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こっそり自習してしまおう

本日4連投(2/4)

 3才になった。


 最近は乳兄弟のヴォルフくんと一緒に絵本で字の勉強をしている。

 ヴォルフくんの髪色は母親であるロッテさん譲りの白。私が赤なので絵本の前で並んでいるのを後ろから眺めたらめでたい紅白饅頭状態だろう。


 この世界にも絵本ってあるんだね。カラーでかなり出来がいい。手書きじゃなさそうだけど江戸時代の浮世絵みたいに版画なのだろうか。紙も羊皮紙じゃなく和紙っぽい。

 ストーリーは知らない話ばかりかと思いきや明らかにイソップをパクっただろ、とか日本の昔話ですか、というのが結構ある。きっと私以外にも転生者がいるんだろう。

 今日乳母のロッテさんが読み聞かせしてくれているのは「ラビットとスライム」。中身はまんま「うさぎとカメ」だ。昨日は「ウラシマ・タロー」だった。名前ぐらい変えろ。


 お兄様とお姉様(ブラインとミリアという名前だ)もそれぞれ勉強の時間らしい。日によって違うけど結構長い時間拘束されているみたいだ。


 勉強後、時間が合えば皆で一緒に遊ぶ。


 天気の好い日はお姉様が兄様を庭に引っ張り出したりもする。そうなると私とヴォルフくん、お兄様お姉様の乳兄弟2人はそれについていき、6人で遊ぶ。庭は広大で走り回るには十分すぎる広さがあるのだ。お兄様がいないときでもお姉様は私を外に連れ出し体を使った遊びをする。お姉様は外を走り回るのが大好きなのだ。

 お姉様がいないときや天気が悪いときにはお兄様が読み聞かせをしてくれたりもする。お兄様は本を読むのが好きみたい。


 しかし私の家はどうやら貴族のようなのに、絵本の読み聞かせって随分庶民っぽいよね。それともこの世界では絵本は高級品で逆に貴族っぽいのか。


 この世界はどうやら中世ヨーロッパ風のようだ。石造りの大きな2階建てのお屋敷で靴を脱がずに生活する。窓は小さい。しかもガラスがなく素通しで板で閉じるようになっている。東を向いた私の部屋の窓から外を覗くと洋風庭園が見える。綺麗に整えられた木立の向こうには荒地が広がり、その先は森だ。夜外を見ると地上は真っ暗。ここはド田舎らしい。


 夜空に月はなく、代わりに黄色っぽい光の線が東から北の空を通って西まで延びている。この惑星には環があるのかな。なにげに環のある異世界物って見ないよね。

 一日の長さは地球と同じ位。一年の長さは微妙に違って364日らしい。こっちは異世界物にありがちだね。馴染みやすくて有難い。

 ついでに言うとここは南半球らしい。太陽は東から出て北を通って西に沈む。最初の頃はちょっと混乱した。


 電気やガスが無い一方、魔法の世界らしくあちこちに魔導具が使われている。灯りはもちろん魔導具で、メイドさんが毎朝毎晩巡回して消したり点けたりしている。水汲みも魔導具でやっているらしいし、料理の魔導具や冷蔵用魔導具、洗濯用魔導具なんてものもあるらしい。中世ヨーロッパ風……?

 トイレも近代的だ。中世ヨーロッパのトイレといえばおまるだったり屋外に垂れ流しだったりだそうだけどここではなんと水洗。斜めになった樋に出す物を出したら魔導具で水を流して押し流す仕組みだ。出た物は一旦タンクに貯められ後で肥料としてリサイクルされるらしい。とってもエコだ。もしかしたら昔転生者が頑張って普及させたのかもしれない。ちなみに拭く物は紙ではなく細長い木の板(使い捨て)。

 残念ながら風呂はない。代わりに水浴びしたり濡れタオルで体を拭いたりする。昔の転生者にはここも頑張って欲しかった。

 

 話を戻すと今は字を学んでいるところだ。字が読めるようになったら転生物あるある(当社調べ)の魔法学習法を実践しよう。具体的には書庫に忍び込んで魔法書を読み漁るのだ。幸いこの国の文字はアルファベットのような表音文字。漢字のようにややこしく無いので習得はそれほど難しくないだろう。


 魔法書を読みたいのには訳がある。


 魔力循環は完璧に出来るようになった。

 魔力は全身に行き渡り、まったく消耗することなく常に高速で循環している。今では息と同じで止めようとしない限り止まらない程、循環しているのが当たり前になった。魔力量も順調に増え魔力密度も訓練を始めた頃とは比べ物にならない位に上がっている。


 しかし次のステップ――魔法の発動が全くできないのだ。


 異世界物では非常に一般的(当社調べ)なアドバイス「魔法の発動にはイメージが大事」に従い魔法が発動するシーンを事細かにイメージしてみたのだが、そよ風一つ起きない。放出した魔力が水鉄砲のようにぴゅーっと飛んで、そのまま魔素に還るだけなのだ。


 魔力の問題なのかと思い魔力の密度をさらに上げてみたり、魔力循環の速度を上げたり流れの方向を変えてみたりと色々試したのだけれど上手くいかなかった。

 自力ではもう先に進めない。そこでお父様に魔法を習いたいとおねだりしたのだが、まだ早いと却下されてしまった。魔法の訓練は8才から始めるものらしい。実際、7才のブラインお兄様も6才のミリアお姉様もまだ訓練を受けていない。

 しかしあと5年は長い。長すぎる。そこでこっそり自習してしまおうと思う。どうせ後で習うんだからどっちかっていうと予習かな。私の前世は大学生なのだから、子供向けの教本ぐらいなら簡単簡単。


 ……そう思っていた時期が私にもありました。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 幼少期の頃からの魔力循環はあるあるだけど、誰も気づかないのかな? 自分の娘の魔力が体内で高速循環していたり魔力が日に日に増えていたりしていることに? なんでだ?
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