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完璧な乙女ゲーだ(偏見)

評価・ブックマーク有難うございます。

 季節が変わり、今は冬。

 王都はエーコ領に比べて暖かい日が多いものの寒い日は寒い。

 そして今日は一段と寒い。雪が少し積もっているのだけど、風が吹くとサラサラの雪がふわっと舞い上がるほどだ。朝外を見ようと窓を開けたらその雪が風と共に舞い込んできてかなり寒かった。思わず身体強化と魔力纏いを発動しちゃったよ。求む窓ガラス。

 私は真新しいドレスの上から毛皮のコートを着てモコモコ、更に手袋に帽子と完全防備の恰好だ。

 最近王都に来たお母様とお兄様お姉様も私と同じようにモコモコの格好をしている。

 今日は家族で王宮へ行くのだ。今は玄関ホールでお父様を待っているところだ。

 久しぶりに顔を合わせた家族だけど、挨拶を交わした後どう対応したらいいのか分からない。向こうからも話しかけてこない。ぎこちない空気が流れる。

 そこに外から戻ってきたお父様が合流し、皆で馬車に乗り込んで王宮へと出発した。


 今日は第一王子の立太子記念兼第二王子誕生記念パーティーだ。両方ひとまとめにしてやるらしい。

 立太子式自体は各家当主の立会いの元午前中に終わり、私達はパーティーにのみ参加することになっている。


 結局魔法関連には進歩がなく未だ暴発の危険をはらんだ爆弾娘の私。出来ればパスしたかったんだけど、パーティーには第一王子派と王妃派の手打ち式のような側面があるらしくサボりは許されなかった。


 礼儀作法その他は詰め込めるだけ詰め込んだ。だけどダンスは踊っちゃいけないし、色々やっちゃいそうだから最低限のあいさつ回りが終わったら料理を食べるマシーンと化す予定。

 いいの、子供だから沢山食べても。それにしてもどんな食べ物が出るんだろう。それだけが楽しみだ。




 パーティー会場のとても広かった。柱が一本もない巨大なホールだ。サッカー場が何面か取れるんじゃないだろうか。そして天井も無暗に高い。

 そしてその広大な空間はエアコン?が効いていてとても暖かかった。中世ェ……

  なお、このエアコンっぽいのに限らず王都の魔導具を動かすエネルギーは基本的に天然の魔力だ。

 魔力は普通生き物の体内で魔素から作られる。人工的に魔力を生み出す方法は見つかっていないのだけど世界のあちこちに魔力が湧きだす場所、所謂ホットスポットがあり、そこで集められた魔力は魔導具の動力源として利用されている。

 王都に関して言えば実は王宮の真下に超特大のホットスポットがあり王都の魔力需要は王宮からの供給で賄われているのだ。

 エアコン魔導具は我が家にもあるけど灯り等とは異なり魔力消費が馬鹿にならない。そのため普段は限られた部屋で必要な時間帯にしか使われない。

 魔力は無限ではない。供給量が限られているのだ。だというのにこんな広大な空間を暖めるなんて。さすが供給元、魔力が潤沢だ。

 まだ昼間という事で明かりはシャンデリアではなく外部からの採光で賄っているみたい。どういう仕組みなのか会場の隅々まで明かりが届いている。

 今日の主戦場、料理のテーブルは会場の端、入り口付近にかなりの幅をとって存在している。ビュッフェスタイルで給仕さんが一々よそってくれるみたい。鉄板も出ているんだけどその場で調理でもするのかな? 食器は皿から何から皆ぴかぴかの銀色なんだけど、もしかして鉄とか錫とかじゃなくて本物の銀!? うわあ、贅沢。


 バンドというよりオーケストラと呼んだほうが良さそうな規模の楽団が静かな音楽を奏でる中、私達家族は入場した。

 入場は身分の低い順だそうだ。私達は下から2番目の子爵家。なので既に大勢の男爵家の皆さんが会場入りしている。何百人もいるはずなんだけどまるで混雑した感じはしない。むしろスカスカだ。

 何家族かは私達が入って来たのに気付くとこちらに寄ってきて挨拶と世間話を始めた。

 微妙なのは私が紹介されると判で押したように「ああ、あの……」とか「この子が例の……」とかいう反応が返ってくることだ。一体どんな情報が流れているのだろう。


 それはともかく伯爵、侯爵、公爵まで入場が終わった。会場はすかすかのままだ。なんでこんなに広い会場を使うんだろう。謎だ。

 突然シンバルがジャーンジャーンジャーンと鳴らさる。

「国王陛下、ご入場!」

 全員一斉に頭を下げる。

 間を置かず王様が入ってきたようだ。ん? 一人じゃない。多分王妃様と、あと三人。一人は赤ちゃんかな。

 上目遣いでこっそり様子を窺うと……

 うわあ、王様顔色悪い。遠目からでも病み上がりなのがはっきり分かる。豪奢なマントを重そうに引きずってるよ。隣の小柄な女性が王妃様か。赤ちゃんを抱いているけどその子が第二王子なのだろう。産後間もないはずだけど大丈夫なんだろうか。後ろにいる金髪の美少年が王太子ニヴァン殿下か。その隣にいる薄紫の髪の美少女はだれだろう。王女はいないはず。ニヴァン殿下と同じ年頃だしもしかして婚約者!?


 王族たちは広い広いホールを横切って一番奥の一段高くなっている席に着く。

 それと同時に王様の巨大なバストアップ映像が3Dで空中に投影された。中世! この中に中世はいらっしゃいませんか!?


 王様が「王太子が決まり、第二王子も無事生まれて非常に目出度い。皆で力を合わせて王国を盛り立てようではないか」みたいなことを小難しい言い回しで言う。勿論声は肉声ではなく映像から聞こえてくる。魔導具でやっているんだろうけどこんなの見たことない、すごい。


 ともかく王様が開会を宣言しパーティーが本格的に始まった。


 私達もあちこち移動して挨拶して回る。

 そして会う人会う人私のことを知っていた。解せぬ。


 そうして移動するうち偶々王族の近くまでやって来た。うちは王家の方々と直接声を交わすほどの家ではないがこっそり眺める分には問題ないはず。折角なので観察させてもらおう。


 王様はげっそりやつれていて顔色も悪い。夏に大病を患ったそうだけどまだ本復には程遠いようだ。この人だけは椅子に座っているのだけど、ひっきりなしに人が訪れている。体調は大丈夫なんだろうか?

 王妃様と第二王子は開始早々退席していた。これは仕方ないよね。産後21日間は出来るだけ安静にする必要があるはずだけど、まだ10日目くらいのはずだもの。むしろ何故出席させた。

 王太子殿下は金髪碧眼の整った顔立ち。意志の強そうな眼差しと引き締まった口元。絵に書いたような王子様っぷりで将来は相当なイケメンになること間違いなしの逸材だ。

 婚約者さんのほうはなんと青と金のオッドアイ。少しきつめの顔立ちだけどこちらも相当な美少女になりそうだ。一生懸命王太子殿下に話しかけているけど、殿下の方は気の無いそぶりで生返事ばかりしているみたい。ちょっと可哀想。


 その様子を見ているうちにピーンと来た。

 これって乙女ゲーのキャラじゃね?


 あのゲームだ! なんてタイトルは思い浮かばないけど王太子殿下は「王太子の幼少時代(乙女ゲー用)」って絵師に発注したかのようなビジュアルだし魔力の色は鮮やかな紅で内に秘めた情熱を表しているかのよう。一方の婚約者さんはドレスが豪華だし性格きつそうだし魔力はと言えば「今にも雨が降り出しそうな雲」の色。見たこともない暗さだ。きっと将来闇落ちして立派?な悪役令嬢になること間違いなし。(決め付け)

 何より二人の関係が物語っている。婚約者に愛を感じていない王太子と王太子の愛を求める婚約者なんて定番中の定番。きっと王太子は魔法学園でヒロインと出会い真実の愛に目覚めるのだ。そして婚約者はヒロインの悪口を言い私物を隠し制服を切り裂き階段から突き落として最終的に卒業パーティーで断罪されるのだ。

 完璧な乙女ゲーだ。(偏見)

 ここは乙女ゲーの世界だったのだ!(確信)

 正直に言えば私は乙女ゲーは殆どやったことはない。しかし小説投稿サイトの悪役令嬢物を数多読み込んだ私に死角は無い!!

 問題はゲーム攻略用の知識が無いことだけど、私は悪役令嬢ポジじゃないしましてやヒロインってこともないだろう、怪力だし。だから常識的に振舞っていれば酷いことにはならないはず……取り巻きにさえならなければ。念のため王太子と悪役令嬢には近づかないようにしよう。


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― 新着の感想 ―
[一言]  他の作品との差別化なのか家族に恐れられたり、自分の魔法の封印とか。。。 誰特なのか雰囲気が暗い。。。
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