夏至後夏・路樹下歩・嘆四端缺・詩源・讀韓籍
夏至後夏
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日漸箭驅暑更昌 氣方成菌雨流芳
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惜哉然後守三伏 靄靄天猶不賜涼
【句形】
七言絶句、平起こり、下平7陽(昌、芳、涼)
【語釈】
成菌…荘子・齊物篇第二「樂出虚、蒸成菌」
三伏…夏の一番の暑さ。江戸・田上菊舎・水樓避暑「欲消三伏熱」
靄靄…東晋・陶淵明・停雲「停雲靄靄」
【訓読】
日漸く箭のごとく駆け暑さ更に昌んなり
気はまさに菌を成し雨流芳し
惜しき哉然る後に三伏を守る 靄靄たる天なほ涼を賜はず
路樹下歩
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路林疎密恐蛇難 草緑頻鳴生蓋山
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物異身同因意變 圓丘不見熱炎間
【句形】
七言絶句、平起こり、上平15刪(難、山、間)
【語釈】
疎密…斉・沈約・宿東園「槿籬疎復密」
物異一句…在原業平「月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして」
圓丘…伝説上の場所。
【訓読】
路林疎密にして蛇の難を恐る 草緑頻りに鳴りて生は山を蓋ふ
物異なり身同じきは意の変ずるによる 円丘見えず熱炎の間
嘆四端缺
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自生地上來 未有一元亨 諸苦中至苦 不如嘲弄聲
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休道是昔日 一苛全生傾 何能復韓信 忍辱蒲伏寧
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欲忘如覆水 不樂處餘生 積悔存身後 將傷他人情
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人愛有四體 不憂四端輕
【句形】
五言古詩、下平8庚(亨、聲、傾、寧、生、情、輕)
【語釈】
蒲伏…史記・韓信・淮陰侯列傳第三十二「於是信孰視之、俛出袴下、蒲伏」
四體…四肢。
四端…仁義礼智。孟子・公孫丑編「人之有是四端也、猶其有四体也」
【訓読】
地上に生まれてよりこのかた 未だ一つも元いに亨ることあらず
諸苦中の至苦 不如嘲弄に声にしかず
道ふをやめよ是これ昔日なりと 一たび苛まるれば全生傾く
何能く復た韓信の 辱を忍びて蒲伏の寧きをなさんや
忘れんと欲すれど覆水ぼごとく 楽しまずして余生を処す
積悔身後に存し まさに他人の情を傷はん
人四体あるを愛すれど 四端の軽きを憂へぬなり
詩源
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文興抗世自求眞 能處艱難切磋因
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己若千之時至道 無論謝絶入其倫
【句形】
七言絶句、平起こり、上平11真(眞、因、倫)
【語釈】
疎密…斉・沈約・宿東園「槿籬疎復密」
物異一句…在原業平「月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして」
圓丘…伝説上の場所。
【訓読】
文は世に抗ひ自ら真を求むるより興る 艱難よく処するこそ切磋の因なれ
己もし千たび之をせば時に道に至らんも 無論謝絶す其の倫に入るは
讀韓籍
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宿好千言學習勞 普天人語一其操
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深知更樂韓文妙 稗史希書評良高
【句形】
七言絶句、平起こり、下平4豪(勞、操、高)
【語釈】
讀韓籍…筆者は韓国語の本を一冊読み終えた。
宿好…長い間続く好み。
稗史…つまらぬ物語。
【訓読】
宿好は千言学習せる労 普天の人語 其の操るところを一にす
深く知れば更に楽しむ韓文の妙 稗史希はくは書いて評良に高からんことを