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まだ、たすかっていません

引き続きグロい表現があります。注意してください。

 何か遠距離攻撃の方法はないだろうか。

 すぐ思いつくのは投石。でも投げるのには全身の筋肉を使うって言うしぶっつけ本番でまともに出来るとは思えない。

 昼間の芝刈り魔法を遠くまで飛ばせないだろうか。そう思い試してみたけど指先に魔力を纏えなかった。

 手首足首に残っている輪っか、さっきおっさんが「マフウジの枷」とか言っていたけどそれの所為だろうか。魔力を放出することは出来る。でもそれを操作できないのだ。身体強化は出来たのに。


 うん、魔力自体は問題なく飛ばせる。でもこれって攻撃力皆無なんだよね。

 一匹のシャドウクーガーの顔に向けて魔力を飛ばしてみる。うわっ、怒った!?


「グワアアッ!!」


 (あか)い魔力を顔面に浴びせられたシャドウクーガーが吠えながら飛び掛かってきた! つられて他の奴らも走ってくる!


 飛び掛かってきた奴の口に貫き手を突っ込むと勝手に刺さってくれた。四匹目。

 しかし悠長に腕を引き抜いている暇はない。シャドウクーガーの死体をラケットに見立ててスマッシュ! 一匹を吹き飛ばすともう一匹を巻き込んでうまい具合に纏めて木の幹に叩きつけることが出来た。市立体育館で鍛えた卓球の腕は衰えていなかったようだ。二頭はそのまま動かなくなる。腕に突き刺さっていた一頭は最終的に遠心力でどこかに飛んで行った。


 残りの奴らが私と馬車を囲んでぐるぐる回り始めた。完全にやる気だね。向こうから来てくれる分には助かる。


 突然思いもかけないところからシャドウクーガーが飛びついてきた! 馬車を飛び越えてきたのだ。

 意表を突かれた私は後ろから右肩に噛みつかれてしまう。といってもキバは刺さらないんだけどね。

 でもそのまま持ち上げられると不味い。ならいっそのこと……垂直じゃーんぷ!


 おおぅ、高い高い。肩にシャドウクーガーをくっつけたまま樹冠を遥かに飛び越え怖いぐらいの高さまで飛び上がった。

 ここでシャドウクーガーの顔を押しのける。

 え? という顔をしてシャドウクーガーは離れていった。その口には服の切れ端だけが残っている。

 そのまま一緒に落下。ズドーン!! とすごい音がした。

 私はおしりから着地、少し痛い程度(!)で済んだ。しかしシャドウクーガーの方は受け身を取り損ねたのか、それとも取ったけど意味がなかったのか酷い事になってる。成仏せいよ。


 残りは三匹。

 怯えた表情をしながらも立ち去らない。馬に未練があるのかな。そんなに好きなの? 馬肉。

 でもその方が都合がいい。全部斃さないと他の誰かが襲われる。

 さてどうしよう?


 その時背後に紫色の魔力を感じた。その魔力が私の横を通り過ぎシャドウクーガー達を包み込む。シャドウクーガー達はそのまま眠り込んだ。


「今回は効いたみてーだな。やれやれだぜ」

 今のはおっさんその1のスリープミスト?だったようだ。

「おじさん、ありがとう」

 お礼を言うと眠りこけているシャドウクーガーに近づく。

 あれ、シャドウクーガーの様子が……

「とけちゃった!?」

 なんか毛皮の敷物みたいにでろれんと薄く広がっている。

「死ぬような魔法じゃねー、多分眠ってるだけだ! 魔獣の中には普段は獣型なのに隠れるときなんかは極限まで薄くなれるヤツがいるって話だ。コイツらがそうかも知れねー!」

 おっさんその1の情報を信じて近づいてみる。前照灯に照らし出されている黒い毛皮を見ると、かすかに上下しているのが分かった。この状態で生きて呼吸してるんだ。

 屋敷の前で襲ってきたときもこんな状態で待ち伏せしていたのかも知れない。

 めくり上げてみたけど本当に敷物みたいにぺらぺらだ。

 首と思しき部分を手刀でたたき切ってみる。すると毛皮が膨らみネコ科の猛獣の首なし死体になった。摩訶不思議。

 そうと分かれば後は首を落として止めを刺すだけの簡単なお仕事。すぐに終わった。念のため木に叩きつけた二匹にも止めを刺しておいたよ。


 やっと一息。

 ふと体を見下ろすと攻撃に使った右腕以外にも結構血が付いている。

 あーあ。結局血まみれだ。最初の内は気を付けてたんだけどな。


「嬢ちゃん、アンタ一体何なんだ? 魔封じの枷を嵌めているのに身体強化するわ、顔色一つ変えずに魔物を殺して回るわ、ぜってーフツーじゃねー」

 おっさんその2が怯えた顔で言う。

 確かに客観的にみればそうなんだろうけど、体を張って守った相手にそう言われると傷つく。大体守るものがあるときに一々グロいだ何だ言ってられないっての。

 そう言ってやりたかったが私の3才児のボキャブラリーでは表現できない。仕方なく3才児らしく話すことにする。


「こういうときは、おれいをいうものですよ」

「た、確かにその通りだ。嬢ちゃんありがとう、助かった。お陰で死なずに済んだ」

 おっさんその1が素直に礼を言う。誘拐犯だけど本質的には悪い人じゃなさそうなんだよね。馬車が倒れた時も庇ってくれたし。


「まだ、たすかっていません」

「そうだな、急いでこの場を離れないと、血の匂いで別の魔物が来ちまう」

「それだけではありません。わたしたちを、ころそうとしているひとがいます」

「な! なんだと!!」

 それから私はシャドウクーガーを連れてきた人がいる事、狙いは私の家である事、相手は事故に見せかけて私諸共おっさん達を殺そうとした事、一番怪しいのは全ての情報を知っている依頼主である事等を説明した。

 3才児のボキャブラリーで納得させるのは大変だったよ。


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