雪後行・和魂・往年・玲子・藍川梅塞德斯・雪島雪惠・俟民和
雪後行
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白天銀漢墜 初見雪盈田 社殿林中寂 發枝群雀連
【句形】
五言絶句、平起こり、下平1先(田、連)。
【訓読】
白天銀漢墜つ 初めて見たり雪田にみつるを 社殿林中寂し 枝をたちて群雀連なる
和魂
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和國文興唱萬聲 無常觀想有群英
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無忘曙覧忠君烈 不知西行盡旅傾
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在五終歌窮辭世 徒然結節悟親情
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能雅古所問才覺 正使反仁幇器成
【句形】
七言律詩、仄起こり、下平8庚(聲、英、傾、情、成)。
【語釈】
在五…在五中将(在原業平)、転じて伊勢物語。
【訓読】
和国の文は万声よりおこり 無常観想に群英あり
忘るるなかれ曙覧が君に忠たる烈さを 知らずや西行が旅に尽くしたる傾きを
在五の終歌辞世を窮め 徒然の結節親の情を悟らしむ
能く雅たるは古の才覚を問ふところ 正に仁に反らしめ器の成るを幇く
往年
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處難尸禄恥於痴 省昔宜隣護國基
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民漸棄惡君守辱 幡幡紈袴昧先時
【句形】
七言絶句、平起こり、上平1支(痴、基、時)。
【語釈】
尸禄…貞観政要・求諫篇「信而不諫、則謂之尸禄」
幡幡…軽薄なさま。詩経・巷伯「捷捷幡幡、謀欲譖言、豈不爾受、既其女遷」
紈袴…貴族の子弟。唐・杜甫・奉贈韋左丞丈二十二韻「紈袴不餓死、儒冠多誤身」
【訓読】
難に處して尸禄たるは痴より恥なり 昔を省て隣に宜しきは護國の基
民漸く悪みを棄つるに君は辱を守る 幡幡たる紈袴先時に昧し
玲子
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高擧玉音軍旅途 君臣一輕撫墳徒
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同心何爲厭如虜 化被因成征土愚
【句形】
七言絶句、平起こり、上平7虞(途、徒、愚)
【語釈】
玲子…覇記の登場人物。先帝であった祖父が暗殺された後、皇帝として即位。叔父清仁に虐げられすさんでいたが、次第に陽一に心を開いていく。
撫墳…東晋・謝霊運・廬陵王墓下作「撫墳徒自傷」
化被一句…玲子と高尾は一丸になって日本統一の愚挙を成し遂げようとしている。
【訓読】
高く玉音をあぐ軍旅の途 君臣一に軽んず墳を撫づる徒を
同心たれば何すれぞ虜のごときを厭はんや 化の被は因りて征土の愚をなす
藍川梅塞德斯
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對主如陰秘雉威 氣能傾國浩然巍
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不怨君棄糟糠誓 敦復無傲向死飛
【句形】
七言絶句、平起こり、上平5微(威、巍、飛)
【語釈】
藍川梅塞德斯…覇記の登場人物、藍川メルセデス。
陰…陰麗華。
雉…劉邦の妻、呂后。メルセデスが秘める激しい気性をいう。
敦復一句…易経・地雷復「敦復無悔」メルセデスが仙台遠征で戦線に復帰したことをいう。
【訓読】
主に対しては陰のごときも雉の威をひむ 氣能傾國浩然と巍し
怨みず君糟糠の誓ひを棄てしを 敦く復るも傲らず死に向かひて飛ぶ
雪島雪惠
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土州鷄口兩眸澄 勞糾拳拳呉越朋
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仲子異床同夢敵 無由私慕上天徴
【句形】
七言絶句、平起こり、下平10蒸(澄、朋、徴)
【語釈】
仲子…雪恵にとって陽一は幼馴染であり、思い合う仲ではあるが立場がそれを許さない。
【訓読】
土州の鷄口両眸澄む 勞しては糾す拳拳たる呉越の朋
仲子は異床同夢の敵 私に慕ふに由なし上天徴
俟民和
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合民難事至 鑑世未黄巾 易美起兵義 凡夫歸垢塵
【句形】
七言絶句、平起こり、上平1真(澄、朋、徴)
【訓読】
合民難事の至り 鑑世未だ黄巾ならず 起兵の義は美め易けれど 凡夫は垢塵に帰す