それは、音の無い世界か。
もう1人の主役、華音の登場です。
色映よりもシスコンです。
痛っ
目を開けて確かめてみると、枕元に目覚まし時計が小さく震えながら転がっていた。
止めるために起き上がろうとして…無理だった。
右を向くと、色映が私の右腕にしがみついていた。
ちょっとかわいそうだけど、空いている左腕と両足を使って無理矢理引きはがした。
やっとの思いで妹の束縛から解放されて、アラームが鳴り響いているであろう目覚まし時計のスイッチを切った。
いや、鳴ってるの当たり前じゃんって思うだろうけど、耳が飾りになってしまった私には、それを判断する術が無い。
っていうか、結構うるさかったはずなのに、我が妹はなかなか起きる気配を見せない。
じっと見つめていると、だんだんとほっぺにキスしたくなってきた。だって、とっっっっってもかわいいんだもの。私の自慢の妹よ。私たちは双子でほとんど同じ顔つきをしてるのに、ここまで差があるのは、保護欲と同時に嫉妬心を掻き立てられるくらい。
でもこのままでいると、なんだかイケナイ方向に行動してしまいそうだったから、それを紛らわすためにも、勢いをつけて思いっきりカーテンを開けた。
両側のカーテンを開ききって、改めて色映を起こそうと振り返ると、今の音でようやく目が覚めたのか、色映は既に起き上がっていた。
私は、おはようの意味を込めて、色映の頭を撫でた。これは、ふたりで決めた朝のあいさつ。
すると、色映が「おはよう、お姉ちゃん」って言ってきた。多分。
耳の聞こえない私は、退院するまでに身につけた読唇術で相手が何と言ったのか判断する。私みたいな人たちの間では、読唇術のことを『読話』って呼ぶらしい。
そうしていると、色映が立ち上がろうとしていたから、近くに立てかけてあった松葉杖を取ってあげて、支えながら立たせた。
本当は、ここまでやらなくてもいいらしいのだけど、この子が私を頼ってくれている限りは、喜んで手を差し伸べようと思う。
だって、私はこの子が大好きだから。
どうも、壊れ始めたラジオです。
華音は若干暴走しやすいです。実は、最初はここまで変態(褒め言葉)ではありませんでした。しかし、書いてて楽しいキャラなので、どんどん突っ走ってほしいと思います。
さて、今更ながら改めてこの作品の解説を。
「ふたりが“音色”を奏でてみたら」は、姉の華音と妹の色映を中心に描いていくフィクションの障がい者生活小説です。健常者の方々に少しでも障がい者に関心を持ってもらうために、そして、障がい者の方々の励みになれば、さらに、姉妹百合好きの方々の目の保養にと思って書いています。
正直に言いますと、上二つの理由は後付けで、本音は「姉妹百合が書きたかったから。」です。
主な見どころは、
・同じシチュエーションを別々の視点で表現している。
・「障がい者を支える」のではなく「障がい者同士で支えあう」。
・心理描写主体。
ということです。
現在、次の話のサブタイトルを何にするか悩んでいるため、投稿まで少し時間がかかるかと思います。今月中には決めます。気長にお待ちください。
では、次回再びみなさんにお会い出来るのを楽しみにしております。それでは。