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天才フレンちゃんの出番かな

前日の予約投稿が上手く行っていなかったため本日2話目の更新になってしまいました。

グロい表現があります。お気をつけください。

 これまで得た情報を整理しよう。


 この誘拐は「旦那」なる人物がおっさん達に依頼したもの。つまり黒幕がいる。黒幕には資金力がある。3人の子供の誰でも良かったということは標的は私の家そのもの。子供を盾に取って言うことを聞かせるつもりだろうか?

 おっさん達は素人だ。これがそもそもおかしい。確実に身柄を確保したいならプロを使うはず。おっさん達も意識を奪う魔法が使えるみたいだが、そういう人材はプロにだっているだろう。素人を使うメリットなんて使い捨てても痛くないことぐらいだ。


 つまりおっさん達は使い捨てだ。多分口封じに消される。

 それで私は? 黒幕は私をどうするつもりなのだろう。




「うわあああああ!!」

 御者台に居たおっさんその2の悲鳴と共に馬車が横転した。

「イテテテ……無事か嬢ちゃん」

 おっさんその1が怪我しないよう抱き留めてくれていたようだ。実は結構いい人なのかも。服は洗濯する必要があるけど。

「トニー! このドヘタクソ!!」

「ちげぇ! 魔物だ! 魔物が襲ってきた!!」


 外を見ると薄暗い夕闇の森の中、魔導具の灯りに照らされた先に馬サイズのクロヒョウに似た魔物、つまりシャドウクーガーの群れがいて輓馬を貪っている。1、2、3、4……10匹ぐらい?

 黒幕は私をおっさん達ごと消すつもりらしい。お父様に精神的ダメージを与えるつもりなのだろう。ま、やらせないんだけどね。


「(ボブ! 奴らが馬喰ってる隙に眠らせろ!)」

「(無茶ゆーな! 興奮した魔物にゃ効きがわりー!)」

「(出来なきゃ俺らも食われる! 無理でもやるんだ!)」

 器用にも小声で怒鳴りあった後、おっさんその1は魔力を制御し始めた。随分ゆっくりだ。慎重にやっているのだろう。おかげで変調過程までバッチリ観察できる。折角だから覚えておこう。

「(眠れ!!)」

 気合と共に魔力が一瞬強く煌めき、そのまま塊となってシャドウクーガーに向かう。庭で感じたのと同じ魔力だ。

 魔力はフワフワとシャドウクーガーを覆い……そのまま消え去った。一匹も眠らなかった。何匹かがこちらをちらりと見たけどすぐに食事に戻った。後で食べてやるから大人しく待ってろ、とでも言いたげだ。

「しくじったぁ! もうダメだぁ!」

 おっさん達の顔が絶望に染まる。うん、ここは天才フレンちゃんの出番かな。


 立ち上がり、手錠の鎖を引きちぎる。

「だいじょうぶ、わたしにまかせて」

「お、お前、魔封じの枷をそんな簡単に……」

 おっさん達が目を丸くしている。ちょっと気持ちいい。


 多分おっさん達は自分で身を護れない。だからおっさん達への攻撃を防ぎながら戦う必要がある。幸いこの馬車は天井と三方が壁になっていて御者台の脇からしか出入り出来ない。つまり御者台を守ればおっさん達に攻撃は行かない。

 結論。襲ってくるシャドウクーガーを御者台で倒せばいい。

 ――と思ったのだが、シャドウクーガーは一匹も来ない。こちらを見ていた奴らも食事に戻ってしまった。私みたいな小さな女の子やむさいおっさん達より馬肉の方が好きみたいだ。

 もしかして馬を食べ終わった所で一斉にこっちに来るのだろうか。そうなるとちょっと不味いかも。


 よし、こっちから行こう。御者台の目の前にいる一匹に貫き手攻撃だ。


 ズボシュッ!!


 頭蓋骨を貫通して肘まで入った。

 幸い身体強化中は触覚が殆ど無い。本来なら気持ち悪い感触なんだろうけどまるで包丁で豆腐を切るように手ごたえなくするっと入った。

 そのまま体をずらしながら引き抜く。吹き出した血だの何だのは私にはかからず地面を濡らす。よし、上手くいった。頭から被らずに済んだ。肘から先は酷いけどこれはしょうがない。

 死体を蹴り飛ばしてどかし、次の一匹も貫き手で仕留める。サクサクと三匹目を倒したところで残りのシャドウクーガーが私を警戒しだした。


 こうなるとちょっと困る。

 実は私は身体強化の発動にちょっとした工夫をしていた。体の丈夫さを維持したまま力の強化だけをオン/オフしていたのだ。

 移動の時はオフ、攻撃の時だけオンだ。身体強化が二段階発動であることを利用した技で、さっき手錠を壊さずに身体強化を維持したいと考えて思いついたのだ。

 しかしこの方法だと移動速度が素の肉体の速さ、つまり3才児並みになってしまう。さっきまでのようにゆっくり近づけるなら問題ないのだが、警戒しているシャドウクーガーには追い付けないだろう。でも力を強化してしまうとまともに歩くことすら覚束ない。

 さてどうしよう。


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