辯論・群小國・名吟因・召公棠・往日遊長濱
辯論
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賢哲飮村井
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小人多口溢
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甘言多易解
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難説誡時密
【句形】
五言絶句、仄起こり、入声4質(溢、密)
【語釈】
密…意味の明らかにされないさま。
【訓読】
賢哲村井に飲み
小人口多くして溢る
甘言多く解しやすきも
説きがたし 時を誡しむるの密かさ
群小國
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安國喪君斷百州
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花開志士演春秋
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群雄哄笑黎民泣
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情及詩歌生永愁
【句形】
七言絶句、仄起こり、下平11尤(州、秋、愁)
【語釈】
群小國…1031年の後ウマイヤ朝崩壊後、その遺地にはターイファと呼ばれる群小王国が割拠した。ムスリムはキリスト教徒に押されるようになるが、アラビア語やヘブライ語による優れた文学作品が生まれた時代でもあった。
【訓読】
安国君を喪ひて百州に断たる
花のごとく開ける志士春秋を演ず
群雄哄笑して黎民泣し
情は詩歌に及びて永き愁ひを生む
名吟因
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蹉跎難破況山林
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自長懷舊憂轉深
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契闊自歸亡苦否
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質文抗拮則名吟
【句形】
七言絶句、平起こり、下平12侵(林、深、吟)
【語釈】
蹉跎…うまくいかないこと。徒然草に頻出。
契闊…苦しむ。陶淵明・閑情賦「徒契闊以苦心」
質文…中身とうわべ。
【訓読】
蹉跎 破りがたし況んや山林においてをや
長じてより懐旧すれば憂へうたた深し
契闊自ら帰せば苦をなくすや否や
質文抗拮して即ち名吟あり
召公棠
詠樹也。
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宅路行居轉
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隅觀小木喬
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無傷懷召伯
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永見愛蕭蕭
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衢道鍾衆目
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猗猗立碧霄
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無評容自泰
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閑静豈幇驕
【句形】
五言律詩、仄起こり、下平2蕭(喬、蕭、霄、驕)
【語釈】
召公棠…詩経国風中の甘棠の詩を指す。
【訓読】
宅路行きて転ずるに居れば
隅に観る小木の喬きを
傷なきにして召伯を懐かしみ
永く見れば蕭蕭なるを愛す
衢道衆目をあつめ
猗猗として碧霄に立つ
評なくも容自ら泰く
閑静豈に驕を幇けんや
往日遊長濱
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長濱臨海漫然昌
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城衣紅梅敏季粧
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立札又書葡語警
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諸民風俗一觀郷
【句形】
五言律詩、仄起こり、下平2蕭(林、深、吟)
【語釈】
長濱…琵琶湖北東岸の都市。
葡語…ポルトガル語。長浜にはブラジルからの移民が多いので。
【訓読】
長浜海に臨む 漫然として昌んなり
城 紅梅をきて季の粧ひに敏し
立札また書く葡語の警め
諸民の風俗一觀の郷なり