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48話 告白 ★

 何を? と聞き返さなかえればならないほど、俺は鈍感じゃない。

 アイネが何を言いたいか、アイネがどんな気持ちなのか、当然察することはできている。

 できているのだが……


「……あの、さ。怖い思いをした時の緊張と勘違いしてないか?」


 それでも、なんでそうなるのか理解できなかった。

 だから、失礼になるかもしれないと思いつつも、それを確かめざるを得なかった。

 アイネは俺の言葉をきくと、きょとんとした顔で俺のことを見つめてくる。


「そう、なのかな……? でも、なんつーか……んー……」


 少し考え込むと、アイネは言葉を続ける。


「たとえばウチが敵を倒した時、父ちゃんや先輩がさっきみたいに、だっこして褒めてくれたことがあるけどドキドキはしなかったし……それに、こんなに気持ちよくなかった……」


 えへへ、と小さく笑うアイネ。

 そのまま尻尾をアイネの背中にまわした俺の手首にからませてくる。

 そしてアイネは俺の肩に顎をのせてくる。部屋の暗さのせいで、体中の感覚が鋭くなっているらしく、首辺りがぞわりとするのを感じた。


「そうか……でも、俺なんか──んっ」


 と、アイネは人差し指を俺の唇に押し付け言葉を遮ってきた。


「なんつーか、一目惚れ……? みたいな? あれ、違うか。出会った時はただのイケメンとしか思わなかったし……えっと、なんていうんだろ……えっと……」


 どうやら、俺が言わんとしたことを察したらしい。

 うー、と唸りながら必死にアイネは考え込んでいる。

 そして十秒ほどそんな状態が続いた後、アイネは早口でまくしたててきた。


「仕事終わったのに料理の練習したりっ、周りの空気に流されないで酔いつぶれた先輩をしっかり止めたりっ、真面目にノートとか作って復習したりっ、喧嘩ふっかけられても落ち着いてたりっ……ウ、ウチを助けるために命をかけてくれたり……傷ついたウチを見て、泣いてくれたり……なんか……その……」


 だんだんと言葉の勢いがなくなっていく。

 そしてそのまま一度黙ると肩に俺の耳元まで顔を近づけ、ささやくように言ってきた。


「いいなぁって……思っちゃったんす……なんか、今日……自分の部屋で一人で考えてたら、余計に……だから、その……要するに…………好き…………って、ことで…………」


 思わず、体を震わせる。改めて聞かされた時の衝撃は、想像以上に凄まじかった。

 それはおそらく、アイネも同じなのだろう。


「だ、だから……俺なんか、なんて言わないで……」


 行動自体は大胆なのだが、手や膝がぶるぶると震えている。


 ──これ、言われる側より、言う側の方が絶対大変だよな……


「ま、まぁ、そんな感じかな……うん…………」


 と、アイネが我に返ったかのように俺の身体から離れていく。


「アイネ……」


 すっと立ち上がり俺に背を向けるアイネに、どこか寂しさを感じてしまった。

 同時に、どこかほっとする。あのままアイネに抱かれていたら、俺はまずいことをアイネにしてしまっていた気がするからだ。


「えと、伝わってる、よね……? その、好きって……そういうのだって、こと……」


 アイネが首の向きだけかえて俺にそう問いかける。

 とりあえず、首を縦にふった。うまく声が出せそうにない。


「ははっ、そんな顔しないでよ……ウチ、別に困らせたかったわけじゃないから、さ……」


 俺はどんな顔をしていたのだろう。

 寂しそうに笑うアイネを見て、少し申し訳なくなってしまった。

 と、アイネはしゃがみこみ、俺に視線に合わせてくる。


「それに……その、ウチ、独占欲とかはあんまない方だと思うんで。先輩と一緒でもいっすよ?」


 ──なんですと!?


 さっきのアイネの言葉より衝撃的だった。

 何か言い返そうとするも、声が出てこない。なんて言えばいいか分からない。


「あははっ、ま、先輩は意外にお子様なんで、そうなるか分からないっすけどね」


 そんな俺の様子を察したのか、アイネはいたずらっぽく笑うと立ち上がる。

 そして俺に対し右手をひらりと一回振ってきた。


「あの、じゃ、じゃあ……えと、ウチ、戻るっす。ちょっと遅いし……」

「あ、じゃあ……」


 おくろうか、と言葉を続けようとした時。


「い、いいっ! いいからっ……」


 アイネがそれを遮ってくる。

 左手を額に当てながら俺に背中を向けるアイネ。

 そして、一つ深呼吸をすると、彼女は言葉を続けてきた。


「自分で押しかけておいてあれなんすけど……ちょっと、落ち着きたいっす……さーせん……」

「あ、そうか……」


 ──まぁ、色々あったからな、大変だよな、うん……


 心の中でアイネを労いながらも、やはりうまく言葉は出てこなかった。


「じゃ、じゃあっ……おやすみなさい……あの、今日は本当にありがと…………っす」


 一度だけ俺の方をふりむきニカッと笑うとアイネは部屋の扉に逃げるように走っていた。

 ばたん、と扉の閉じる音を最後に辺りが一気に静かになる。

 俺はしばらくの間、ただただ唖然とすることしかできなかった。


「……マジ?」


 今のはなんだったのか。夢だったのか、妄想だったのか。

 うまくまわらない頭をかかえこみながら、俺はいつのまにか眠りについた。


もうちょっとアイネに過激なされたいことされたいなら――

18禁版も後でチェックしてみてくださいっ!

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