賀龍・希雪・天道勝・適俗韻・夜來聲・酷程
賀龍
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黎舞大紙賀龍年 筆若虚舟朴訥連
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八法魁偉煌一面 自興懷校望郷念
【句形】
七言絶句、平起こり、下平1先(年、連、念)。
【語釈】
黎舞一句…長浜のイオンモールに我が母校たる伊吹高校の書道作品が展示されていた。『賀龍』と大きく記されていた。
八法…永字八法。書道における字の書き方の要諦。
【訓読】
黎は大紙に舞ひて龍年を賀し 筆虚舟のごとく朴訥と連なる
八法魁偉にして一面を煌めかせ 自づから興す懐校望郷の念
希雪
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初溶新雪險 慘慘難耽悠 猶有苦寒者 切希新布裘
【句形】
五言絶句、平起こり、下平11尤(悠、裘)。
【語釈】
布裘…白居易の新製布裘
【訓読】
初めて溶け新雪険し
惨惨として悠に耽りがたし
なほ有り寒きに苦しむ者
切に希ふ新布裘
天道勝
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好哉白日克深冥 漸享清光神就寧
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羿射有功時運定 頽簷亦可見天青
【句形】
七言絶句、平起こり、下平9庚(冥、寧、青)。
【語釈】
好哉一句…クリスマスはかつて冬至の日だったが、これはローマで冬至が「不敗の太陽(Sol invictus)」の勝利の日とされていた信仰を継承したものとの説がある。
羿…堯の時代の英雄。十個の太陽の内九個を射落とした。
【訓読】
好き哉 天道杳冥に克つは 漸く清光を享えて神寧きにつく
羿の射は時運の定まるに功あり 頽簷また天の青きを見るべし
適俗韻
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徒然自恥日安糧 難直難容適俗狂
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天道利也孤竹聖 何長鳥獸欲骸香
【句形】
七言絶句、平起こり、下平8陽(糧、狂、香)
【語釈】
適俗狂…晋・陶淵明・歸園田居「少無適俗韻」
孤竹聖…孤竹国の二人の王子、伯夷と叔斉。
【訓読】
徒然たれば自から恥づ日ごとに糧に安んずるを 直なりがたければ適俗の狂をいれがたし
天道とは利なり孤竹の聖よ 何ぞ長しや鳥獣骸の香りを欲するは
夜來聲
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夜來喧遠適 落木散如夢 流水蕭蕭下 天疎寂寞風
【句形】
五言絶句、平起こり、上平1東(夢、風)
【訓読】
夜よりこのかた喧しさ遠く適き 落木散るも夢のごとし 流水蕭蕭として下り 天には疎し寂寞たる風
酷程
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空山獨夜忍無情 眇默徂師困酷程
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治國不如人拓土 何無遷國使財平
【句形】
七言絶句、平起こり、下平8庚(情、程、平)
【語釈】
空山一句…唐・杜甫・夜「空山獨夜旅魂驚」
眇默…はるか遠いようす。晋・顔延之「眇默軌路長」
何無一句…一箇所に集中している富を分散して、全土を同じように豊かにせねばならない。易経・易「中行告公從、利用爲依遷國」
【訓読】
空山独夜無情を忍び 眇默たる徂師酷程に困しむ
治国は人の土を拓くにしかず 何ぞ国をうつし財を平らかならしむるなからんや