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99話 召喚クリスタル

 反射的に叫び声に近い声が出てきてしまう。正直、目を疑った。


「ん、なんだお前さん。召喚術師だったのか?」

「えっと、まぁ……」


 店主が意外そうに首を傾げているが、そんなことはどうでもよかった。

 ゲームには召喚術師というクラスが存在する。その名の通り召喚術によって従者を呼び寄せ戦わせるというクラスだ。

だがこのクラスはかなりの上級者でなければ育てることができないものだった。

 

召喚術には召喚クリスタルというものが必要となる。

 その召喚クリスタル入手のためには魔物のソウルを手に入れなければならない。そのソウルに魔力を与えることで実体を与えるというのが召喚術の設定だった。結果的に異世界から魔物が従者となって出現したかのように見えるため、召喚術と呼ばれたらしい。

そして、ソウルとは魔物を倒した時に数千分の一の確率で手に入るドロップアイテムのことをいう。つまり召喚クリスタルの入手は非常に困難であり、初めて育成するキャラが召喚術師だとマゾゲーと化すのだ。


「え、なになに。どういうことっすか?」


 だがアイネにとっては馴染みの無い言葉だったのだろう。

 意味が分からないと言いたげに苦笑いをしている。

 そんなアイネにフォローをするかのように店主が話しかけてきた。


「召喚術を使う時に必要になるアイテムのことだよ。でもそれは外れクリスタルだ。不良品みたいなもんだよ」

「なっ……うそだろっ!? これは……」


 店主の言葉にもう一度召喚クリスタルに視線を移す。


 ──やはり、間違いない。


 召喚クリスタルは中に封印されているソウルの強さによって色が変わる。

 そして黒の召喚クリスタルは最強ランクのソウルが込められていることを意味していた。

そのレベルは170を超えている。最高級クラスのレアアイテムだ。


「ははは。お前さん、もしかして初心者か? 黒のクリスタルは召喚ができないんだよ。理由はしらないがな」


 店主が哀れみの色を込めて笑ってきた。どうも認識に大幅なズレがあるらしい。


「そんな、どうして……あっ……」


 その理由はすぐに察する事ができた。

 召喚術師は自分より高レベルの召喚獣を呼び寄せることはできない。

 黒のクリスタルを扱える程に高レベルの召喚術師が存在しないのだろう。


「……アイネ、これ買えないか」


 それならばここで是非とも召喚クリスタルを手に入れておきたい。俺の召喚術師としてのスキルを活かせるチャンスでもある。

 とはいえ無一文なのでアイネに頼み込むしか方法がない。


「ん? リーダー、これほしいんすか?」

「あぁ。無理かな。できれば全部欲しい」

「えっと、七個あるけど……いくらっすか?」

「どうした、そんな血眼になって。まぁ売れるならいいけどな。銀貨五枚だ」

「お、ならギリギリ払える。……でも、ジャンクに銀貨五枚っすか?」


 アイネが少し不満げに口をとがらせる。


「はは、外れクリスタルは、本当にめったに出てこないからな。ある意味レア物なんだよ。まぁこんなものをコレクションするヤツもレアだと思うがな。君達の趣味を否定するわけじゃないが、こんな真っ黒い不気味な物をわざわざ持っておきたいって普通思わないだろ」


 そう言った後、店主は、やや自嘲気味に笑う。


 ──ある意味じゃなくて、紛うことなきレア物なんですがね……


 とはいえ、それをここで言っても値段を吊り上げられたら嫌なので黙っておく。


「ふーん。じゃあギルドカードで支払うっす。ほい」

「まいどありっ」


 ため息をつきながらカードを差し出すアイネ。店主は割とご機嫌そうだった。

 周りを見てみるにもともと売れ行きがいい店でもなさそうだ。買ってくれる人がいるだけよしということなのだろう。

 

「あ、すまん。結構高かったよな?」


 ふと、先ほどのスイとアイネの会話を思い出す。

 たしか銀貨五枚はアイネの貯金全てだったはずだ。


「えへへ、気にしなくていいっすよ。またプレゼントしてあげるっす。はいこれ」


 だがアイネは嫌な顔一つせず袋に入れられた召喚クリスタルを手渡してくる。

 中にはしっかりと黒のクリスタルが七つ入っていた。


 ──七つ、七つだぞ……!?


 頬が緩むのを抑えられない。

召喚術師はメインの職業にしてなかったとはいえゲームでも黒のクリスタルは一個も持っていなかったのだ。


「ふーん……何かあるの? リーダー君」

 トワが怪訝な顔で俺を見上げてくる。

 それを見て意識的に顔の筋肉を強張らせた。

 クリスタルを見て急にニヤニヤするなんて確かに変なヤツに見えたことだろう。


「分からないけど。まぁ何もなかったら飾りにするよ」

「アハハ、真っ黒な石ころ飾ってもなぁ……」


 どうもトワの好みではないらしい。

 たしかに封魔の極大結界を思わせるような不気味な黒色をしているから気持ちは分からなくもなかった。


「さて。そろそろ行くか。もしかしたら、もう待たせているかもしれないから」


 そう言いながら入口の辺りを見る。

 人が行き来しているせいでスイの姿は確認できないが流石にそろそろ時間になったのではないだろうか。

 トラブルが起こる前に早くスイと合流したい。


「行くって、もしかしてスイのところに行くのかしら?」


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― 新着の感想 ―
[一言] おお∑(゜Д゜)無双の産ぶ声が…聞こえ始めた
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