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191話 行動開始 

 若干気まずい空気の中、飛び込んできたノーマンの声に俺はほっと胸をなでおろす。

 彼にそのつもりが無いのは明らかだが、その声掛けは俺にとって助け舟になっていた。

 トワは小さくため息をつくと小さな声で「気を付けてよ」と言ってノーマンに声をかける。


「アハハッ、リーダー君はそこまでムッキムキってわけじゃないよ」

「なに? ではどうやって彼はあの威力のパンチを出したというのだ」

「それはボクにも分からないなぁ」

「……やはり筋肉以外に考えられない。君、少し脱いでくれないか」


 と、急にノーマンが俺にギラギラした視線を送ってきた。


「はぁっ!?」


 誰かを思い出すようなその表情に、俺は思わず一歩後ずさりをしてしまう。

 すると俺をかばうようにフレッドがノーマンと俺の間に割り込んでくる。


「やれやれ。筋肉が全てを解決するのであれば女性の冒険者達が活躍するはずがないだろう。君は物理的な破壊力を生み出す一番の要因が気力にある事を学習したまえ」

「なんだとっ! ならば俺の筋肉が弱いとでも言うのかっ!」

「まぁまぁ落ち着いて。ボクはかっこいいと思うよ、そのボディ」

「だろうっ! 君は小さな体だが良く分かっているなっ!!」

「アハハッ」


 ノーマンの相手をしながらトワが若干ドヤ顔で俺の方に顔だけ振り向かせてきた。

 ……まったく、彼女のコミュ力は真似できそうにない。


「それにしても驚いたな。僕は常に理知的で理性的な人間であると自負しているが今この時になって初めて僕は狼狽という行動を起こしかけてしまったよ。僕の頭を支配するのは混乱と疑問と──」

「やるじゃねえかリーダーッ! すげぇアツいライブだったぜ!! どうだ、俺とバンドをやるつもりはねえか?」


 トワに感心する余裕が出来ていたのも束の間。

 一気にフレッドとジョニーが俺のところに詰め寄ってきた。


「いやっ、ちょっ……」


 俺はトワのようにこんな強烈なキャラクターをうまくあしらう能力は持ち合わせていない。

 頭が真っ白になりそうなのをなんとか抑え、絞り出すように声を出す。


「え、えっと……すいません、先ずは状況を整理させてください。他の皆は?」


 正直、聞くまでも無いことなのだが。

 彼らをクールダウンさせるには十分な話題だったそうだ。

 ふっと彼らの顔から熱が消える。


「……分からない。僕の意識が覚醒した時には既にこの広間にいたからね。そしてこの広間に他のパーティメンバーは存在せず、僕が認識できる範囲の外に居る事は明らかといえるね」

「たしかにっ! エイミーが近くにいるならば俺の筋肉はもっと輝くはずだっ」

「ノーマン。君は少し黙っていてくれ。リーダーに無駄な情報を与えて混乱させるのはナンセンスな行動だといえるよ。特に現在のような緊急状況下のもとでは極めて理性的かつ冷静に迅速にこれからの行動の方針を決定する事が必要不可欠だ。分かるよね」


 ──正直、一番俺を混乱させるのはその早口なんだけどなぁ……


 そうとは言えず苦笑しているとジョニーが話しかけてきた。


「リーダー。この遺跡に入った瞬間、何が起きたんだ? 正直、オレは何がなんだか分からないぜ」

「俺もです……多分、何かトラップみたいのがあったのではないかと……」

「僕が前にここに来たときにはそんなトラップなんて存在していなかったし今までもきいたことがなかったのだけれど、これが今回のイレギュラーの原因だと予測するには十分な状況が揃っているね。全く、してやられたよ。僕なりに神経を研ぎ澄ませていたのにそれを上回るなんてね」

「アハハ……入った瞬間に飛ばされちゃあ、いくら慎重になってもね……しょうがないよ」


 トワの励ましに俺も頷いた。

 あれはもはや防ぎようがないだろう。初見殺しにも程がある。


「とにかく、他の皆と合流しましょう。今みたいなゴーレムがいるとしたら、かなりマズいです」


 ジョニーが敵の攻撃をしっかりとかわせていたことから、スイならば単独でも全く問題ないだろう。アイネもなんとかなるかもしれない。

 しかし他のメンバーはどうだろうか。それを考えるとここで立ち止まる訳にはいかない。


「リーダーの言う通りだなっ! 他のメンバーが単独行動するのはロックじゃないぜ」

「……言われるまでもない。同意だよ。僕には守らなければならない人がいるからね」

「それは俺の台詞だっ! 待ってろエイミー! すぐにこの俺が助けに行くっ!!」

「ちょっ、ちょっと! そっちはボク達がきた方向だよっ! 行き止まりだったってばーっ!!」


 ……やや不安はぬぐい切れないが。

 俺達ははぐれたメンバーを探して行動を開始した。


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