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もっと魔法を学ぶ

評価・ブックマーク有難うございます。

「フレン君、呪文を詠唱する理由を3つ述べなさい」

「えっと……一つ目は声に出した呪文を自分の耳で聞くことで魔力操作を間違いなく行うため。二つ目は複数人で魔法を発動するとき他の魔術師と同調するため。三つ目はええっと……」

「周囲の人にこれから発動する魔法を周知するため、です。もちろん魔法は詠唱無しでも発動できますが、だからといって呪文を覚えなくていい訳ではないのです。分かりますね」

「ハイ……」

「よろしい。では前回のテストを振り返ってみましょう。なかなかに酷いですね。低級呪文の30個ぐらいは直ぐ暗記できなくては。これでは先が思いやられます。

 明日までに間違えた呪文を30回ずつ書き取りしておくように。もう一度テストしますからね」

「ハイ……」

「では今日の授業を始めましょう。まずはもう一度呪文に使われる基本的な文言とそれに対応させる魔力操作をおさらいします。ここがあやふやだと詠唱が意味を成しませんからね。

 ではまず『小光球』の呪文を暗唱しなさい、魔力操作は抜きで」

「『白き灯よ 根源より出でて 我が眼前を照らせ』」

「ここで『灯』に対応する魔力操作は何ですか?」

「ええっと……」


 至った結論は至ってシンプルだった。

 「もっと魔法を学ぶ」

 それ以外に無いでしょ。通常の魔法や魔力について理解する。そうすれば何か見えてくるものがあるはず。たぶん、きっと。

 貴族は基本13才の秋から3年間魔法学園に通うらしい。それまでになんとかすればいいのだ。そうすればごく普通の学園生活を送れるはず。

 まだ6年近くもあるのだ。腰をすえて、じっくりしっかり学んでいこう……と決意したのだけど、先生が厳しい。


 王都での魔法の先生はアンリ先生じゃなくシャルルというまだ若い男の先生だ。そしてアンリ先生より大分厳しいのだ。

 アンリ先生は王都には来ない。元々アンリ先生は高齢なニコラス先生の後任として雇われている(アンリ先生も若くは無いんだけど)ので領地の屋敷を離れることは基本ないんだそうだ。

 私には褒めて伸ばすアンリ先生のほうが合っているのに……


 今は厨二病的な呪文を現在進行形で大量に詰め込まれているところだ。なかなかに辛い。

 呪文が(ちょっと古めかしいとはいえ)共通語で意味が取れるのだけが救いだ。

 もし「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう……」みたいな意味の分からないのを覚えろと言われていたらきっと挫けてしまっていただろう。

 ちなみにテキストは「王国式呪文全書」という本だ。そこそこ厚みがあるんだけど全部覚えろ、とか言われないよね。


 シャルル先生に魔法を習う一方、貴族としての授業ががっつり入るようになった。具体的には読み書きや礼儀作法、社会の仕組みその他諸々だ。はっきり言って朝から晩まで勉強尽くしだ。

 何故そんなに勉強しなければならないのか。

 立太子記念パーティーに私も招待されているからだ。

 この国では通常そういうのは10才からが普通なんでそのつもりで教育スケジュールも組んであったんだけど、今回は立太子される第一王子がまだ8才(もうすぐ9才)なので私を含む下の年代も招待される事になってしまった。だから急いで色々詰め込む必要があるのだ。

 パーティーなんてハッキリ言って迷惑だ。詰め込まれる方の身にもなってほしい。パーティーを乗り切るのに必要ない算術などはざっくりカットしているそうだけど、それでも大変な分量だ。え? パーティー用にドレスを作ってもらっただろ? それはそれ、これはこれです。

 講師はまたしてもスージー。本人も大分詰め込まれているようだけど、うちって意外とブラック? 尋ねてみても「ちゃんと寝てますから大丈夫です」としか言わないけど。


 ダンスも習った。

 パートナーを怪我させるとマズいから当日は踊るな! と言われているが、一応練習させられた。万が一どうしても踊らなければならなくなったときの為だそうだ。

 なお練習のお相手は透明人間君。踊るのはエア社交ダンスだ、ぐすん。


 夜中は秘密訓練の時間。

 出来ればこっそり抜け出して王都の外で訓練したいんだけど、さすがに街中に出たり城壁を越えたりするのはマズそうなので自室で行う。

 王都でも私の部屋は離れにあり、夜は基本一人になるので室内で多少動き回っても誰にも迷惑はかからないのだ。

 とはいえ身体強化状態では(什器や部屋自体が)危険なので魔力操作の訓練だけだ。

 出来れば他人を強化できるようになりたいんだよね。そんな魔法は無いらしいんだけど、私の魔力は特殊だから出来る可能性はあると思ってる。

 シャルル先生によれば生きとし生けるものは皆固有の魔力を持つ。誰かを強化しようとするとその魔力と術者の魔力が反発しあって魔法が発動しないのだそうだ。

 でも変だよね。眠りの魔法なんかは生きている相手にかけられる、というか生きている相手にしか使えないのだ。

 そういう魔法がある以上、強化魔法だって他人にかけられても不思議じゃない。

 というか、かけられるようにならないと恋人も作れない。

 まずは花瓶に生けてある桔梗っぽい花で研究だ!

 ついでに魔法制御も訓練するぞ!

 服なんかの強靭化はもうほとんど無意識に維持できるのだけど寝ると途切れてしまう。しかし暴発は寝ぼけている時が一番多いから寝ている間も維持できないと意味がないのだ。

 これについてはひたすら練習すれば出来そうな気がする。

 頑張るぞ!


 王都ではそんな感じの日々をすごした。


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