四話 就職そして離職願い
転生から今までずっと色々考えてはいたがそこに関して盲点であった。
しかも当然変化に気が付けないということは今のところ'何も無い'のだ。
物であれば転生したときに向こうが気が付いてるだろうし今のところ特段何か力に目覚めたということもない。
あ、でも服は同じでスーツを着てる。つまりこれが何か持っているのか?
恐る恐る今わかることを伝えた。
「そうか」
目に見えて落胆などはしていないが気持ち残念そうに取れた。
「あのね、転生者は大概その時の服をきたままであることが多いの。」
ジェームが申し訳なさそうに言った。
「でも、今分からないだけかもしれないわ。なぜ気が付けたのかわからない能力だってあるじゃない?」
姫を思い出す優しい顔でそう告げたのはおそらく王妃だ。
「なら、この話については保留にしよう。お互いそのほうがよいであろう?」
「は、はい・・・」
完全に失念していた。
この先どうしようとどんな能力かで大きく変わる。
話だけで勝手に力を持っていると思い込んで行動をしていた。
能力が大したことなければ相当まずい立場になってしまうだろう。
それどころか能力を持ってない可能性ですらあるのではないか?
それはもっとやばいな。
王様とは対照的に顔がみるみる青ざめていく。
それを隠すのにとっさに頭を下げた。
「でしたらお父様、宮廷勤務ということでよろしいですか?」
あぁ、そう告げると王様は王妃を連れて部屋を後にした。侍女と兵士もこれに続く。
残ったのは二人の兵士とネッガーそして姫とジェーム、自分だけとなった。
「というわけで転生者様とりあえず今のところは宮廷勤務ということでよろしいですか?」
あぁ、自信を失ったまま答える。
「というかずっとみんな転生者って呼んでるけど名前なんて言うの?」
当たり前な質問にまた驚く。
さっきから抜けてるところが多くこの先に不安を覚えた。
「吉川太郎っていうんだ」
「へぇ、タロウ・ヨシカワっていうんだ。んじゃタロウって呼ぶね!」
「では私もタロウ様とお呼びいたしますね」
「あたしのことはメイでいいよ!」
「ではわたくしのこともエリアでよろ・・・「いけません姫様!!」
「あらぁ、そう」
少し強めに言われたにも関わらず姫はどこ吹く風といった感じだ。
ちょっとだけ王様の娘といったところを感じた。
「それではタロウ様のお部屋に向かいましょうか。」
「レッツゴー!!」
メイはもう初めの時の敬語なんてどこかに消えたようだった。
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メイ、姫、俺、ネッガーの四人で廊下を歩く。
ネッガーだけ後ろを歩いてるせいか心が休まることはない。
「タロウがこれからつく仕事なんだけど新兵としてこの城に仕えることになるんだ」
「と申しましてもただの新兵ではなく、精鋭の方々と同じ扱いですわ。」
そして後ろから鋭く。
「一応だがな。」
まるでけん制するようだった。
「というとどういうことでしょうか?」
怖いので横だけ向いて話す。
「うーんとね、今年入った精鋭と一緒に肉体訓練はもちろん学術そして魔術を学ぶんだけど普通の隊と違うのは学術魔術の時間が長めなのと師弟制度をとるとこにあるんだ。」
「基本的に精鋭の皆様はそのまま兵士になるだけでなく大臣などにもなる方の多いいわば出世コースのようなものです。」
「そそ、だから待遇は結構いいと思うよ。それでねその師匠なんだけど・・・」
そこで言いやめると嫌な予感しかしない。
急にめっちゃ圧を感じる。
「わたしだ。」
ネッガーさん、やはりあなたなんですね・・・
「ルージュはこう見えても精鋭出身のエリートでわたくしの警護を兼ねてるの。」
こう見えてと言われてもそうにしか見えないです
「まぁ、それは明日からだから今日は少し休みなよ!」
はい、到着。そう言って豪快に部屋の扉を開けた。
結構よさそうな部屋だった。
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結構ショッキングなことがあったこともあり、聞きたいことはほとんど聞けずにまた一人になってしまった。
ただまぁあの様子だとある程度予想通りといった感じに見えた。
色々考えながら上質そうなベットに倒れこむ。
スーツに皺ができそうだったがこうなってしまえばあまり気にならない。
服以外の持ち物はぶつかったとき何も手に持ててなかったせいかやはり無い様だった。
部屋にだったらもしかしたらと思っていたがそんなことはなかった。
ベットのほかにも上質そうなイスと机が部屋の中央に置いてあり、四人も座れそうなところ来客も呼べるように考えてあるのだろうか?
ベットの真横には窓と少し離れて壁に面して勉強机らしいものと書けそうなものがそろっている。
クローゼットの中には何か入ってそうなのが外からでもうかがえた。
おそらく自分の服だろう。
そんなことを考えててもすぐにあの女が師匠になることを思い出す。
もっと色々悩むようなことはなのだがあまりにも嫌すぎてそのことばかり浮かんでくる。
我ながら危機感の薄さを感じた。
しかし、明らかに初めからきつめだったが周りに対してもそれっぽい感じはあった。
まぁそうであれば少し安心する。
個人的に嫌われていたらもっとめんどくさそうだ。
直近のことに関しては学術や魔術も肉体訓練とやらもだ。
あまりよくはないだろうけど莫大な大きな不安から目の前のわかりやすい問題が見えてきて実は少しだけ不安感が軽減もしていた。
早速退職したいわけなんだけど。
というかせめて最終面接の結果知りたかったなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・zzzzzzz