第1回 《あるべーの疑惑の経歴》
あるちゃん「みなさんこんにちは」
ベーくん「どうもはじめまして」
ある「ひとまず、こっそりとはじめておきます」
べー「箸休め枠ですね、言ってしまえば」
ある「気軽に書けるのはいいけれど」
べー「なにを話せばいいのか迷ってしまうし」
ある「そもそもそれは、小説でもないしね」
べー「ある意味、もう実験枠でしょ、これ」
ある「自己紹介を忘れてない?」
べー「そうだね、じゃ紹介と参りましょうか」
ある「私は"あるふぁ・るふぁ"、"あるちゃん"と呼ばれてることが多いかな」
べー「ぼくは、"べー・たらんちゅら"、通称"べーくん"と呼ばれてるよ」
ある「ということで、いかにも弱々しそうな野菜と心優しいタランチュラの会話をみなさんには提供していこうかなと思いまして」
べー「どこに需要があるんですかね?」
ある「ないよ(笑)」
べー「ないのにするの?」
ある「とりま、今回は経歴を紹介するだけでよくね?」
べー「ま、そうね。でもアルファルファとタランチュラに"経歴"なんてものがあるの?」
ある「なくはないでしょ、書籍としてないだけで」
べー「人間界でいう昆虫図鑑と植物図鑑に一般的な説明が紹介されているわけだけど、それだけでしょ」
ある「あのさぁ、通常ならばお互いこんな知能指数あるわけないコンビなわけじゃん、私たちの経歴を紹介するのは、初回だし、やっておくべきなんじゃないかな」
べー「せやろか」
ある「そうやよ」
べー「じゃ、それで初回はいくか」
ある「こんな感じで毎回始めていくのかよ、まあよくって、2回目からは本気出すわよ」
べー「出さねぇな、こりゃ」
ある「まず、私から。実はね、アルファルファっていうのは通称名なのよ」
べー「え~、知らなか・・・」
ある「そんなわけないでしょ、私、種としては、ムラサキウマゴヤシと言われてるの」
べー「聖飢魔Ⅱが地球デビューを企てていた時期にそんな言葉を聞いたことがあるよ、僕のおじさんは」
ある「あったね、そんなの、でもけっこうマイナーな感じがするのだけれど」
べー「こんなこと言ってたら、我々の年齢がバレてしまうじゃない?」
ある「いわゆる健康食品ブームのころに生まれた今年35歳のちょっと鮮度が落ちてしまったやつです、はい」
べー「体型だけでなく、そんなとこまでぼそってなっちゃうと程なく出荷されるよ」
ある「わかってるって、でも大体海外の出身が多いんだよね、日本じゃ土壌の関係で品種改良しないとなかなか新しいのは生まれづらくて・・・それでも北海道を中心に増えてはきたけどね」
べー「北海道生まれだっけな、たしか」
ある「生まれは北海道だよ、正解!んで、幼少期に出荷されて、某研究所の検査でIQ120あることが発覚したので、擬人化させて現在に至るという感じかな」
べー「知能検査に回されるのは、ごく稀にあるとは聞いたよ」
ある「そう、100万本に1本がそっちに回されるわけだけど、なんとそれに私が選ばれたわけで、でもこんな未来になるとは予想してなかった。食卓に回ってだれかの歯で噛み砕かれて、胃腸で溶かされて臨終される未来と聞いていたから、こんな高度化されたなかでしっかりと自我が芽生え、35年経っても生き続けるとは思わなくてね・・・、おかげさまで旬は過ぎたけど最低限の酸いも甘いも嚙み分けるようにはなったかな。本来なら嚙み分けられるサイドの輩なんだけども」
べー「まあ、奇跡の存在というわけよ」
ある「でも、べーくんもそんな存在じゃなかったっけな?」
べー「僕は、あるちゃんと違って外国生まれなんよ、イタリアのタラントってとこで生まれた。こっちでいうとギリ昭和生まれってとこか。歳は下なんだけど、あるちゃんのことは似たような境遇のせいか心開いてしまってだね、ふつうにしゃべるようになってしまった・・・」
ある「その代わり、毒を抜かれてしまったんだっけ?」
べー「人間界採用試験というのが毎月1回あって、自分もそれを受けたんよ。身体検査の際に抜かれてしまうんよな・・・タランチュラ界で生き抜くためには相当な覚悟がいるし、寿命からしてもそんなにないからね。ただ人間としてのスキルは高度な技術なので見よう見まねながらに覚えて、人間の血を吸わせながら、少しずつスキルを奪えるようにはなってきたところで、この試験の存在を知って受けた。倍率が4949倍のなかで、3回目にしてようやく受かった。でもね合格してからが大変で、まず一旦気絶させられる、からの本格改造だよね。手足が6本なのは相変わらずなんだけど、どこで手に入れたのかわからない脳みそを吸引して、そして意識が回復したら配属先の準備よね、僕は数ある国のなかから日本行きを命じられて、そして日本語を覚えながら、さまざまなしきたりを学んで現在に至るかな。毒はなくなったけど、話のなかで毒を持ってしまう可能性はしっかりとあるわけなのでどうぞよろしく」
ある「よろしくできるかよって話なんだけども、そんな私たちの出会いは異業種交流会だったんよね」
べー「人間界に転身した方々が集うイベントが世界各地で開かれててね、いろんなのがいたなあ」
ある「元クワガタとか、元カボチャとかっていう肩書には憧れてたし、ちょいとばかりコンプを抱いていたんだけど、そんななかで樹液をちまちま飲んでるのがいて、それがべーくんだったんだよね」
べー「僕は、交流しないで外から見守るようなやつだったから、とってもスリムでだけどひ弱な感じのあるちゃんとは気が合ったわけなんだよね、見知っちゃうから」
ある「ねー、私はさておき、べーくんは意外だったよ」
べー「それがきっかけで何回か付き合った結果、無事に籍を入れるまでに関係を深めたって感じかな」
ある「さらりといってしまったね」
べー「このところ、梅酒にハマってしまったんだよ、そのせいかも」
ある「まあ、これで簡単な自己紹介は終わったかな、そういっても絶対足りないってとこはあると思うから、適宜追加していこうとは考えてるよ」
べー「小出しのほうがいいからね、じわじわっとやっていくとしよう」
ある「とりあえず、この対談はその時の気分次第で進めていこうと思ってて、回によっては長くなったり、思いっきりショートになったりするかもしれないけれど、私たち夫婦の疑惑の対談をお送りできればと思います」
べー「一応、初回はこの辺でお暇ということでいいわけだよね」
ある「回を増すごとにどうなっていくかに期待しながら」
あるべー「それでは、また第2回でお会いしましょう!!」