表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
275/479

274話 作戦会議

「あっ、帰ってきたっ!」


 転移の光が視界から消えた時、真っ先に聞こえてきたのはアイネの声だった。


「意外ですね。もう少し時間がかかるかと思いましたが」


 少し目を見開いて、スイが俺のことを見つめている。

 そんな彼女に対し、トワが自慢げに胸を張りながら言い放つ。


「ふふーん。気になる会話をきいたからね。すぐに戻ってきたんだ」


 トワの言う通り、目当ての情報には、すぐにたどり着くことができた。

 カミーラと、俺達がこの場所で出会ったあの少年が繋がっていたことには驚いたが――カミーラがクレスに対して今後の指針を話していた場面に遭遇できたのは幸運だったと言えるだろう。

 本当だったら馬車も一緒に転移させたかったのだが、連れていかれた場所が分からず、結局トワと二人で戻ってくることになってしまった。

 ともかく、俺は分かりやすく言葉で伝えるのが少々苦手なので、トワが見てきたカミーラとクレスの会話の内容を三人に話す姿をしばらくの間黙って見つめることとなった。



「なるほど。三つの隊に分けてっすか。シンプルに来たっすね」



 トワの説明が終わると、アイネはそれを確認するように声をあげる。

 そんなアイネの声を受け、スイは数秒ほど考え込む動作をするとゆっくりと言葉を放った。


「私達とここまでの敵対関係になるとは向こうも想定していなかったでしょうから、それは分かるのですが……しかし、リヴァイアサンですか……」

「あれ、スイちゃん、知ってるの?」


 含みのある言い方にトワが反応する。

 やや顔をしかめながら言葉を続けていくスイ。


「はい。直接見た訳ではないですが、旅をしている時にきいたことがあります。ルドフォア湖畔に封印された魔竜の話しを……」

「魔竜っすか? また凄そうなのが来たっすね……」


 騒々しい単語に、アイネが目を見開いている。

 魔竜――その単語は、ゲームでもきいたことがある。

 レベル200近くまであげたプレイヤーでも苦戦するボスモンスターとして恐れられていたが……


 ――あ。


 そういえば、きいたことがある。

 ルドフォア湖畔。その湖底には、実は神殿があり、クエストをこなすことによって神殿に侵入することができるようになる。

 その神殿はルドフォア湖底神殿という名のダンジョンで、その最奥のフロアに数時間ごとに出現するボス――それが水魔竜リヴァイアサンだったはずだ。

 そのダンジョンは入るためのクエストがとても面倒だし、ドロップも他のボスモンスターと比べて一際高価とは言えなかったため、ゲームで俺が行ったことはなかったが……


 ――まさか、こういう形で戦うことになるかもしれないなんて……


「数十年前、ルベルーンはあんな大都市ではなかったんです。それこそ、トーラみたいな小さな村で……一度、壊滅したことがあるんですよ」

「か、壊滅!? それって……」


 アイネの驚く声で、俺は我に返る。


「アイネが察した通り、リヴァイアサンが原因です。一時期、この辺りはリヴァイアサンのテリトリーとして超危険地域に指定されていたみたいですね」

「へぇ……そんなふうには見えないけどね」


 そう言いながらトワが周囲を見渡す。

 たしかに彼女の言う通り、ここルドフォア湖畔の光景は随分とのどかなものだ。

 前に通った時はケルピー達が暴れてはいたが――少なくとも今の景色は、とても魔竜が暴れていた場所とは思えない。


「そのリヴァイアサンをルドフォア湖畔に封印した討伐隊――その中で最も貢献したとされるのが、あのカミーラ・クノトリアとききました」

「うっ、どおりであんなに強いわけっすね……」


 スイでさえカミーラの技の対応には苦戦していたのだ。

 アイネからみればとてつもない戦いに見えていたことだろう。

 そのげっそりとした表情がそれを物語っている。


「そのリヴァイアサンの封印を解くというのが少し気になります。記録では、そのレベルは185だとか……」

「185!? そんなのっ、無茶苦茶じゃないっすか!!」

「アハハッ。それ、リーダー君の前で言う?」

「ま、まぁそうなんすけど……」


 トワはあっけらかんとしているが、スイとアイネの表情は曇っていた。

 たしかに俺のレベルは2400と聞いている。

 しかし、レベル185ともなれば俺の持つ一部の召喚獣よりもレベルが高い。


 ――間違いなく、今までで最強クラスの相手だな……


 レシルのレベルは分からないが、少なくとも俺以外がまともに勝負できるような敵じゃないだろう。

 いくら大丈夫だと自分に言い聞かせても一抹の不安はぬぐいきれなかった。

 もし何かしらの形でリヴァイアサンが敵に回ったとしたら、それに対処できるのは俺しかいないであろうから。


 ……改めて、俺にかかる責任の重大さを認識する。


「とにかく相手の出方は分かりました。こちらも三つに分かれて行動するというのはどうでしょう?」

「それもいいけど、リーダー君には召喚獣がいるんだし必要ないんじゃない?」


 そう返すトワにスイが微妙な表情を返す。


「どうですかね……召喚獣は術者の魔力供給が無いと存在を維持できないので……地図をみるに、この距離を術者であるリーダーから離れて活動するのは無理だと思います。これは召喚獣側の問題なので術者のレベルが高くても解決できない問題ときいたことがありますが……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ