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394話 リベンジバトル

 アイネとクレス。

 二人の体には、青白い光の鎧が覆われている。

 練気。拳闘士が使う、防御を無視する強力なスキルを使うための気の鎧だ。


「アハハ、なんかいきなり決闘になっちゃったね。このまま新スキルを習得できれば、意外とあっさり皆と合流できるかも?」


 周囲を支配する独特の緊張感にはまるで似合わない声で、トワが笑う。


「そうだといいんすけどね……魔道具か……」


 クレスをじっと見つめながら、足首を何度か回すアイネ。

 クレスの腕には、その背丈からはあまりにも不釣り合いな巨大な黒の手甲がはめられている。

 袖を赤くした白い道着の色合いとの対比もあり、それは一際目立つものだった。


「やっぱり来てよかったっす。もしウチも魔道具を使えたら……」

「うん。絶対強くなれるよ。頑張って」

「そっすね……気合い、入れていくっす」


 明るくウインクをするトワの顔を見て、アイネが力強く拳を握りしめる。

 

「……何をぶつぶつ話してる。今更おじけづいたのか」


 挑発的にそう言い放つクレス。

 いつでもその手甲でアイネを叩き伏せてやるとでも言いたげな不敵な表情。

 だが、そんなものに気圧されるアイネではない。


「冗談。むしろ楽しみっす。ホントはもっと色々手順をふむつもりだったんすけど……カミーラさんがここまで歓迎してくれると思ってくれなかったからラッキーっすよ。どうあれ……学ばせてもらうっすよ。魔法を味方につけた拳闘士の戦い方」

「ハッ、不快だな。オレに勝てるつもりでいる、その目つきが」

「それ、前にもきいたっす。ネタの使いまわしとか、はやらないっすよ?」

「…………」


 アイネの言葉に、クレスがあからさまに不快感を顔に出した。

 ふと、ほぼ同じタイミングでカミーラが何度か手を叩き皆の注意を集める。


「それ、御託はその変でいいだろ。後は、拳闘士として語り合え」

「……御意。目を覚まさせてあげますよ、カミーラ様」


 クレスの目つきが一層鋭く変わる。

 次の瞬間――



「ラアアッ」



 アイネの拳とクレスの手甲が真っ向からぶつかりあう。

 僅かにアイネの体が後ろに押し込まれた。


「――っ!?」


 それを見て、クレスがはっと息をのんだ。

 クレスの攻撃を真っ向から受け止めてもアイネの体はさほど押し出されていない。

 それは巨大な手甲を身に着けたクレスと素手のアイネの攻撃力が殆ど互角であることを示している。


「ぐっ――」


 クレスの手甲の動きを止めたアイネが蹴りの動作に移る。

 それを見て、クレスも瞬時に同じ動作をした。

 互いの足が十の字を描くように交差する。


「っ――」

「ぢぃ……」


 これも互角。互いの体は後ろに弾かれた。

 そこからアイネが仕掛ける。


「ラアアアッ!」


 青白い光を纏うアイネの手がクレスの腹部へ突かれる。

 しかし――


「閃烈弾抗!」

「っ!?」


 クレスの手甲がそれを阻む。

 素早く横に払われた手甲で、仕掛けたアイネの方がはじき返された。


「走破寸勁!」


 払われた手甲の動きが横から縦へ。

 逆にアイネの腹部を抉るように突く。


「ぐっ――づっ……」


 それを受け、アイネは手甲にうずくまるように突っ伏す。

 勝ち誇ったような顔を見せるクレス。

 だが――


「むっ――!?」


 すぐにクレスは表情を変えた。

 アイネの手を纏う青白い光が黄金に色を変えている。


「地襲崩獣拳!」

「なん――ぐああああっ!?」


 至近距離から放たれるのはアイネの必殺技だ。

 アイネのマナが虎の頭のような形で具現化し、そのオーラがクレスの体を穿つ。


「ぐっ……いきなりこんなっ……博打かっ! このクソ猫……!」


 巨大な手甲ごと宙に浮かされ、大きく後方へ弾き飛ばされたクレス。

 すかさず追撃を仕掛けていくアイネ。


「まだまだっ!」

「クソッ――」


 なんとか体勢を立て直して腕を引くクレス。

 ほぼ同じタイミングで突き放たれる二人の拳。


「「ラアアアアッ」」


 猛々しい掛け声が重なる。

しかし、二人の体は全く動かない。

 攻撃は完全に相殺されている。


「ハハハ、どうしたクレス。いい勝負をしてるじゃないか」

「冗談! ただのラッキーヒットですよっ! ラアアアアッ!」


 カミーラの言葉に突き動かされたように、クレスが一歩前に踏み込んだ。

 徐々に押し込まれていくアイネ。


「くっ、この――!」


 このままでは競り負ける――

そう感じたのか、アイネは突き出された拳を横に受け流して唐突にバックステップで距離をとろうとする。

 しかし、そう簡単に休みを貰えるほど、クレスは甘い相手ではない。

 次々に襲い掛かる手甲の雨に、アイネは苦悶の表情を浮かべる。



「ラッキーヒット、ねぇ……なぁ、そこの妖精。アンタもそう思うかい?」

「え……ボク?」


 と、不意に自らに視線を移してきたカミーラに、トワが頓狂な声をあげた。

 呆れたように笑うカミーラ。


「なんだ、ぼーっと見ているだけかい。アンタもあの男の連れだろう。少しは考えながら見たらどうだ」

「そ、そう言われても……そうだなぁ……」


 心配そうに、アイネとクレスの攻防を見守るトワ。

 地襲崩獣拳はアイネが使えるスキルの中で最高の威力を持つ必殺技だ。

 それを決めてもなお、クレスはアイネと互角以上の動きを見せている。

 いや――徐々に、アイネの方が攻撃の回数が少なくなっていた。



 ――やっぱり、クレス君の方が格上なんじゃ……




「……アイネとかいったか。アイツ、相当やるね」


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