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429話 探りの質問

 傍にあった椅子に座り、改めて俺達の方を見つめてくるマドゼラ。

 そのまま足を組み、どこか余裕を見せつけるように微笑む。


「……さて。ラーガルフリョウトルムリンのことと言ったがねぇ。アンタ達が知りたいのはどういうことだい。単にアタイの武勇伝を知りたいわけじゃないんだろう?」


 その質問をされて、一度スイと目があった。

 リーダーとしては情けない話だが、こういう時に話を進めるのは口下手な俺より、スイの方が適任だろう。

 声に出さずとも、俺の気持ちが伝わったのか。スイがこくりと頷いて前に出る。


「貴方がラーガルフリョウトルムリンを倒した時に『ソウル』を確認しませんでしたか」

「ん? 『ソウル』ってのは――召喚術師がいじくってるアレかい?」


 言葉こそ質問の形式をとっているが、マドゼラの真意はそこにはない。

 そんな質問を出してきた俺達の過去のことを探っている。そんな目だ。


「はい。そのソウルのことを言っています。何かご存じですか」

「ふむ……あれを討伐したのは昔のことだからねぇ。そうはっきりと覚えているわけではないが……」


 少し目をそらして顎に手をあてるマドゼラ。何かを思い出しているような表情だ。

 そんな彼女に、スイは軽く頭を下げて言葉を続ける。


「お願いします。些細なことでもいいので、何か気になることがあったら」

「…………」


 スイの真摯な声色と眼差しは、マドゼラの心にも訴えるものがあったのか。

 マドゼラの表情も真面目なものに変化する。


「アタイは、調子にのってた魔物が鬱陶しかったから殺しただけだからねぇ。死骸に何が残っていたかなんていちいち確認はしなかった。でも……その後に国が魔物の死骸を気にしていたとはきいているねぇ」

「国が、ですか?」

「あのレベルの魔物がラグナクアに現れたことはいまだかつてないからね。まぁそういうこともあるだろうとは思っていた。ただ……」


 口ごもるマドゼラ。

 若干の苦笑いを浮かべて言葉を続ける。


「すまないねぇ。だが、アタイは倒した魔物なんて興味がなくてねぇ。伝え聞きだから、どこまで信用できるか分からないから、それは前提にきいてくれよ」

「はい」


 端的に答えるスイ。

 それに続くように、俺達は皆で首を縦に振る。

 

「アタイがあの魔物を倒したときいた後、その噂をききつけた冒険者が金目のものがないか確認するために魔物の死骸を探しに行ったらしい。だが、すでに国の奴らがそれを取り囲んでいたらしくてねぇ。なにやら妙な儀式をしていたときいている」

「儀式……ですか?」


 怪訝な表情をうかべるスイに、マドゼラが苦笑する。


「アタイは魔法に疎いからねぇ。それがなんの儀式かはきいちゃいない。でも、召喚術師が持っているあのクリスタル……あれにソウルを込めるのは、そう簡単にできるものじゃないんだろ。アタイはそれなんじゃないかと思ってる」

「なるほど……たしかに、召喚獣の媒体になるクリスタルを作ることは、かなり高度な魔術が使える人じゃないとできないと私もきいています」


 マドゼラの質問に答えつつ、スイは俺達に説明してくれているように見えた。

 ゲームでも、手に入れたソウルを召喚クリスタルに変化させるためには、召喚術師が自力で行うことができず、NPCに手数料を払ってやってもらっていた。

 そのNPCは、王都アルドベーファの宮殿に仕える名もなき魔術師で、モブキャラとして扱われていたのだ。


「だからアタイの倒したラーガルフリョウトルムリンのソウルがドロップしていても、べつにアタイは驚かないね。まぁ、そんなこともあるか――というところか。というか、あれだけ強力な魔物なんだ。召喚獣化を検討するのは、当然のことかもしれないねぇ」

「なるほど……」


 それをきいて、スイが表情をこわばらせる。


「……その妙な儀式というのをしていたのは、たしかに国の人だったんですか?」

「アタイが直接みたわけじゃないからねぇ。断定はできないよ。でも、ロイヤルガードが護衛にいたのはたしからしいねぇ。さすがにそれを見間違えるやつはいないだろう」


 それをきいて不安げに俺に振り返ってくるスイ。

 その表情の意味に、俺は少しの間気づかなかったが――しばらくして、なんとなく察した。


 俺達が戦ったラーガルフリョウトルムリンは、ヴェロニカの召喚獣だった。

 そして、マドゼラが倒したラーガルフリョウトルムリンもソウルをドロップしていた可能性がある。

 しかも、ラーガルフリョウトルムリンを討伐したのは、マドゼラとしか記録されていない。

 他にもそれを倒した者が記録されているなら、大陸の英雄として名が知られているだろう。

 ということは……


 ――まさか、国とヴェロニカは繋がっているのか……?



「……なぁ、アンタ達……レベルはいくつだ?」

「え?」


 こちら側の質問がすんだとみたのだろう。

 マドゼラの目は、俺達を探るようなものに、再び変化していた。



「戦ったんだろ。ラーガルフリョウトルムリンを召喚獣にしているヤツと。そうじゃなきゃ、そんな質問するはずがない。そのメイドの強さも尋常じゃない。だとすれば……」


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