雨轉晴・金默・巷想・睡欲・東門・壯神・蜩蟬
雨轉晴
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冽冽清暉潤外園 朝來豪雨手輕飜
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人情易亂蒼天恣 天泰民心無大昏
【句形】
七言絶句、仄起こり、上平13元(園、飜、昏)
【語釈】
清暉…晋・謝霊運・石壁精舎還湖中作「昏旦變氣候、山水今清暉」
【訓読】
冽冽たる清暉外園を潤し 朝よりの豪雨手を軽く翻す
人情蒼天の恣に乱れ易し 天泰ければ民心大昏無きに
金默
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横溢千言無障誌 直言傾衆漸求利
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至今誰解拈華笑 金默時成嘉遯至
【句形】
七言絶句、仄起こり、去声4寘(誌、利、至)
【語釈】
嘉遯…世を厭って生き方を正しくするための、好ましい逃避。易経・遯「昏旦變氣候、山水今清暉」
拈華笑…拈華微笑。言外に本当の意味を伝えること。
【訓読】
横溢せる千言障りなくして誌さる 直言衆を傾けて漸く利を求む
今に至りては誰か解せん拈華の笑み 金の黙 時に成さん嘉遯の至り
巷想
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綽然天下歩 行樂一人愁
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大道存如是 惆悵難不留
【句形】
五言絶句、平起こり、下平11尤(愁、留)
【語釈】
行樂一人愁…唐・白居易・長安正月十五日「萬人行樂一人愁」
【訓読】
綽然たり天下の歩み 行楽一人愁ふ
大道かくのごときに存す 惆悵留めざることかたし
睡欲
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睡欲頻生食後間 睡非如意是辛艱
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身猶不恣況心里 忙下希歡春曉閑
【句形】
七言絶句、平起こり、下平15刪(間、艱、閑)
【訓読】
睡欲頻りに生ず食後の間 睡の如意ならざるはこれ辛艱
身すらなほ恣ならぬに況んや心の里をや 忙下 春暁の閑を楽しむことまれなり
東門
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時如墜景不還元 天下萬民皆失尊
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好合清流消地上 攘夷號令致煩冤
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讒横緝緝傷眞士 風惑脩脩入小村
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身後無由知紊亂 希君我目掲東門
【句形】
七言絶句、平起こり、上平13元(元、尊、冤、村、門)
【語釈】
煩冤…唐・杜甫・兵車行「新鬼煩冤舊鬼哭」
東門…十八史略・臥薪嘗胆「抉吾目懸東門、以観越兵之滅呉」
【訓読】
時は墜景のごとく元に還らず 天下万民皆尊を失ふ
好合の清流地上より消え 攘夷の號令煩冤を致す
讒の横るるや緝緝として真士を傷ひ 風の惑ふや脩脩として小村にも入る
身後紊乱を知るに由なし 君を希ふ我が目を東門に掲げよ
壯神
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眼花愈益暗 病始覺壯神
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從昔所深恨 不全何盡辛
【句形】
五言絶句、平起こり、上平11真(神、辛)
【語釈】
眼花…目のかすみ。
【訓読】
眼花いよいよ暗きを益す 病みて始めてすこやかさの神たるをさとる
昔より深く恨む所なり 全からぬは何ぞ辛を尽くす
蜩蟬
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夕歡蜩奏樂 朝轟萬蟬喧
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兩極窮斯季 都鍾窓外園
【句形】
五言絶句、平起こり、上平13元(喧、園)
【語釈】
蜩…ひぐらし。
蟬…せみ。みんみんぜみなど。
【訓読】
夕べには蜩の奏楽をたのしむも 朝には轟けり萬蝉の喧しき
両極この季に窮まれり すべて鍾まる窓外の園に