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掌編小説集6 (251話~300話)

好かれる努力

作者: 蹴沢缶九郎

自分が嫌われていると自覚していた男は、どうすれば好かれるのか、人気のある者達に助言を請う為に出掛けた。


最初に訪れた人気者は自分とほぼ同じ背丈の男だったが、男からはどんな相手にも負けないという力強さが感じられた。嫌われ者の男は言う。


「こんにちは、今日はあなたに折り入ってお願いがありまして、こちらを訪ねました」


「お願い?」


「はい、どうやら僕は周りから嫌われているらしく、皆、僕を避けようとする…。一体僕が何をしたというのか…。せっかくこの世に生まれてきたんだ、僕だって好かれたい。そこで、人気者のあなたに、どうすれば好かれるようになるのか、助言を頂きたいのです」


嫌われ者である男の話を聞いていた人気者の男は、納得した様子で言った。


「なるほど、そういう事か…。しかし俺の助言が役に立つかな…。でもわざわざ訪ねて来てくれたんだ…。そうだな…、君は見た所、体つきが貧弱だな。俺みたいに身体を鍛えて力をつけなさい。そうすれば好かれるようになるよ」


「本当ですか!? わかりました、身体を鍛えます。どうもありがとうございました!!」


男はお礼を言い、次の人気者を訪ねた。


二番目の人気者は、オシャレで佇まいは優雅であり、気品溢れる綺麗な女だった。男はさっそく切り出す。


「僕はあなたのように好かれたいのです。どうすれば良いのでしょうか…。好かれる為に、是非とも助言をよろしくお願いします」


女はしげしげと男を見ると、ため息混じりに言った。


「あなた全然ダメね。地味過ぎるのよ。そんなんじゃ、嫌われて当然だわ。私みたいにオシャレに気を使いなさい、そうすれば大丈夫よ」


「それは全く考えた事がありませんでした…。勉強になるなぁ…。オシャレですね、わかりました、どうもありがとうございました!!」


男は女の許を後にし、最後の人気者を訪ねた。


三番目の人気者は、まるで悩み事とは無縁そうな明るい性格の小柄な男。話を聞いた小柄な男が言った。


「ううん、もうさ、あんた暗いよね。性格が暗すぎる。オイラみたいに明るくなりなよ」


「性格ですか…」


長く、悪く言えば根暗な性格で生きてきた男。これは一朝一夕でどうにかするには難しそうだった。


「いきなり性格を明るくしろって言われても難しいか…。そんならさ、見た目から明るくするようにしてみたら? そこから変わるものもあるかもよ」


小柄な男はニコッと笑う。


見た目からか…。それならば女から受けた助言にも通ずるし、小柄な男の言うとおり、性格も変わるかもしれない。


「わかりました。明るくなるように努めてみます。ありがとうございました!!」


帰宅した男は、三者から受けた助言を元に身体を鍛え、オシャレに気を使い、明るくなるように努力した。


そして、その日はやってきた。


自身の素早さに加え、カブトムシの力強さを手に入れたゴキブリは、蛍の如くお尻を明滅させながら、蝶のような模様の羽を広げて台所を飛び立った。


「これで人間に好かれる」

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― 新着の感想 ―
[一言] そのゴキブリを叩くなんてもったいない!! そのゴキブリはとても珍しいが本当に叩きますか?
[一言] グリーンバナナローチ、テレビでやってたのを思い出しました( ̄▽ ̄)
[一言] >カラフルな体と光る尾部を持つゴキブリが現れた ・つかまえる ・たたく ・さけぶ ・みのがす さて、どうしたものか。
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