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未犯の人  作者: 鰐太郎
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痴漢おやじ

私がまだ学生で、実家に住んでいたときの話である。


夕飯を食って自分の部屋で呆けていたら

突然外からぎゃあぎゃあと女の悲鳴が聞こえてくる。

脊髄反射的に外に出ると、

路地で若い女が、夏なのに長袖を着ているむっさい中年男性に

後ろから羽交い絞めにされているではないか。


「何やってんだ!!」

私が発した咄嗟の言葉に、中年男性は吃驚して物凄い勢いで逃げてしまった。

追いかけようかと思ったが中年男性の駆け足が圧倒的だったのと

女が心配だったのでやめた。


大丈夫ですか?と尋ねるが、女はただ大丈夫ですと。


そのうち加勢なのか野次馬なのか、二人ほど若い男がやってきて

大丈夫ですか、何があったんですか、と話しかけてきた。

事の成り行きを説明すると

二人は「〇〇のおやじじゃねえの?」的な話をしてへらへらと笑っていた。


私ら三人は「家まで送りましょうか?」と女に持ち掛けるが

女は「結構です」と言ってそそくさと帰ってしまった。


私はパンツ一丁だったことに気が付いた。


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