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私の女子力(物理)が貴族中に知れ渡ってしまった

評価・ブックマーク有難うございます。

 その後調子よくサクサク『Z』を潰していったのだけど、残り半分ぐらいになっところで急に『Z』の行動が変わった。

 体の一部――腕やら頭やら――を引き千切って投げ始めたのだ。

 あちこちに散らばった『Z』のカケラは床材を材料に体を再構成し始めている。おおう、このままだとホールが『Z』で溢れてしまう。どうしよう。


「破片から再生するにはある程度時間がかかる! まず親個体を確実に減らしてくれ!」

 まごまごしていたら近衛騎士の隊長さんらしい人が指示してくれた。言われた通り親『Z』に突撃する。

「第2班! ホールを回って破片の回収! 中央に集めろ! 第3班! 集まった破片を再生限界以下にまで切り刻め! 残りの者は護衛を継続! 『Z』を押し留めろ!」

「「「応!!」」」

「皆さん! 近くに『Z』の破片があったらホール中央に投げ入れるか騎士に声をかけてください! 特に出入口付近の方! 万が一にも破片が外に出ると大変です。注意して周囲を観察してください!」

 隊長さんが近衛騎士やホールに取り残された人たちに指示を飛ばし、ここにきてようやく騎士さん達が積極的に動き始めた。残された人たちもかなりの人数が破片集めに協力しているようだ。


 私はもう何も考えずに走り回って片端から『Z』を潰していった。




「もう『Z』は残っていませんかー!」

「隅々まで探すのだ! 欠片一つでも残っていると復活してくるぞ!」

「こっちには無いぞー!」

「こちらも大丈夫です!」

「確認完了しました! 会場内の『Z』は撲滅されました!!」

『わああああ!!』

 近衛騎士や有志の皆さんと一緒に最後の一欠片まで探し出し、完全に潰しきった。

 特に近衛騎士の皆さんは徹底していた。バリケードを丁寧に解体して入り込んでいないかどうか調べ、さらに引っ繰り返ったテーブルのクロスの下、転がっている花瓶の中、タペストリーの裏からこぼれた料理の中まで徹底的に調べていったのだ。ホールにいた人たちは私を含め全員謎の魔導具でボディーチェックされた。聞けば逃げ出した人たちも全員チェックしたらしい。

 『Z』が落ちてきた天井裏ももちろん確認したそうだ。いつの間にか騎士の人数も大勢増えていた。援軍が来てたようだ。


「ご助力有難うございます。助かりました」

 最前から指示を飛ばしていた近衛騎士の隊長さんにお礼を言われた。大柄で背筋の伸びたいかにも騎士!という感じの人だ。それは良いのだけど初めて近衛騎士の兜を間近で見てある事に気付いてしまった。

 なんと透明な素材で出来たフェイスガードがついていたのだ。遠目には顔がむき出しに見えたんだけど、そういうことだったのか。

 あるじゃんガラスのような物。これで何で透明な窓がないんだ。


「小官は近衛騎士団王宮警護四番隊副長、レンヤ十士長であります。お名前を伺っても宜しいですか……あ、ええっと、如何なさいましたか?」

「あ、いえ、何でもないです! エーコ子爵家次女、フレンと申します。対処方法を指示していただき有難うございました。何とかなって良かったです」

 思わずフェイスガードをジッと見つめてしまったのだけど、睨んでいるように見えてしまったかもしれない。失敗失敗。


 なお、後で聞いたところでは透明なバイザーの素材は虫系魔物の抜け殻で、非常に丈夫だけど希少なので「それを窓に使うなんて勿体ない」のだそうだ。


 閉じられていた大扉も近衛騎士の手で外から開かれた。

 『Z』が出たのはホール内だけで、『Z』を外に出さないよう閉めていたらしい。下手に空間があるとあっという間に増えて広がる可能性があるので閉じ込められるときは可能な限り閉じ込めるべきなのだそうだ。

 やつら体の一部を投げてきて、そこからまた『Z』が生えてくるからね。

 しかし閉める判断をした人は異様に判断力と決断力が高いよね。大勢の貴族ごと閉じ込めるなんて普通は躊躇するよ。それとも普段からこういう場合を想定した訓練をしているんだろうか。


 とにかく大扉が開き、怪我の重い人から順に運び出されていく。ここまで来ると皆落ち着いていて秩序だった行動をしている。


「ありがとうお嬢さん」

「もう駄目かと思ったよ」

「死者も出なかったし君のお陰だ」

 おおぅ、皆口々に感謝の言葉をくれる。なんか照れる。

「大したことはしていません。出来ることをしただけです」

 思わず日本人的に(へりくだ)ってしまった。

「謙遜することは無い。君は小さいが立派なゆう…しゃ……」 


 あれ? 皆急に目を剥いて静かになったけど、何かあったの?


「フレンちゃん、テーブル! テーブル!」


 お姉様の声にえ? と思って手元を見るとハエタタキに使ったテーブルが酷く(たわ)んでいた。恥ずかしくて身を(よじ)った拍子にちょっと(ねじ)ってしまったらしい。


 バキイッ!


 あ、割れた……結構丈夫そうだったんだけど、使いすぎて傷んでたのかな……ははは……


 こうして『Z』の襲撃は終息した。怪我人は多かったものの奇跡的に死者を出すことなく凌ぎきった。

 しかしその対価として私の女子力(物理)が貴族中に知れ渡ってしまったのだった。


 なお、魔封じが解かれたのは全て方が付いた後しばらく経ってからだった。遅いよ!


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