表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/375

大貴族の勢力争いに絶賛巻き込まれ中らしい

 帰宅中、馬に揺られてそのまま寝てしまった。自覚は無かったが大分疲れていたらしい。結局誘拐について聞かれたのは翌日の朝食後だった。

 誘拐の成り行きを頑張って説明した。3才児のボキャブラリーなので自慢たらしくなってしまったのはご愛嬌だ。誘拐犯のおっさん達にもすこし情が移っていたのでそれとなく弁護しておいた。


 昼になって私の家を取り巻く状況についてお父様から説明があった。

 集められたのは私達家族だけでなかった。メイドや衛兵等家で働く者たちの内の主だった者もホールに集められ、一緒に説明を受けた。


 私の家はエーコ家というのだが、現在エーコ家は大貴族の勢力争いに絶賛巻き込まれ中らしい。

 片方は王妃の実家、もう片方は側妃の実家だそうだ。

 側妃はすでに第一王子を生んでいて、今のところその子が王様の唯一の子だ。お父様達が王都にいる間にやっと5才の誕生日を迎えたらしい。つまりまだ幼い。

 少しややこしいのは「王妃」は実はまだ婚約者の状態であること。彼女は今現在魔法学園の生徒で結婚は2年後の卒業を待って行うことになっているそうだ。

 これってあれじゃね、卒業パーティーで難癖付けられて婚約破棄される悪役令嬢パターン。

 まあネット小説じゃあるまいしそうそう婚約破棄なんか起こらないだろうけど。王妃派が総出で阻止するだろうし。

 お父様の話に意識を戻す。

 側妃派は側妃の子をすぐにでも王太子にしようとしていて王妃派はそれを阻止しようとしている、という構図らしい。王妃が子を生んだ時点で第一王子の継承順位が第二位に下がってしまうのでその前に立太子を、ということらしい。もう一度言うけど第一王子はまだ5才。マジかよ。

 本来そういう争いは我がエーコ家のような下級貴族とは関係ない雲の上で行われるものだが、宮廷内での地位がいけなかった。

 詳しい部分は聞き取れなかったが今回の立太子はかなりの無理筋。それを押し通すには前提条件として第一王子が大天才だと認定される必要があり、その為には宮廷内のとある部署の協力が必須なのだそうだ。そしてその部署を預かっているのが我がエーコ家。そりゃあ巻き込まれるよね。

 しかも私の家がたまたまその地位に居た、という訳ではないらしい。側妃派の企みを察知した王妃派に、企てを阻止するために送り込まれたのだそうだ。つまり我がエーコ家は王妃派なのだ。

 ここまで聞けばわかる。側妃派から寝返れと圧力をかけられているのだ!


 シャドウクーガーを入れていたと思われる檻は見つかっているけど、誰が何時持ち込んだかは不明。檻を開けた犯人も不明。探してはいるが遠隔操作で開けられるようになっていたので見つかる見込みは薄いそうだ。こうなると手がかりは誘拐犯のおっさん達だけかな。


 お父様の説明によれば一年以内には今回の件は決着する、というかエーコ家に圧力をかける意味がなくなるらしい。詳細は国語力の不足で全然分からなかった。何度も思うが言語チートが切実に欲しい。

 警備を強化するため王妃派貴族から臨時で兵員が送られてくる、というのはなんとか聞き取れた。

 まとめると、今私の家は側妃派の圧力にさらされていて、王妃派の支援はあるものの一年耐え忍ばなければならない、ということらしい。


 私には何が出来るだろう。

 政治向きの話はさっぱり分からないし、しっかり知識を積み上げてからでないとどうにもならない。しかし身体強化は今でも通用する。現に相手の攻撃を2回も打ち破ることが出来たのだ。皆を護るため、さらに身体強化を磨きあげていこう!


 説明会の後、私はまた医務室に連れて行かれ、お父様とニコラス先生に色々と調べられた。

「魔封じ21連でも身体強化に全く差がない。つまり魔封じはフレンちゃんにはまるで効果がないようだ。こんな話聞いたこともないよ」

 ニコラス先生がお手上げのポーズをする。その視線の先には私。その風体はと言えば両手両足、さらには頭と首と腹にも無骨な『魔封じの枷』というものをじゃらじゃら付けられた可愛さともカッコよさとも縁遠いスタイルだ。

「先生、原因は分かるか?」

「さっぱりだ。魔封じの仕組み自体が公開されていないから考察のしようも無い。これ以上調べるとなるとおそらく王都の医学所に行くしかない」

「現状では王都に行かせる訳には行かない。しばらくは保留だな」

「それがよかろう。なあに、フレンちゃんはいい子だから魔封じしなきゃならないような悪戯はするまい。それにこの体質のおかげで捕まったのに自力で帰ってこれたんだ。そのことを喜ぼうじゃないか」

「それもそうだ。それからこのことはしばらく秘密にしておこう。知っている者には私から口止めしておく。フレンもいいね、フレンに『魔封じの枷』が効かないことを誰にも言ってはいけない」

「はい、おとうさま」


 結局のところ私にも一つチート能力があったのだ――――その時の私は無邪気にそう思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ