ取ると私がお姉様を宥めているみたいだけど、実は私も大泣きしているのだった。というかさっきから気が付くと身体強化が暴発していてヤバイ。ヤバイので身動ぎひとつ出来ず辛い。辛いのだけど……

 泣いているうちに体の底に澱のように溜まっていた恐怖が薄れていくような、そんな気がした。




 調査は徹底的に行われたらしい。

 指揮を執ったのは刑部尚書、つまり国直属の捜査機関の長であるヤーマー伯爵。お父様によれば王妃派でも第一王子派でもない中立派で、この件に関しては相当な権限を与えられたそうだ。そしていくつもの貴族の屋敷に踏み込んで強制捜査を行うという、平常時には考えられないような大捜査を断行したらしい。

 私も直々に事情聴取されたけど中々切れそうな感じの壮年のおじ様だった。


 私達は三日に渡って王宮に留め置かれた。

 その間、客室棟から出ることは基本的に許されなかった。それどころか部屋を出る際には刑部所属の役人が複数付いてきた。他家との接触に立ち会う必要があるためだそうな。

 外部とのやり取りは手紙だけ。書く時は刑部の役人が口述筆記する決まりで、お父様が王都屋敷の家令宛に手紙を出したのだけど自分で書いたのはサインだけだったそうだ。その上内容についても質問されたり文面変更を求められたりした上複写紙(!)で写しまで取られたらしい。手紙を受け取る際も役人立会いの下開封しなければならない等の決まりがあるのでどうしても必要なとき以外は手紙をよこすなと書き送ったとか。さもありなん。

 着替え等は屋敷から届けられたのだけど、それすら徹底的に検査されたらしい。

 非常に徹底している。

 貴族が『Z』を王宮に持ち込む、と言うのはそれ自体大事件なのだけど背後にもっと大規模な陰謀なりなんなりがあるのではないかと危惧したのだろう。


 そんな中、私は両親やお兄様を訪ねて話をした。

 役人の都合であまり長い時間はとれなかったけど、逃げ隠れして引篭もっていたことを謝り、怖がられるのが怖かったと正直に気持ちを話した。

 お母様は何も言わずに抱きしめてくれた。お父様は「そんな心配しなくていい」と言ってくれ、お兄様には「バカだなあ」と笑われたので少しだけ気が楽になった。


 丞相のカイケー伯爵にも一度会った。私が助けた女性が奥さんで、そのお礼を言いたかったのだそうだ。『Z』に掴まるとまず魔力を吸いつくされ次に体を取り込まれてしまうのだそうで、私が助けたのは本当にギリギリのタイミングだったらしい。本人は医学所に入院中でまだ動けないとか。

 お礼を言ってもらったのはいいのだけど、会ったのは偶然を装って廊下でだった。どちらの部屋に行くのも差し障りがあるとの事でわざわざそうしたのだ。なんというか貴族の関係って面倒くさい。

 後で聞いたのだけど、カイケー家はなんと私との縁談を打診してきたのだそうだ。無論お父様は即座に断ったらしい。相手ってもしかしてあのオーレイ様? シャドウクーガーオタクの。さすがにあのオタクっぷりにはついていけないから残念でもなんでもないんだけど、おひとり様宣告されたのを思い出してちょっと悲しくなった。


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