札鬪・風聲・合味道
札鬪
余潛窺某所遊戯店、夫子大擧小坊頻敲卓翻札。各回機巧以驕文中之武、千聲萬聲無了時。觀之有感因爲咏
余潛かに某所の遊戯店を窺ふに、夫子小坊に大擧して頻りに卓を敲き札を翻す。各機巧を回し以って文中の武に驕り、千聲萬聲了む時なし。之を觀るに感ずるあり、因りて咏を爲す
○●○○●●◎
人盡時明一藝賢
●○○●●○◎
不開才覺墮胡旋
●○○●●○●
肯臨兵鬪在其戰
○○●●●○◎
何無問訊道於天
【句形】
七言絶句、仄起こり、下平1先(賢、旋、天)
【句形】
胡旋…唐の時代に流行った異民族起源の踊り。白居易はそれを王朝紊乱の原因とした。(胡旋女)
【訓読】
人ことごとく時に一芸の賢なるを明らかにするも
才覚を開かずんば胡旋に堕せん
肯へて兵に臨みては其のいくさにあり
何ぞ天に道を問訊することなしや
風聲
○●○○●
風令悲涼大
●●○●◎
往嘆知冷流
○○○●●
來年誰健在
○●●○◎
盈耳慨啾啾
【句形】
七言律詩、仄起こり、下平11尤(流、啾)
【語釈】
悲涼…憂えの気分。顔延之・愁胡詩「原隰多悲涼」
【訓読】
風は悲涼をして大きならしむ
往きし嘆きを冷流に知る
来年誰か健在ならん
耳にみちて慨き啾啾たり
合味道
●○○●●○◎
麺前人是百年賓
○●○○○●◎
甘露盈杯何曰辛
●●●○○●●
味匹拔山無妄啜
●○○●●○◎
一週單食命維新
【句形】
七言律詩、仄起こり、上平11尤(頭、由、流)
【句形】
合味道…中国語でカップヌードル。筆者は週末にカップヌードルを食べることが習慣になりつつある。
命維新…詩経・大雅文王「周雖旧邦、其命維新」
【訓読】
麺前に人はこれ百年の賓たり
甘露杯にみちて何ぞ辛しと曰ん
味は抜山に匹するも妄りに啜るなかれ
一週の単食 命これ新たなり