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141話 転移脱衣

「ちょっ!? な、何言ってるの、アイネッ!?」


 アイネの声にいち早く反応したのはスイだった。


「うへぇ、アイネちゃん大胆だねぇ」

「っ……」


 さすがのトワも笑顔が少しひきつっている。

 俺はというと頭が真っ白になっていて何も言うことができなかった。

 と、アイネがそんな俺達を見て慌てたように手を振り回す。


「い、いやいやっ。何もウチらが裸で入るってわけじゃないっすよ。リーダーのこと洗うだけっていうか……ほら、この前リーダーの髪洗った時は超適当だったじゃないっすか。だから今度はちゃんと洗ってあげたいなって。それにトーラに出てからなんか……色々リーダーにはお世話になってるし、ここら辺でちゃんとお礼したいっす」

「まぁ、たしかに……」


 そう言いながら、スイは納得したように頷く。

 しかし当然というべきか、抵抗はぬぐいきれないようで顔を赤くさせながら目を泳がせている。


「それはまぁ、そうですけど……ちょっとなんというか、流石に破廉恥すぎませんか……?」

「そ、そうっすかね……」


 それにつられたようにアイネも同じような態度をとりはじめた。

 そんな二人を見ていると俺も顔が熱くなってくるのを感じてしまう。


「アイネ、気持ちだけ──」

「でも男の人って女の人に体洗ってもらうの大好きらしいっすよ? トーラのおっちゃん達が良く言ってたっす。『おすすめのソープある?』とか……」


 と、俺の言葉を遮ってアイネがパチンと手を叩いた。


 ──トーラのおっちゃん達、女の子の前で何話してんだ? つかソープってそれ……


「……そうなんですか?」

「そうなの?」


 アイネの言葉に、スイとトワが探るように俺の顔をのぞきこんでくる。

 彼女達は意味を分かっているのだろうか。その表情からはなんとも察することができない。


「いやっ、いやいやっ! なんだよそれっ!」


 好きとか嫌いとか以前に、そんな経験などあるはずがない。

 ほぼ本能的に俺は後ずさりをしていた。

 そんな俺の態度から内心を見破ったのだろう。

 アイネがニヤリと笑みを浮かべながらスイとトワに視線を送る。


「ほらね?」

「……なるほど」

「ふーん」

「か、勝手に納得するなって!」


 二人から投げかけられる視線が痛い。

 ここまで完璧なジト目をする女の子を見たのは初めてかもしれない。

 しかし明確に彼女達の言葉を否定できる程、俺は綺麗な人間ではないことが辛いところだった。

 そんなふうに、慌てる俺を見てアイネが悪戯っぽく笑う。


「まぁまぁ。嫌じゃないならウチらに洗わせてほしいっす、リーダー」

「いやっ、でもっ洗うって……」

「アハハッ、なんか面白そうだねっ! ほら、リーダー君、脱いで脱いで」

「脱ぐ訳ないだろっ! 馬鹿なこと言ってないで──」

「ほらっ、リーダーまっかっか! 絶対内心嬉しいって思ってるっすよコレ。間違いなくリーダーはむっつりスケベっす! 先輩、脱がすっすよ!」

「ちょっとまて! おいっ!! シャレになんないって!」


 悪乗りするアイネとトワを振り払い、逃れるように距離をとる。

 するとアイネが唇をとがらせながらしゅんと肩を落とした。


「うぅ……そんなに暴れなくたっていいじゃないっすか……」

「まぁまぁ。リーダーの気持ちも分かりますよ。流石に恥ずかしいですよね……」


 そんなアイネの肩に手を置いて俺の方に苦笑いを見せるスイ。

 さすがに彼女は事の異常さが理解できているらしい。

 少し複雑な気持ちで安堵のため息をつくと──


「でも嫌じゃなければ洗わせてください。私、貴方にお礼がしたい……」

「はいぃ!?」


 スイはすぐにそれを裏切ってきた。

 反射的に変な声が出てきてしまう。


「お礼って! そんなことしなくたって……俺は、そんなことされるような……」

「違うんです……えっと、貴方が嬉しいって思うことなら、したいかなって……」


 そう言いながらゆっくりと近づいてくるスイ。


「ス、スイさん……?」


 俺の顔色をうかがうような上目使い。

 それがやけに蠱惑的に見えるのは俺の心が邪なせいだろうか。


「うん。本当に嫌がっていないみたいだね。アイネちゃん、ボクが脱がすよ。ほいっ!」


 と、いつの間に近寄っていたのかトワが俺の胸に飛び込んできた。

 そして俺の服の上に着ているロングコートに手をかけると──


「なっ! どういうっ……」


 トワの手から放たれた光が俺のコートを包み込む。

 すると俺が着ていたロングコートが消えてしまった。

 急な出来事に理解が追いつかず俺は言葉が続かなかった。


「おお、すっごい! 転移魔法にこんな使い方があるなんてっ!」


 しかしアイネはすぐに状況を把握したらしい。

 その言葉を受けて俺もトワが何をしたのかを理解する。



 ──しょうもない使い方だなっ、おいっ!



「どんどん脱がすよ、ほらっ!」

「待て! 待ってくれ! ほんとにそれはまずいから待って!」

「えー?」


 突進してくるトワをかわして距離をとる。不満げに頬を膨らますトワ。

 しかしこのまま全ての服を転移魔法でひんむかれるのは勘弁してほしい。


「分かった。やってもらうから。お願いするから! 自分で脱ぐからっ!! タオル、タオルだけまかせてっ、お願いっ!!」

「アハハッ、リーダー君必死すぎでしょっ」

「当たり前だろっ!」



 ──当たり前だよな?


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