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不老不死ーー食って生きるか飢えて死ぬか













「ーーーああああぁぁあ!?ぐへぇっ!!」



クソジジイによって転移させたのは、空中でした。

転移ポイントがずれていたのか、嫌がらせなのかわからないが、地上より2000m程上空から投げ出された結果、体全体を地面に叩きつけられ、ただ今もがき苦しんでおります。


ご機嫌いかがでしょうか、皆様?

私は、初っ端から死にそうです。


「ぜってぇ、ゆるざねぇ"!」



いきなり惑星の輪郭が見えるくらいの上空に投げ出されて、パラシュートも飛行石もなしにスカイダイビング。着てた服もちぎれて亡くなって全裸でスカイダイビング。もう変態としか言えない。


2000mから人がパラシュートなしで落ちたらどうなるのか?

簡単な話だ。人型の穴なんて出来ない、小さいクレーターの周りに肉片が散らばるだけだ。


地面に叩きつけられる瞬間、死ぬと思って気絶して、体はブチャっと潰れて、魂が幽体離脱してた。

クレーターの中心で動けずに立ってる幽霊化した俺と、俺の霊体を中止に集まる赤い霧。

ぐるぐると渦巻きながら集まった霧はやがて怪我ひとつない体へと変化した。

超上空から地面に叩きつけられて骨すら残らず赤い血飛沫に代わりったにも関わらず、数分して血が集まって復活したからやばい。

吸血鬼になった気分だ。


やだ……吸血鬼とかかっこいい。



「こんなに月も紅いから……」

にあわねぇ!ナイナイ!

俺にはカリスマも美貌もないくらい分かってんだよ!クソッタレェ!

しかも紅のは月じゃなくて雲なんだよなぁ。


『あ、そうだ、"キミ"の願いに反して不老不死にするのも面白そうだな』


……そういえばギリギリになってこんなこと言いやがったな。


「死ねぇ!!嘘つき、詐欺師、老いぼれ偏屈ジジイめ!」


女の声になって喋りやがってこのネカマやろうが!

はぁはぁはぁ……無意味だ。


目の前には、ただ広がる荒野の惑星。

フリードリヒ・ニーチェは『神は死んだ』と言ったが、神ごときジジイはいた。

ソ連のパイロット、ユーリイ・ガガーリンは『地球は青かった』と言ったが俺が投げ出された時に上空から見たこの星は赤かった。

俺が踏みしめる地面は赤くなかったが空はとぐろを巻いた蛇のように渦巻いていた。

今にも雨が降りそうな空は真紅であり、見ているだけでSAN値をガリガリと削ってきた。ただ雨が降りそうな黒っぽい雲だというのに遠くでも降っている気配はない。

魔界かな?

雷が落ちてたり、溶岩だらけじゃないだけマシというか。



やめよう。

まずは、人里を……と言いたいところだが、ここはなんだ?

あたり一帯が岩だらけになっており、ジメジメしている。

が、生物の気配をまるっきし感じさせない。

川もあるが、何もいない。

否、川の痕跡らしき跡はあるが水は流れていない。

乾燥した木のような植物が生えているが葉は一枚もないから、おそらく枯れてからも地面に立っているだけなのだろう。試しに枝を引っ張って見たが金属のような硬さで食べられそうにない。

ただ、思いっきり引っ張ったら俺の腕の方が取れた。

おい!どうなってんだ!いてぇぇ!

クソ!いってぇ!



痛みは一瞬だけ感じだが取れた瞬間くっついて痛みはなくなった。

取れた瞬間はあまりの痛みに声も出ずに、心臓が止まったかのように時間が引き伸ばされた。

死ぬかと思った!はぁぁ……やっべぇ。

いや、一度や二度とは死んでるけどさ。



さて、どうしようか。

あのジジイの言う通りもしも本当に不老不死になってるならば、今後の方針も変わってくる。

腕がよくわからない要因で取れるし、あんまり乱暴するとすぐにバラバラになるっても考えられなくない。

しかも、痛すぎる。

不死者特有の死に戻りゾンビアタックなんざできるわけがない。

ただ死んでも蘇るから食べ物を食べなくても飲まなくてもいい。

だからって餓死したいわけじゃないが、どう見てもどこを見ても食べ物があるようには見えなかった。


一つ安心したのは、上空でなくしたはずの布の服も体と一緒に復活したことだった。

落下の衝撃で粉々に吹き飛んだくせに体と一緒に再構築された謎素材の服。しかも脱いだまま一定距離、離れるといつのまにか着ている呪われた服。

終わり!つまり、服以外何もありませ〜ん!ははははは。


あぁ、一人って以外に悲しいな。


まあ、全裸族卒業!これが利点。呪われてるから紛失しない。古代ギリシャ時代の人が着ていた服っぽいゾ!難点としてはパンツがない!

他の服着たくても多分きれない……呪われてるから。

これはひどい。


まあ、他の人に会わなければいいーんだよ。(楽観主義)





さてと、落ち着いたところで人里を……と言いたいところだが、ここはなんだ?


俺の人生の手引きであるラノベには異世界に降り立ったら街を探すか女の子を助けると書いてあったが……はて?

これはどういうことだろうか。


キャーとか聞こえて来ない。金属がぶつかるような音もない。タイトル詐欺さんが持ってた便利なスマホもない。

見渡す限りの大平原。

"何?毒の沼地ではなく平野だと?"

とあの伝説のセリフを言うべきではなかろうか。

だがしかし平原と言ってもあたり一帯が灰色の砂と岩がゴロゴロ転がっているだけで何もない。他に何か特徴があるとすれば信じられないくらいジメジメしている。

草生えない。草www(草に草生やすな) と言うやつだ。マジでなんもないんだが。


洞窟の中みたいな湿度。

雲が分厚い上、なんか真っ黒でヤバ目な赤い光?か何かが出てるし日の光とかなくてマジで薄暗いし、あとすんごい湿気で気持ちが悪い。

なんと不快な世界なんだ。


俺のイメージ的に豊かな人間世界を奪おうとする系の魔族が住んでるタイプの世界だわ。自分で言って置いてアレだが、凄くわかりづらい。

ごめんよ。


よくさこんな世界に送り込んでくれたな?って思うよ。空からの生身のスカイダイビング自殺という滅多に出来ない体験から何にもない地獄のような世界へこんにちはとは。大層な歓迎だよ本当。

正気を疑うわ。


あ、あいつ……人が苦しむ姿が好きとか言ってたな。

ちくしょう……やられた。終盤フレンドリー*1 だったからつい油断してたが。

ああ、くそが。



※1【フレンドリー】

殴り合ったりレモンの汁をお互いの目に飛ばし合う仲〈俺的国語事典抜粋〉



なんなのこの世界?って言うより惑星。死の惑星みたいな感じで生物の気配をまるっきし感じさせないんだが。


少し周りを探索してみたが、川の代わりに水場はあった。

な、なんか飲んだら死にそうな汚水がプクプク音を立てて湧いている工場の汚水より汚いぞ。飲めるかっての!飲まずに死んだ方がマシだわ!


おっ!植物があるぞ!っておいおい、こりぁ、食べられそうにないな。何これ?こいつも化石みたいになってるし、食えるか!期待させやがって!





さて、どうしようか。

石を削ってカマド作るか、木を加工して作業台作るか迷……って、ゲームじゃねぇんだよ!


そもそも、木とかないし。

馬鹿らしい妄想はやめよう。ここからはマジになろう。

うーむ、とりあえず見た感じ?敵はいなさそうだから現在の状況を確認しよう。


何の説明もなくよくわからん世界に転移した。

持っている能力は、不老不死。

不老はわからないが不死は確実。

あのジジイ、人の苦しむ姿が好きとか言ってたから絶対なんか仕込んでやがる筈だ。

俺があのジジイなら、誰にも止められない怪物を放ったりランダムで爆発する機能をつけるしな。

そういうことがないようにと、当事者としてはいのるしかないな。



軽く歩いてみたんだが、このエリアに化石かした植物以外の生物はいなさそう……化石は生き物じゃないな。

て、ことはだ。つまり?

食料無し!

家、木ないしあっても作り方知らないから無し!石も加工できないし、怪力でもないし、作れるとしたら荒野に落ちてる巨岩を地道に石で掘ることだけど作業が好きじゃないから多分続かない。

穴を掘って住居にでも地球ならできるけど、ここの地面は全部石っぽい物体で覆われているせいで掘りようがない。

火、知らない子ですね〜……可燃物がないからどっちにしろ無し!

水はある。ただし汚水!





はい、ありがとうございます。どう見ても詰みました。


うん、酷いな。

やっぱりクソジジイだな。





その後も日が暮れて本当に何も見えなくなる前にとあたりをくまなく探索するも成果なし。

厚い雲に遮られて日が沈む姿も見れず。

なんか暗くなってきたなー、ってくらいだった。

人工の明かりや月の明かりがある空は暗いと言ってもまだ明るかった。

星も月も見えない本当の闇がそこにはあった。

眼を開けているのに閉じても変わらず。

時間が経つとともに自分の人間としての、輪郭が闇に溶けてなくなるような感じがして怖くなった。


だからくだらないことを考えることにした。


辺りはすでに真っ暗で何も見えない上、本当に生き物がいないのか虫が飛ぶ音すら聞こえず、本当に不気味だ。

これが詩人ならまるでこの闇夜に飲み込まれてうんたらというだろうが、そう言うのは勉強しなかったので、暗くて怖いでおしまいだ。

ふふふ、これが現国毎年赤点だった俺の宿命か……。ニヒルに笑ってみるとなんだが虚しくなった。

ニヒルってどういう意味だか知らないけど、ハードボイルドでかっこいい気がする。


さて、暗いし火がないから本当っっ!暗いし食べ物とかないし、やることないからなんかして暇を潰そう。

そこまで考えたところで今まで妄想ノートに書き連ねてきた違う世界に来たらやりたいことを思い出した。

妄想ノートってのは、市販のノートをマッキーで黒く塗り潰してなんか色々な闇をぶち込んだある意味呪われた本だ。

ちなみに俺はイタイとか思わずずっと書いていた。


若い心を忘れないって言うのはいいことだしな。

ほら、諦めなければきっと夢は叶うって言うじゃないか。な、俺は叶ったし。

いや、まぁ、ちょっと思ってたのと違うけどさ。

仕方な……仕方なくねぇ、


「うおぉおおおお!ジジィしねぇえぇぇぇ!!!」


俺の声が何もない荒野に寂しく響いた。


なんだか声を出したせいか、ナイーブな気持ちはさっぱり無くなっていた。明日何しようか、これからどうしようか。

明日が見えない絶望ではなく、明日に見える希望が芽生えていた。





「さて、気を取り直して異世界行ったらやりたいことその②をやろう!」


誰に語りかけるわけでもなく、真っ暗な世界で一人喋り続ける。


「その①は、ってか?

それはチート貰うだな。だから済みだ。

これを言うために異世界来たかったって言うのもあるくらいだ。

俺にとってこれは、どんな魔法の詠唱よりも価値があるものだ」


いちいち声にだして、自分に自分がここにいると言う確証をもたせていく。

いくら大口を叩いても強がっても、俺は俺だった。

人と話すのは苦手なのに話すのは好きで、目立つのは嫌いなのに目立つような行動をする。なんか言われると話がこじれるのがわかっててもケチをつけて言い返す。強がっても内心は弱い。

だからすぐ化けの皮が剥げて暗闇に怖がる。

だから心の声を口にだしてないと怖くて苦しくて泣きそうになる。

泣いたら立ち直れない。

だから、泣かない。

人が死んでも自分が苦しんでも。



「はぁ……ふぅ…ドキドキするなぁ…。

夢が叶うと思うとドキドキするな」


だから前を向いて歩こう。







「ステータス」


「……あれ?調子が悪い感じかな?

ま、まぁそう言うことめあるさ。

そういえば、異世界の先輩達であるラノベの主人公様方はステータスとは言ってなかったな。

えっと…」


「ステータスオープン」


「…そうだ、そうだこれだよ。ステータスオープン。オープン、開けまで言うのがデフォつうかなんつうか…。

さて、俺のステータスは……っと。

…ん?」


「…え?」


「…何で開かんの?」



「ステータスオープンッ!」


「……開け!

開いてくれぇ!」



「開かないだと!?

何故開かない、平賀源内(ひらがげんない)

つまらない駄洒落が出てしまうくらい同様しているらしい。

ならばどうすれば開くんだ。

発音がダメなのか?

ステータスもオープンもそういえば英語だな。

と、言うことはだな……

ひょっとすると____status open

____ひょっとしないか……はぁ」


「ネィディブ発音は関係ない…か。もういい、可能性があるなら全てやってやる!」


ステータスなんてバカバカしいものがあるわけがない。そう思って今まで読んできたラノベの主人公のようにあるわけねぇが、まあ一応な……というやつをやったがマジでなかった。

だが、ここで諦めたらゲーム終了だぜ!と使いどころを間違えている名言を思い出しながら、思いつく範囲で恥ずかしい詠唱を噤んで行く。



「親愛なる魔よ。内なる力を示し給え!ステータス」


「……何もおこんねぇぞ?」


「ふうぅぅ……真なる神に使えし僕が賜わん、我が心よ、核よ、偽りを払い、汚れなきこの魂をうつしたまえ!ステータス!!!!!」




んぎぁあぁあぁあ!!恥ずかしいぃ

だめだ、笑いが止まらねえ。こんなに恥ずかしいものとは。外で叫ぶってこんなに恥ずかしいんだな。

家の中で一人で詠唱しているとは何か違うらしい。誰もいないってわかってても恥ずかしい。

自分で言っといてなんだが、最高にバカバカしいんだが。

だが笑ったらテンションも上がってきた。ステータスなんてどうでもいいが朝が明けるまで馬鹿やっていたい。



「何なんだよ!何でひらかねぇんだよ! 」




「せっかくカッコいいポーズも決めてやったのに!チクショォォおおおお!!!!!」



仕方がないじゃないか。

だって開かないんだもの。

みんな違ってみんなダメ。

つみを





「老いぼれぇの人、聞こえますかぁー?

ファンタジーなのになんでステータスも町も生物もいないのでしょうか?えぇ?なぁ?」



叫んで、くだらないことを考えたせいか無性に腹が空いて来た。しかし食べ物はないだから寝ることにした。

こうして異世界1日目は終わった。


朝起きると体が痛かった。

石の上で寝て痛くならない方がどうかしている。虫がいないだけ良かった。

日本でこんな格好で寝てたら多分朝には服の中や口の中に虫が入ってるだろう。それに妙な虫に刺されてたかもしれない。


というか酷い状態なので極力動かないようにするために一旦座ることにした。


ぐぅ〜


腹が鳴るな。


ググググギュウ…


「ふふふ、我が腹部に封印されし暴食の悪魔が暴れ出したようだ…

ククク、我を苦しめて困るのは貴様だジジイよ…

7つの大罪の1つ暴食が解き放たれれば、この世界は終わりだ…」



腹が減って思考がおかしくなっていやがる。昨日の厨二病を引きずっているわけではない、よくよく考えてみなくてもわりと元からだった。



昨日、夜になる前に探索したが成果はなかったと言ったな?がしかし本当はあった。

しかしな、とても食べるようなものでもなかったし燃やしたりも建材にもならなさそうなものだったからわざわざ言わなかった。


ふふふふ、笑えないのに本当に理不尽過ぎて笑えてくる。

あれを食うしかないらしい。

仕方ないので重い腰を上げて、成果の方へ向かった。

歩いて200mほど。


汚水の側に群生する苔らしきもの。

見た時に地球のやつとちょっと違うなぁって思ってじっくりみてみるとわかるんだよな。

動いてる。やべえ……。

口に入れられそうな有機物があって運がいいのか、こんなものを食わないといけないから悪いのか、とりあえず食べれば腹を満たすことが出来ると思う。

一日中くらい大丈夫でしょ。

なんて思ったし、前世の俺なら5日は食わずにゲーム出来た。

が、死んで転生してから何も食べてない。

この体は極めて空腹で今まで感じたことがないほどの飢えを感じでいる。

正直、きつい。

それと、ジジィが天使を調理して作った唐揚げはノーカンだ。

アレは肉体に入る前だし。

今になっては割とどうでもいい話だが、転生するならイケメンにして欲しかった。

ここは、超イケメンにしたり、前世の身体でも高校生くらいの年齢にしてその頃の容姿を究極に美化したみたいな姿になるやん。


……何故に生前の俺だし。



さて、ほんとに死にそうだ。

喋るのもきつい。喉も渇いていた。だが、目の前でスライムのようにドロドロした蛍光色の汚水を飲む気にはならなかった。だがどんぐりの背比べもいい所だが、そこに生えている苔の方がマシに見えた。

異世界なんだから苔くらい動くよね。と自分を納得させた。


大気圏ギリギリから落下しても死なないけど、何故か空腹では死にそうだ。

やべえ。色々な意味でやべえ。

空腹もそうだが、今から食おうとしている苔がやべえ。グロい。

納得させたが食べたいのとは違う。


試しに地面から毟った苔は『キィィ……ィ……』と弱々しくクリーチャーの断末魔のような声を上げたものだから食う気が失せた。


空腹だか、文明人としてこれは食いたくない。

へんなプライドと笑われても俺は食べたくない。


「く…そ……。ジジィめ!

嫌だ嫌だ!今は笑っているがいい!いつかお前より強くなってこれを食わせてやるからな!ああぁぁあああああ、食える!食える!食うんだ!さあ、いける!俺ならいける!」



口に入れる寸前で怖いもの見たさで目を開けたことを後悔した。

どす黒い粒の塊が心臓のように波打ち、その粒の間から生えた半透明の少しピンクがかった細い触手がウネウネと動く。





「ひッ……無理無理ぃ!?!絶対無理!」














俺はその日、異世界の(こけ)を咀嚼した。

味?なんも言えねえ……聞かないでくれ。

あまりの絶望的な味と食感にも涙を流すことはなかった。


泣いてはならぬ。日本男児ならば。





◇◆


おまけ(主人公の落下シーン)






不快な音で目が覚めた。

何だろうか、この音は。

車で高速道路を走っている時に窓を開けてしまったかのような轟音は。

耳が痛え、うるせぇ…。

そう言えば、いつのまにか眠ってしまったのか……いや、俺はあの光に飲み込まれて。


それで。

どうなったんだ?


寒い。なんだこの寒さは…。

あまりの寒さに二度寝を諦め瞼を開く。





は?

え? ちょっ

待てよ。

待て待て。


フウ、はぁ、すぅ…。

落ち着け。


……もちつけ。


ふふふ、冗談を言えるくらい落ち着いてるぞ。


よし。

で、これどう言う状況?


眼下に広がる雲海はトグロを巻きながら荒れ狂い、真っ赤な光を放ちながら怪しげに輝いる。

そもそも、それ以前に雲海うんぬんよりも。

自分が雲海が下に見えるような場所にいることについて知りたい。

何この状況、当てつけ?なぁ。

今まで辛かったって言ったじゃないすか。ねぇ?




こちらは快晴、そして大空。

皆さまお元気でしょうか、転生した途端に上空に投げ出されたようです。


……笑っちゃいますよね。


ふふふ、これ落ちたら死ぬんじゃね?

酷いなぁ、え?

なんか逆に落ち着いて来たわ。


てか落ち続けてる割にはなかなか雲海に突入しないな。


待てよ、俺。ふ、ふつうに考えてだ。

空からスタートしても死なないんじゃないか?

空から美少女が落ちてくる系でも誰かがキャッチするか、不思議なパワーで着地するか、途轍もなく頑丈な人間を下敷きにすることで助かってるじゃん。

あと、不思議な石な。

空からスタートで助からなかったらいきなり鬱展開だしな。


ま、安心して落下しよう。



ーーーそんなことを思った時もありました。



「このくそじじぃがぁぁぁぁあ!!!」



雲海を抜ける際に雷に軽く焼かれ途轍もない激痛で気絶してから意識が戻るまで数分。もう地面がかなり見えています……しかも何も無い荒野、飛行アイテムなし。


何をトチ狂ったのか平泳ぎを始める俺。

あ、そこは平泳ぎじゃなくてクロールじゃね?

などと冷静になってきた頭が自分に語りかけてくる。


しかし現実は酷である。

落下は止まらず遂には風圧で目が開かない。

見えなくても何だかんだ人間というのは危険で頭が冷静のようにみえても実は冷静じゃないらしい。



「止まれ止まれ止まれぇぇぇぇぇ!」



つまり、口からは焦りが出る。

止まれって言って止まったら苦労しねぇよ。

そもそもそんな力があったらめくれろって言えばパンツ見えるとか死ねって言ったら死ぬとか出来るだろうし、あ、そういえばそんなようなラノベ読んだな。

あぁ、まだ読み終わってないから後でもいいからこっちに送ってくれないかn



って…目が開く?

お?これは……。

何だが分からないがちょうどいい今どんな状況なのかわかるな。



ん?


お、ちょ……早っ…

いつのまに。




目が空いた時には目の前が灰色一色だった。ザラザラとした岩石が転がる灰色の大地。"死"を前にして思考が加速し全てのものが……時間がゆっくりと流れ出す。


まだ、


いやだ…!


あ、死ぬ…。ちょ、助けて。


「わっ、

あ ぁ あ ぁああ あ あ

ああ ぉ ちっ、ぉ落ちッ__


っる。落ちる


……ッ!地面が、


ひゃぁ…

地面、地……________」






《回想終了》


って感じだったわ。


え?無理だから。

落ちている時にあれだけのこと考えるのはさ。





言葉補足


こんなに月も紅いから……

→東方プロジェクトのカリスマ吸血鬼 レミリア・スカーレットの決め台詞。

フリードリヒ・ニーチェ→『神は死んだ』と言った哲学者。ニーチェ先生という漫画で広く知れ渡ったと思ってる人もいるかもしれないがもとから有名


ユーリイ・ガガーリン

→『地球は青かった』と言った人。世界で初めて宇宙から地球をみて地球が球体だと証明した。そしてニーチェのように神はいなかったと、神の存在を否定した、ソ連の宇宙飛行士。


草www(草に草を生やすな)

→草、wはどちらも笑うという意味なので、草wwwだと頭痛が痛いみたいな意味になる

そい言ったものを書いた人に対してSNSや掲示板では草に草を生やすなと返信する


ステータスオープン

→異世界に転移・転生した主人公がよく言う戯言。

ゲームみたいに自身の能力が数値化され表記される


ゾンビアタック

→RPGでよく聞く言葉、プレイヤーが復活するのをいいことに、何度も敵に無謀に突撃し、回数の暴力で勝つ方法。賢くない脳筋プレイ。

ゾンビのように人間だったら死ぬような攻撃を受けても何度でも立ち上がり攻撃することから生まれた言葉


キャーとか聞こえて来ない。金属がぶつかるような音もない。

→俺つえー系と呼ばれるジャンルの出だしでよくある展開。きゃーっと女の子の悲鳴が聞こえてきて助けに行き悪漢を神様からもらったすごい力で倒し、お礼にお金をもらったりしてストーリーが始まる。

あまりに主人公に困難がなくトントン拍子で展開するため、桃太郎になぞらえて○○太郎と呼ばれる。

ご都合主義ともいう。


タイトル詐欺

→タイトルに書かれた内容と中身の内容が逸脱して違う場合に使われる言葉。例えば、最強召喚術師のモフモフスローライフという()なタイトルがあったとして、内容が弱っちい召喚術師が妖怪目玉男みたいな化け物に怯えながら暮らす話だったら、タイトルの内容とちげぇだろ!となる。


"何?毒の沼地ではなく平野だと?"

→なろう原作の有名作品、アニメ化もした。骨魔王が異世界で暴れる作品。大ファンで全巻新巻で購入した。


石を削ってカマド作るか、木を加工して作業台作るか迷……って、ゲームかよ

→世界的クラフト系ゲーム、マインクラフトのこと。サンドボックスと呼ばれるジャンル。説明するより調べてみてもらう方が早い。


ニヒル

→虚無(google辞書抜粋)


ハードボイルド

→文学で、感情を交えず、客観的な態度・文体で対象を描写しようとする手法(google辞書抜粋)


妄想ノート

→自分の現実不可能な夢を書いたノート、小説や絵など作品作りをする人ならばアイデアノートにもなり得るが創作活動をしない人の場合は、黒歴史ノートにもなり得る。


ナイーブ

→(仏)無邪気な、(英)無知な、(日)傷つきやすい

国によって意味が違うが本作ではもちろん日本の意味で使っている。


ここで諦めたらゲーム終了

→スラムダンクの有名なセリフ。軽々しく使ってはいけない。


詠唱

詠唱(アリア)とは元は節をつけて歌をうたうこと、つまり賛美歌など宗教的な意味があったが魔術秘密結社が魔術の使用時に詠唱をしたことで現代では、魔法や魔術は詠唱をするものというような風潮になった。というのが本を読んだり資料を調べた作者の見解である。


みつを

→相田 みつをのこと、日本の詩人で命について書いた詩が有名。


暴食の悪魔

→7つの大罪の一つ。7つの大罪はキリスト教の西方教会、おもにカトリック教会における用語で七つの原罪ともいう。人間の持つ欲望や罪を七つの悪魔に例えたもの。傲慢・嫉妬・憤怒・怠情・強欲・暴食・色欲の七つ。ちなみに暴食はベルゼブブという蠅の悪魔である。

クリーチャー→化け物のこと、ファンタジー作品ではモンスター、SFではクリーチャーという風潮がある。ただクリーチャーはどちらかというと動物的要素の薄い化け物という見解。


超イケメンにしたり、若返らせたり

→本サイトつまり、なろう系と呼ばれるジャンルにおいて異世界に行った登場人物は基本的に姿を変える。

老若男女問わず、若返ったりイケメンになったり。


日本男児

→日本男児だからという言い方は現代では差別的だが、ここで言っているのは戦争時のイメージ。辛くとも我慢しろ、男だろ!


不思議な石、飛行石

→ラ○ュタで主人公が所有した空を滞空できる特殊な石。身につけていれば落下死をしない


空から女の子

→アニメでよくあるシーン、上空から女の子が落ちてきて主人公が受け止める。そこに重力や慣性の法則なんてない。

叩きつけられて受け止めた主人公ごと死んだりしない。


この世界について

→この世界のイメージはオルクスオンラインの浸食世界に似ています。別に元にはしていません。似ているのは空の色です。

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